継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 不死鳥の冒険4 〜 ノア4歳、イーニアス5歳

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イザベル視点


「ど、どなたですの!?」

アカのようにポンッというよりは、スーッと幽霊みたいに現れた男性に恐怖する。

「わしか? わしは……」

あら、この方誰かに似ているような……

「アスでんか? おかぁさま、アスでんか、にてるのよ」
「まぁっ、本当ですわ!」

イーニアス殿下が大人になったらこんな感じになりそうですわね! 皇后様が男装してもこんな感じになりそうですけれど……、という事は、皇后様のご親戚の方? 確か弟さんがいましたわよね……。

「あの、もしかして皇后様の弟さんですの?」
「違う。わしは、」
「奥様、お下がりくださいっ、正体がわからぬ以上、貴女様とノア様をこの男に近づけるわけには参りません!」

護衛が険しい顔をして、正体不明の男性と対峙する。

『ふしちょーの、フィニおじーちゃん! あやしくない!』

アカが、護衛と男性の間に入り、手を広げて叫ぶ。

フィニおじいちゃん? どなたかしら。どう見てもおじいちゃんではないけれど……ハッ! まさか、この方は妖精!?

「ふちちょ……あ、とりさん!!」
「そうじゃ。やっと気付いたか、小僧」
「とりさん、とりさんじゃ、なくなったのね」
「うむ。人化したのでな。この間ぶりじゃのぅ!」

ノアが「とりさん!」と言って嬉しそうに話し始めましたわ!? ノアの知り合いですの? でもそれならわたくしが知らないはずありませんのに……、

「ノア様! 近づいてはいけませんっ」

妖精が見えない護衛は、フレンドリーに近付こうとするノアを止める。

それはそうよね。わたくしでも止めますわ。

「ノア、お知り合いですの? お母様は会った事がありませんが、いつ出会ったの?」
「あのね、ちかの、めいきゅー! とりさん、あったのよ!」

地下迷宮……? それって、焔の神殿があったっていうあの?

「そういえば、珍獣に出会ったと言っておりましたわよね?」
「はい! とりさんよ!」

ニコニコ答えるノアと、その男性の顔を見比べる。

「奥様、ノア様とここから離れましょう」

首を傾げていれば、ミランダが切羽詰まった様子で、私たちを守るように男性から見えないようにしてくれた。

「ミランダ、大丈夫よ。どうやらその方、妖精たちとノアのお知り合いみたいですの」
「「え?」」

ミランダと護衛騎士が同じような表情でわたくしを見るので、二人が落ち着くように微笑んだ。

「ノア、あなたのお友だちに、お母様を紹介してもらえないかしら?」
「はい! とりさん、わたちの、おかぁさまよ!」
「ほぅ、そなたが小僧の母か」

イーニアス殿下にそっくりの美青年は、赤から金色のグラデーションという不思議な色の瞳を、まるで観察しているかのようにこちらへ向けたのだ。

「おかぁさま、とりさんよ! おともだち!」
「初めまして。ノアの母の、イザベル・ドーラ・ディバインと申しますわ。焔の神殿では、息子がお世話になったとか。その節はありがとう存じますわ」
「うむ。わしの名はフィニと言う。不死鳥だ」

不死鳥!? 不死鳥ってあの、寿命がきたら燃え尽きて灰になり、その中からまた生き返るというあの!?

「小僧はこのように小さくても、怖がりもせず、このわしに堂々と話しかけてきた、肝が据わった男よ! 将来が楽しみだの」

自分は不死鳥だといった男性は、ノアをベタ褒めしてくれるので、悪い気はしない。

「とりさん、フィニ?」

ノアが男性の名前を初めて知ったようで、くりくりおめめをぱちぱちさせながら問いかけている。

「そうだ! イーニアスが名付けてくれたのだぞ!! わしによく似合うおしゃれな名じゃろう!」
「はい!」

イーニアス殿下に名前を付けてもらった!? ではやはり、ノアか言っていた、焔の神殿にいるオウム……?

「あの……貴方様は、不死鳥ですの? オウムではなく??」
「ん? おうむというのはなんだ? わしは間違いなく不死鳥よ! 仕方がない。わしの美しい姿を特別に見せてやろう。そこの護衛たちも怪しんでいる事だしのぅ」

そう言って男性は突然炎に包まれ、火の鳥……、不死鳥へと姿を転じたのだ。

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