継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 ノアの赤ちゃん返りリターン1 〜 ノア4歳 イザベル妊娠発覚直後

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「りゃー、りー、りゅー、れー、りょー」
「はい。ノア様、もう一度発音してみましょう」
「はい! りゃー、りー、るー、れー、りょ!」
「とってもお上手になってまいりましたね。では、次はノア様のお好きな食べ物のお名前を、お口に出してみましょう」
「はい! しゅふれ、パンケーキ!」
「美味しいパンケーキですものね。私も大好きです」
「わたち、しゅき!」
「ではノア様、“す”と仰ってみてください」
「しゅ!」
「はい。こんどは、“すー”と語尾を伸ばしてみてください」
「すー、あっ、いえたの!」
「はい。次は、すーふーれと言ってみましょう」
「すーふーれ!」
「お上手ですね」

ノアの赤ちゃん言葉の、本格的な矯正を行うと聞き、ノアが辛い思いをしないか心配になって見学に来たのだけど、何だか楽しそうだわ。

「では、す~フレ、パンケーキ、す~き! と言ってみましょう」
「すーふれっ、パンケーキ、すーき!」
「ではノア様、お母様はお好きですか?」
「はい! だいすーき!」

ノアっ。わたくしも大好きですわ!

「奥様、今はノア様の邪魔をしてはだめですよ」

カミラがコソッと言った事に、そうでしたわ! とハッとして心を落ち着ける。

「はい。ではお次は、すっき! と、すの後に小さなつを付けて言ってみましょう」
「すっき!」

もうっ、なんですのこの可愛さ!

「奥様、そろそろ移動された方がよろしいかと思われます。ムーア先生がお待ちになっているのではないでしょうか」
「まぁ、もうそんな時間ですのね……」

ミランダに促され、後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にする。

ノアはわたくしがいなくなる時、少し寂しそうに見ていたのだが、それがもうつらくて……っ、また後でお母様と遊びましょうね。


「もっと見ていたかったですわ」
「健診はできるだけされるよう、旦那様からも念を押されておりますので、お願いいたします」
「そうよね。妊娠がわかってから、テオ様ったらすっかり過保護になってしまって……。もうすぐ安定期に入りますのに」
「奥様のお身体は決して強くはございません。初めての妊娠に、旦那様も心配されているのです。どうか、ご自身のお身体を大事になさってくださいませ」
「そうね……この子の為にも、健診は大事よね」

とはいえ、わたくしそんなに身体は弱くないのですけれど……。いたって健康ですのに、黒蝶花の毒事件以来、皆に先入観がありますのよね。

「───お食事の量が少ないのが気になりますね。お痩せになられているようにお見受けいたします」
「梅干しのお陰でだいぶ食べられるようにはなったのですけれど、まだ悪阻が収まらなくて……」
「そうでございますか。悪阻もそろそろ収まる頃かとは思いますが、こればかりは個人差がございますのでなんとも……」

そうよね。早めに収まれば良いのだけれど。

「奥様はお薬もあまりおすすめする事が出来ない体質ですので、くれぐれも体調を崩す事のないようお願いいたします。では、今日の所はこちらで失礼いたしますが、一週間は毎日様子をみさせていただきたいと思います」

2週間に一度の健診が、毎日になってしまいましたわ。
わたくし、そんなによろしくないのかしら??

「先生、ありがとうございました」

先生をお見送りし部屋へ戻ると、マディソンが心配そうにひざ掛けを持ってきてくれた。

「マディソン、ありがとう」
「奥様、この3ヶ月で体重が5キロ落ちております。陛下のレシピがなければ、もっと落ちていたのではないかと思うと、坊っちゃまが心配されるのも無理はないかと思います」
「そうですわよね……。でも最近は、マディソンとシェフが陛下のレシピを元に、色々メニューを考えてくれているから食べられるようになってきましたの。それに、もうすぐ悪阻も収まるかもしれませんもの。大丈夫ですわ」
「奥様……」

この日はこれで終わったのだけど、その翌日、

「おかぁさま、いっしょ、あしょ、そぼ?」
「ええ! ノア、お母様と一緒に遊びましょう」
「はい! おかぁさま、わたし、とりゃんぽ、する!!」

まぁ、さっそく昨日の授業の効果が出ましたのね。

「そうね。トランポリンで遊びましょう」
「奥様、ムーア先生がお見えになりました」

ノアと手を繋いでお庭に行こうとしたのだけれど、ミランダに止められ、ノアが「どうちて……?」とわたくしを見るのだ。

「ノア様、奥様はこれから、お腹の赤ちゃんがお元気か、ムーア先生に診てもらうのです。ですので、カミラとトランポリンで遊びましょう」
「はい……」

ノアがシュンとした顔をするので、罪悪感が……っ

「ノア、診察が終わったら、すぐに行きますわ!」
「ほんとぉ?」
「本当よ。お約束ね!」
「はい!」

笑顔を見せてくれるノアにホッとして、診察を受け、さぁっ、ノアの所に行くぞ! と思った時でしたの。
急に立ちくらみがして、わたくし、立っていられなくなりましたのよ。

ああ、ノアが待っておりますのに……っ


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