継母の心得 〜 番外編 〜

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 ブルネッラの勘違い〜 ノア5歳

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ノアが5歳の誕生日を迎えてから半月、ディバイン公爵家の臣下の奥様や子供たちを集めてお茶会をしたその日の夜だった。ノアが元気がない事に気付き、話を聞いたのだけど……

「ねぇノア、今日も仲良くお友達と遊んでいたみたいだけど、何かあったの?」
「……」
「ノア? もしかして、お友達とケンカしてしまったのかしら?」
「……」

ノアは黙ったまま、ふるふると首を横に振ると、しゅんとしたまま、ラグマットの上で三角座りしている。

ケンカじゃないなら、一体どうしたのかしら?

カミラを見れば、眉をハの字にしてわたくしを見ているではないか。

「ノア、お母様には言いたくない事なのかしら?」
「……」

言いたくないのね……。

「そう。じゃあ、言いたくなったら教えてちょうだい? お母様、ノアがお話してくれるの待ってるから」

ぎゅっと抱きしめると、「おかあさま……っ」と抱きついてきたので、背中をポンポンして、暫く二人で抱き合ったままラグマットの上に座り込んでいたのだ。

アベルの出産で最近あまり構ってあげられなかったから、たまにはこういう時間も必要ですわね。

「……おかあさま、あのね……」

まぁ、お話ししてくれる気になったのね。

ノアは、今日あった出来事をポツリポツリと語りだした。


お茶会中の子供たちに何があったのかというと───……


◆◆◆


「ノア! あっちで、かいぞくごっこしよーぜ!」
「うん! する!!」

お友達に海賊ごっこに誘われたノアは、その子について行こうとしたらしいのだけど、

「ダメ! ノアちゃんはわたしたちと、あそぶの!!」

それを止めたのが、ブルちゃんだったらしい。

「ノアは、おれたちとあそぶんだ!」

当然、男の子は反論したようなのだが、ブルちゃんはそれを許さなかった。

「ダメ! かいぞくごっこ、なんて……、そんな、らんぼおなあそび、ノアちゃんにおしえないで!!」

ブルちゃんの言葉を聞いたノアは、とても戸惑っていたらしく、二人の間であたふたしていたのだとか。

「なんだと!? かいぞくごっこは、おとこのなかで、はやってるんだ! ノアだって、やりたいだろ?」
「ぅん……」

ノアは勿論、海賊ごっこが大好きなので、ブルちゃんには悪いなぁと思いつつも頷いたらしい。しかし、ここでブルちゃんが思わぬ事を口にしたのだそうだ。

「ダメー! だって……、だって……っ、ノアちゃんは、おんなのこ、だもん!」
「「!?」」
「の、ノア……おまえ、おんなのこ……? ご、ごめん、おれ……」
「ちがうのよ」
「てっきりおれ……っ、ごめんな!」
「ちがうのよ……」

カミラ曰く、真っ赤な顔をした男の子のお友達は、そのまま走り去ってしまったらしい。


◆◆◆


「ノア……」

正直、ノアは見た目もめちゃくちゃ可愛い。わたくしだって、初めて見た時は、主人公って女の子だったっけと思ったものだ。しかも、どうやらわたくしの言葉遣いを真似ているらしく、喋り方も女の子のそれだ。

「わたし、おとこのこなのよ……」

お友達の男の子、顔を真っ赤にしてたって事は、その子、ノアの事を好きになったんじゃないかしら……。とは、落ち込んでる息子には言えませんわよね……。

「そうね。ノアは立派な男の子よ」

結局、ブルちゃんとその男の子の誤解を解くことが出来なかったようなのだけど……。


◇◇◇


「───その言葉遣いを直せばいいだろう」

夕食時にテオ様へ相談したのだけど、そう即答されてしまったわ。

「ことば、づかい?」
「そうだ。ノアの言葉遣いは、ベルの……いや、女性の言葉遣いだからな」
「そうなの……?」

ノアが初めて知ったというようにわたくしを見るものだから、「ど、どうかしら……」と目をそらしてしまいましたわ。

ごめんなさいね、ノア。わたくし、その言葉遣いをするノアが可愛くて可愛くて……っ、ついつい直すのを先延ばしにしてしまいましたの!

「!? わたし……ことばづかい、なおすの!」

こうして、ノアの可愛らしい言葉遣いは矯正されたのだが、ブルちゃんと、男の子のお友達の誤解は、それでもなかなか解けなかったのだとか。


後日、皇后様にこの事をお話したら、大笑いされましたわ。

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