継母の心得 〜 番外編 〜

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番外編 〜 ネロウディアスの模型展示会4 〜 ノア7歳

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ネロウディアス皇帝視点


とうとう、組立式模型の展示会当日がやってきたのだ。

エリザは朝早くから会場に行ってしまい、朕はレーテと子供たちで朝食を取りながら、子供たちを連れて展示会に行く計画を立てていたのだが……、

「テディの展示会なら行きたいけど……模型はあまり興味なくて……お父様、ごめんなさい」
「わたくしも……。殿方がたくさんいらっしゃる所は怖いわ」
「同じくです」

などと9人中7人の皇女に断られ、後二人のうち一人はエリザだから主催者側で、つまり、展示会に行きたいと言ってくれた子供は、皇子たちと、皇女一人であった。

「護衛の面からも、どうせ全員は連れて行けないんだから、ちょうど良かったと思って元気出しなさいよ」
「レーテ……」

スンと鼻をすすりレーテに抱きつけば、頭を撫でて貰えるのでちょっと……いや、かなり嬉しいのだ。

「さぁ、支度して出掛けましょう」

レーテの声に娘も息子たちも慌てて支度をし始める。
家族でお出掛けは久しぶりなので、朕も張り切って支度した。

レーテの転移で、ディバイン公爵夫人にあらかじめ準備してもらっていたおもちゃの宝箱の空き室へと飛び、そこから皆で会場へと向かう。窓の外には行列が出来ており、イベントの人気の高さが分かった。

エリザはすごいのだな! こんなに大人気のイベントを主催しているのだ。

「母上、私の組立式模型は、ノアと一緒に作ったのです! それに、アカも模型を出品しているのですよ!」
「そうなの! 見るのが楽しみだわ」

イーニアスはニコニコと会場に入ったレーテに、自分の作品がどこにあるのか教えている。

愛息子のその行動は、昔から変わらず可愛いのだ。

まだ会場内にはスタッフの姿しかなく、朕たちは特別に先に入れてもらったらしい。

主催者の身内の特権なのだな!

「ぼくも、にいさまと、もけえしたかった!」
「リュークにはまだ早いよ。手も小さいし、模型作りは意外と力もいるんだからね。そうだよね、イーニアス」
「はい、兄上! リュークはおててが小さいのだから、立体パズルで練習してから、また挑戦するといいのだ」
「はぁい……」

三歳のリュークにはまだ難しいからな。兄たちの言う事を聞いて、危ない事はせぬようにな。

「お母様、お姉様はどちらにいるの?」

娘の方は模型よりも姉を探しているようだ。やっぱり、模型に興味はないのか……。



暫くエリザと話をしたり、会場内を歩き回って作品を見ていたら、開場時間になった途端、一斉に人が雪崩込んできて、驚いた。

その後、ある意味人集りができているディバイン公爵の模型(?)を視界にいれないようにしながら、子供たちと展示会を楽しんだのだ。


「───投票は一人ひと作品なのだぞ。皆、それぞれ好きな作品に投票するのだ」

そう子供たちに言いながら、会場に入る際貰っていた紙に番号を書き、投票箱へと入れる。

今日、いよいよ“模型王”が決まるのだ……。
会場内の全ての作品を見たが、突出して素晴らしいものはいくつかあった。あの中のどれかが、優秀賞を取るだろう。

そんな予想をしつつも、当初の予定通り朕はエリザベス、レーテはイーニアスに投票し、コンテストの結果発表を待つ。

正直、ディバイン公爵がなぜあんなに自信満々なのかは分からぬが、販売ブースで模型を見たり、専用の塗料を見たりしている内に、結果発表の時間がやってきたのだ。

まず、第三位からの発表だ。

舞台上に、エリザが出てきて、何やら用紙に書いてある事を読み上げる。

「第三位は───模型ネーム、“兄の愛が重い”さんで、タイトルは、【人形兵に襲われる!】です。絵本、空飛ぶお城に出てくる不気味な人形兵士をリアルに再現された事が高く評価されました!」

何と、ジェラルド王の作品が、見事入賞したのだ!

「もっと目立つ所にあれば、ジェラルドが優勝だったのに!」と後ろから聞こえてくるのだが……、模型ネームの意味に早く気付くとよいのだ。

「続きまして、第二位は……模型ネーム“アカの妖精”さんで、タイトルは【太陽の海賊船、海を行く!】です。太陽の海賊船だけでなく、海まで表現された技術とセンスが高評価でした!!」

おおっ、まさかアカが二位!! 優勝候補ではあったが、結局、お化けが出ると勘違いされては困るからと、作業ブースを使えなかったのが敗因だろうか。

『アカ……、ゆーしょー、ちがった……!』
「アカ、元気を出すのだ。二位でもすごいのだぞ!」
「そうだよアカ。ご褒美に、美味しいデザート、お母様に作ってもらおう」

朕の横で、イーニアスとノアがアカを慰めているのがすごく可愛らしくてほっこりするのだ。

「そして栄えある第一位! ……の前に、ここで特別賞に輝いた作品をご紹介します! 模型ネーム、“二人の海賊の王”さん! タイトルは、【あったら欲しいね。カタツムリ通信機】です。マイナーなチョイスでユニークな表現をされた事が高ポイントでしたね!」

エリザの言葉に、イーニアスとノアが手を取り合って喜んだ。

「やったぞノア! 私たちの作品が、特別賞を取ったのだ!!」
「やりました! アス殿下!!」

うむうむ、良かったのだ。

「それでは第一位の発表です!!」

その瞬間、会場中と、朕の斜め前にいたディバイン公爵の目が輝いたのだが、ディバイン公爵だけは絶対選ばれないのだぞ。

「第一回、組立式模型展示会のコンテストにて、最優秀賞を手にしたのは……っ、模型ネーム“朕なのだ”さんで、タイトルは、【秘密の庭園】です!!」

な、何と……っ、朕が、優勝したのか!?

「他の方がキットを使用して色や柄で個性を出している中、“朕なのだ”さんの作品は、様々なパーツを駆使し、繊細な細工で素晴らしい庭園を作られている事が、今回の優勝に繋がりました!!」
「父上、すごいのです!」
「ネロおじさま、すごい!!」

子供たちが、尊敬の眼差しで朕を見ている。

うぅ……っ、子供たち皆が朕を褒めてくれているのだ!

「レーテ、やったのだぞ!!」
「良かったじゃない」

レーテに褒められて嬉しいが、ディバイン公爵はなぜ、自分が選ばれなかった事にショックを受けているのだ!? 朕を睨まないでほしいのだ。というか、絶対にあれは選ばれないだろう?!

だって……、

何で模型に宝石使ってるのだ!? ダイヤを散りばめて光を表現するとか、おかしいのだぞ!? いくら美女とモンスターの魔法の薔薇を作ったとはいえ、それ、もう模型じゃないのだぞ!!


こうして、“模型王”に選ばれた朕は、その後毎年開かれるコンテストで三度優勝し、殿堂入りすることになるのだが、ディバイン公爵はというと、二度とコンテストには参加しなかったのだ。


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