77 / 189
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜
番外編 〜 不死鳥の冒険5 〜 ノア4歳、イーニアス5歳
しおりを挟む不死鳥視点
真紅美しい羽に金色の長い尾、鋭く光るかぎ爪、我ながら完璧な造形よ。
「とりさん!」
「に、人間が……っ、ひ、火の鳥になった!?」
「ノア様っ、奥様! 火の粉が舞っております! 火傷の危険がありますのでお下がりくださいっ」
む、わしの火の粉で火傷などせんわ! 火傷をする者は、悪意のある者だけぞ!
『ノア、ベル、あちちってしない! だいじょーぶ!』
うむ。妖精よ、よく言った。
「ミランダ、この火の粉はどうやら火傷しないようですわ。妖精が言っておりますので間違いありません」
「あちち、ちないのよ」
「そうなのですか?」
『そうなのだぞ! わしの火の粉は、悪意のある者だけを燃やすのだからな』
フンッと息を吐き、胸を張る。真紅の羽毛が芸術的じゃろう。
「本当に、不死鳥でしたのね……」
『そうじゃ。わしは不死鳥のフィニ! おうむではないぞ。まぁ、おうむというのが何かはわからんがな』
「オウムも珍しい、鮮やかな色の鳥ですのよ」
『そうなのか? しかし……』
小僧の母親という娘を視ると、まさかの事実が発覚したのだ。
『こりゃ驚いたわぃ! 小僧の母御が、闇の女神の娘だとは思いもせんかった!』
「ちょ……っ」
『悪魔に運命を捻じ曲げられた者だとは知っておったが……小僧よ、おぬし本来ならば神の力も手にするはずの魂じゃったか……』
「かみ??」
小僧は首を傾げておるが、娘の方は自身の事を知っておったようじゃの。
『力を封印され、ひ弱な人間と同等にまで落ちてはおるがな……。む、何やら複雑な運命が絡まりあっておるのぅ。半神とはいえ、こんな魂は初めてじゃ』
「ちょっと、さっきから何を仰っているのかわかりませんわ!」
『? わからんだと。よく言うわ。自身が半分神……』
「お待ちになって!! それ以上喋ると、わたくしの旦那様がお怒りになりますわよ」
『なんじゃ、旦那だと? なぜわしがおぬしの旦那に怒られねばならん』
「それは、お喋りが……」
「これは何の騒ぎだ」
闇の女神の娘と話をしていた時じゃ、突然強大な魔力を感じ、わしの尾がピーンと張ったのだ。
寒いっ、なんじゃこの冷気は!?
「「閣下!!」」
「テオ様……っ」
娘と小僧の護衛は直立不動で青い顔をしており、只者でなさそうな娘の従者は、音もたてずに下がると、物影で気配を消す。
「ベル、ノア、何があった」
「テオ様、少し前にノアがお話してくれた、地下迷宮の焔の神殿に居る『とりさん』がお越しになったのですわ」
「おとぅさま、とりさん、フィニっておなまえ、アスでんかから、もりゃったのよ!」
わしは寒いのは苦手じゃ! このような冷たい魔力を持つ者が、この世におるとは聞いておらんぞ!! まるで魔王ではないかっ
「地下迷宮の、鳥だと?」
そう呟いてわしを見るもんじゃから、つい癖で、『鳥ではない! 不死鳥じゃ!!』と突っ込んでしもうたわぃ。そしたらこの魔王、氷点下の目を向けるもんじゃから、視線だけで凍るかと思ったわ。
「迷宮の鳥が、一体我が家になんの用があって来たのだ」
『そうじゃった! 実はの、イーニアスから、美味いものはそこの女神の娘が作り出しておると聞いたのでのぅ、気になって来てみたのじゃ』
ビキッと、わしの美しい尾の先が凍りついた。
『なんじゃと!? わしが、凍りつくなどありえぬ! おぬし、一体何をした!?』
「ほぅ……、私の魔法は凍らせた後砕け散るのだが、貴様は凍っただけで止まったか」
『攻撃!? こやつ、このわしに、攻撃しおったぞ!?』
パニックじゃ! わし、なにもしておらんのに魔王に攻撃されておる!
「おとぅさま、フィニ、こおりゃせるの、めっよ!!」
小僧……っ
「む……なぜだ。ベルの秘密を暴露するなど、到底許せぬ」
「フィニ、おかぁさまいじめて、ないのよ」
そうじゃ! わしが女神の娘を虐めるわけがなかろうが!
「しかし、ベルが困っていたように見えたが?」
「テオ様、フィニ様が少しおかしな事を話していたので、お止めしていただけですわ」
わしはおかしな話などしておらんぞ!?
「そうか……。てっきり、キノコたちのように君に集って迷惑をかけているのかと思ったが……」
『アカ、めーわく、かけてない!』
「毎日ベルに菓子を出せと喚いているだろうが」
『ベルのおやつ、すき!』
なんじゃこの魔王……っ、つがいを溺愛しとるのか!
『小僧、わしはこの夫婦には付き合いきれん! もう帰るぞっ』
この魔王がおらぬ時にまた、邪魔する事にしようぞ。
「フィニ、かえりゅ?」
『帰る! 良いか、小僧。おぬしの父のように、攻撃的な性格にはなってはいかんぞっ』
「? はーい!」
『それと、早いうちに風と水の神殿にも行くのだぞ! わかったなっ』
「はい! ちんでん、いくのよ!」
『うむ。ではまたな、小僧!!』
「はーい。ばいばーい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方、おもちゃの宝箱帝都支店では、
「では皆様、硬貨のサンプルを回しますので、しっかり見てくださいね」
「「「「はい!」」」」
「最近は外貨なども使われる事が増えてきましたので、受け取る時には注意してください。とはいえ、周辺諸国の外貨の金銀銅の含有量は、グランニッシュ帝国と同じと定められておりますので、使用する事は可能です。が、古い硬貨になると注意が必要です───」
硬貨の勉強会が開かれ、間違いがないよう徹底されたのだが、頻繁に古い硬貨が持ち込まれるようになるとは、この時誰も予想していなかったのだ。
ちなみに、最初に使われた金貨は、数日後、ディバイン公爵夫人に報告がいき、無事返却されたという。
510
お気に入りに追加
5,605
あなたにおすすめの小説
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 4巻発売中☆ コミカライズ連載中、2024/08/23よりコミックシーモアにて先行販売開始】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロが苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳
キムラましゅろう
恋愛
わたし、ハノン=ルーセル(22)は術式を基に魔法で薬を
精製する魔法薬剤師。
地方都市ハイレンで西方騎士団の専属薬剤師として勤めている。
そんなわたしには命よりも大切な一人息子のルシアン(3)がいた。
そしてわたしはシングルマザーだ。
ルシアンの父親はたった一夜の思い出にと抱かれた相手、
フェリックス=ワイズ(23)。
彼は何を隠そうわたしの命の恩人だった。侯爵家の次男であり、
栄誉ある近衛騎士でもある彼には2人の婚約者候補がいた。
わたし?わたしはもちろん全くの無関係な部外者。
そんなわたしがなぜ彼の子を密かに生んだのか……それは絶対に
知られてはいけないわたしだけの秘密なのだ。
向こうはわたしの事なんて知らないし、あの夜の事だって覚えているのかもわからない。だからこのまま息子と二人、
穏やかに暮らしていけると思ったのに……!?
いつもながらの完全ご都合主義、
完全ノーリアリティーのお話です。
性描写はありませんがそれを匂わすワードは出てきます。
苦手な方はご注意ください。
小説家になろうさんの方でも同時に投稿します。
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
お幸せに、婚約者様。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる