継母の心得 〜 番外編 〜

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編2 〜

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ロペス侯爵令嬢視点


わたくしの名前はオーロラ・ブルー・ロペス。ロペス侯爵家の令嬢です。

憧れのディバイン公爵夫人のように、完璧な淑女になる為、日々努力する毎日を送っております。

なぜわたくしがディバイン公爵夫人に憧れるようになったのかと申しますと、もう随分前になるのですが……、わたくしが4歳の時でした。
ディバイン公爵令嬢の遊び相手にと、公爵家へ招待されたのです。

皇族と同等と言っても良いほどの、いえ、皇族以上に富も権力もお持ちの、あのディバイン公爵家です。4歳といえど、とても緊張しておりました。

母に手を引かれ、想像以上に立派なお屋敷へと入ると、そこには我が家よりも沢山の使用人が待ち構えておりました。幼いわたくしは、その光景にも圧倒され、わくわくした気持ちよりも、恐怖が勝ってしまったのです。

そうして、震えながら案内されたお部屋に足を踏み入れたのですが、そこで待っていたのは、わたくしがお気に入りだった貴族街の噴水のそばに立っている、美の女神像と同じ姿をした美しい女性と、その女性にそっくりな容姿の、小さな女神様だったのです。

わたくしも母も、暫く二人の女神に見惚れておりました。
しかし、あまりにも神々しいお姿の為か、身体の震えは止まりませんでした。

その時です。

女神様がわたくしに近付いていくきて、母と一言、二言交わすと、幼いわたくしに視線を合わせるように膝をついて、「ごきげんよう」とにこやかに声をかけてくださったではありませんか!

もちろんわたくしは、声すら出せませんでしたが、女神様は気にせず、わたくしが当時大好きだった絵本や、楽しいおもちゃのある場所へと案内してくださったのです。

するとわたくしは子供でしたから、すっかりおもちゃに夢中になってしまいました。最初の頃に感じていた恐怖が無くなり、楽しいという気持ちで頭の中が埋め尽くされたのです。

もちろん小さな女神様も一緒におもちゃで遊んでいたのですが……、

小さな女神様は、一向に笑いません。

話しかけても、じっとこちらを見るだけで、無言だったのです。

始終そのような状態で、結局わたくしとは、一切言葉を交わすこともなく、笑顔すらなく、交流は終わってしまったのです。

そうして、わたくしは思いました。

わたくしが、立派な淑女ではなかったから、未熟者だったから、小さな女神様は笑っても、言葉を交わしてもくださらなかったのだと。

大人の女神様……ディバイン公爵夫人のように完璧な淑女にならならければ、小さな女神様のお友だちにはなれないのです。

その日からわたくしは、ディバイン公爵夫人のような完璧な淑女になる為に、淑女教育を頑張りました。
公爵家からのお誘いを受けても、お会いする資格はないとお断りし、自らを戒め、必死で己を高めてまいりました。

そしてとうとう、今年の冬にデビュタントという、小さな女神様と再会できる幸運が巡ってきたのです。

ミーシャ様。今度こそ完璧な淑女として、貴方様の前に参ります。待っていてください。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミーシャ視点


「っくしゅ」

鼻がむずむずして、教室の中だというのに、くしゃみが止められなかった。

恥ずかしい……。

「可愛いくしゃみが出ちゃったね」

コニーがにこにことフォローしてくれるが、「下品ね」とロペス侯爵令嬢の周りにいる令嬢たちが、ヒソヒソとこちらを見て話しているのが聞こえてくる。

「気にすることないわよ。くしゃみなんて誰でもするものよ!」
「そうだね。この間、ワイマン子爵令嬢は掃除中にくしゃみを連発していたよ」
「「「あ、ナツィーおはよう」」」

教室に入って来たナツィーが言う、ワイマン子爵令嬢とは、「下品ね」と言っている彼女だ。
ナツィーはどうやらワイマン子爵令嬢と昔交流があったようなのだが、今は交流のこの字もないと言っていた。

ナツィーの言葉が聞こえたのか、ワイマン子爵令嬢は顔を真っ赤にさせ、怒りに震えているようだった。

授業開始の鐘が鳴り、みんなが席に着くと、鐘が鳴り終わる前に先生がやって来る。

「諸君、おはよう。今日は授業の前に、授業参観について説明するのでよく聞いて、親御さんに伝えてもらいたい」

教壇に立ったかと思えば、先生は参観日についての説明を始めたのだ。

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