継母の心得 〜 番外編 〜

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 夢での邂逅2 〜 イザベル臨月

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「ノア様、離れましょう! 危害を加えられる恐れがありますっ」
「ああ、そうだね……」

チラッとこちらを見たノアは、サイモン君の言葉に頷くとわたくしから距離を取る。

『危害なんて加えませんわ! 』

そりゃあ、前前世の行いを考えると、距離を取られるのは当たり前かもしれませんが、ちょっと泣きそうですわ。

そうして、ノアとサイモン君はさっさと歩いて行ってしまったのだ。

夢とはいえ、悲しいですわ……。
目が、覚めて可愛いノアを見たら、わたくし泣いてしまうかも。

でもあの二人、どこにいくのかしら? こんな荒廃した街に住む場所なんてなさそうなのに……、ついて行ってみようかしら。

そう思ったら、移動したいと思った方向にふわふわと移動出来たのだ。

これは……わたくし本当に幽霊みたい。

そんな事を思いながら二人について行くと、それこそお化け屋敷化したディバイン公爵邸の中に入って行き、地下に続く階段を潜って行ったではないか。

地下……。
さっきの話から、今このディバイン公爵領は他国に侵略されて、交戦中のような様子だったけど、ここの地下を拠点にしていますの?

地下へ降りると、だだっ広い空間に、街では見られなかった人たちが、大勢肩を寄せ合い暮していた。

ここは、避難所なのだわ……。

実際、横になっているお年寄りや、座り込んでいる女性たち、子供の姿が目につく。

「ノア様、いつも食料をありがとうございます……っ」
「ねぇ、ねぇ、ノア様! おれにも戦いかた、教えてください!」
「ノアさま、あそぼー!」

ノアの周りにはたくさんの人が集まっていた。

「皆、ノア様はお疲れですから、少し休ませてあげてください」
「ノアさま、だいじょーぶ?」
「ノア様、私のご飯食べる?」
「大丈夫だよ。ありがとう。私は十分いただいているから、自分の分のご飯はしっかり食べてね」
「はーい」

皆に好かれているのは、前前世でも今世でも変わらないのね。

ノアは避難所の人々と話した後、個室へと入っていった。

どうしましょう……。ノアの部屋に入ってもいいものか……、この透けた身体では、ノックできませんものね……。

迷っていると、突然扉が開き、わたくしの目の前にノアが立っていた。

「あなたは……、何をしているんだ」
『ノア! だってノックができませんでしたの。それに、勝手に人の部屋に入ってはダメですのよ』
「……はぁ……どうぞ」

ノアが、お部屋に招いてくれましたわ!

公爵家の後継者とは思えない、6畳ほどのワンルームにベッドと机があるだけの殺風景な部屋。

それが、前前世の息子の部屋だった。

「あなたが望んだ通りになりました」
『え?』
「あなたが亡くなる前、全て滅びればいいと言ったでしょう。まさか、本当にその通りになるなんて……」
『……っ、わたくし……』

あの時は父も弟も殺されて……自暴自棄になっていたのよ……滅びれば良いと……そんな酷い事を口にしてしまうなんて……。こんな事、望んでいたわけではないのに……っ、何て事を言ってしまったのかしら……っ

「はぁ……、すいません……、わかっています。あなたのせいじゃない。こうなったのは、私の考えが足らなかったからだ……っ」

あぁ……っ、わたくしの可愛い息子が、自分を責めて苦しんでいるのに、わたくしは……っ

『っノア、あなたのせいではなくってよ!』

ビクッとノアの身体がはねる。

『驚かせてごめんなさい。でも、あなたのせいではないのですもの』
「なんでそんなこと、あなたが……」
『だってわたくし、あなたに倒された後、時間が巻き戻って、もう一度人生をやり直していますの』

わたくしの突拍子もない話に言葉が出てこないようで、目を丸くしてポカーンと口を開いている。

『やり直して分かったのは、悪魔が運命を捻じ曲げたという事でしたわ』
「タイラー子爵、ですか……」
『いいえ。タイラー子爵は悪魔に人質を取られ、従っていただけにすぎません。それどころか、人質を助けるために仕方なく……』
「悪魔が別にいた……?」
『そしてノア、あなたは本来……わたくしが生み、育てるはずだった子ですわ』
「!?」
『悪魔によって、捻じ曲げられた運命は、あなたのお父様やあなたの人生をも狂わせ、わたくしの父と弟を殺したのです』
「待ってください!」

あまりの事に動揺しているノアは、わたくしの話を遮り、頭を抱えてしまった。

『ノア……』
「あなたが……私の、本当の母……?」

虐待したわたくしが、本当の母だと知ってショックなのかもしれませんわ……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




~ おまけ ~


【ノア、3歳の母の日】


「おかぁさま、ノアね、ぷれじぇんと、あるのよ」

可愛いノアがそばにやって来て、もじもじしながらそう言うので、抱っこをして膝に乗せる。

「あら、ノア。急にプレゼントだなんてどうしたの?」
「きょお、おかぁさまのひ、よ!」
「まぁ!」

そういえば今日は母の日でしたわ!

「ノア、おうた、うたうの!」
「お歌のプレゼントね! 素敵っ」

何のお歌かしら、とワクワクするわたくしに、ノアは上手にグーチョキパーのお歌を歌ってくれた。

「みぎてはぱーでぇ、ひだりても、ぱーで、ぱーで……あっ、だーっこ!」

ぎゅーっと抱きついてくるノアに、悶絶したのは言うまでもありませんわ!

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