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番外編 〜 オリヴァーと女神信者の邂逅1 〜
しおりを挟むオリヴァー視点
「オリヴァー様! あの、この手紙をディバイン公爵夫人へお渡しいただけないでしょうか! 自分、“海賊と秘宝”のミュージカルの大ファンで、ディバイン公爵夫人を尊敬しているんです!」
もう……、
「オリヴァー君! 新作のボードゲームが出るって本当!?」
「シモンズ! 新作の模型なんだが───」
もう……っ
「シモンズ先輩、来月帝都の劇場でやる予定のあのミュージカルに、女神様の作詞、作曲したものが使われるって聞いたんですが───」
もう、いい加減にしてくれー!! 僕はお姉様じゃない!! そういうのは全部、お姉様本人に言ってくれないかな!!
…………って、言えたらどれほど良いか。
「すみません。姉は今領地に居るので、手紙をすぐ届ける事が出来ないんです。ボードゲームというか、おもちゃの新作は月いちで出ているよ。先輩、模型について僕はあまり詳しくはないです。他をあたってください。ミュージカルについては、当日まで何も言う事が出来ないんだ。ごめんね」
一気に言い切ると、足早にその場を離れる。
最近はこんな事ばかりだ。
お姉様が節操なく次々と新しいものを開発していくから……。新素材におもちゃ、馬車やミュージカルまで。最近は領地に“こうえん”というものと、レール馬車を作っているんだとか。
少し前まではただの平凡で天然で常識の無い姉だったはずなのに、いつの間にか女神様だなんだと言われるようになっていた。
何だか遠い所に行ったみたいじゃないか……。
実際、ディバイン公爵と結婚したお姉様は、どんどん美しくなっていくし、キラキラも増した気がする。
もちろん僕だって、新素材で色々実験するのは大好きだし、お姉様が喜ぶようなものを開発したりもしているけど、お姉様には一生追いつけないような気がするんだ。
……少し寂しい、とか、絶対思ったりしないんだからな!
「はぁ……アカデミーで出来た友達も、最近はお姉様の事ばかり聞いてくるし、先輩も後輩もあの通りだし……もちろんお姉様を尊敬してくれるのは嬉しいけど、普通に話が合う友人がほしいなぁ……」
なんて、贅沢な事を思っていたからだろうか……。
◇◇◇
「みなさーん! 本日は、皆さんの“こみゅにけーしょん能力“を向上させる目的として、アカデミーの学生貸し切りで特別にミュージカルを上演してもらえる事になりました! お昼からは劇場に向かいますので、楽しみにしていてくださいね!!」
翌朝の事だ。
担任が、僕らの出席を確認した後、口にした言葉にその場にいた僕以外の全員が歓喜の悲鳴を上げた。
それは他の教室からも聞こえてきて、暫く授業にならないほどだったのだけど、どうして突然そんな事になったのだろう……。
担任の言う、“こみゅにけ、しょ……? 能力”が一体何かもわからない。
「これは、日頃アカデミーで頑張っているみなさんへ、皇帝陛下からのプレゼントだそうです! 皇帝陛下と皇后陛下、そしてイーニアス第2皇子も参加されますので、絶対に失礼のないようにお願いしますね!」
皇帝陛下!? 何で陛下が……っ、まさか、お姉様何か陛下に頼んだりしたんじゃ……、皇后陛下とお姉様はママ友とかいう仲の良い友人だし、皇帝陛下とも親交がある。
お姉様……っ、やらかしていませんよね!?
「はい。では、お昼までしっかりお勉強しましょうね! ちなみにミュージカルの題材は、“どんぐり森の妖精”ですよ」
「───オリヴァーではないか!」
「あら、本当。アカデミーに通っていると聞いていたけど、こんなにすぐ見つかる…ゲフンッ、会えるとは思わなかったわ!」
「オリヴァーどの、ひさしいな!」
皇帝一家との予期せぬ邂逅!? 何でこんな所にいるんですか!? ここ、一般人用の出入り口ですよ!!
「て、帝国の太陽に拝謁致します」
「うむ、楽にせよ。オリヴァーと朕の仲なのだ」
え、僕は皇帝陛下とそんな仲良くなった記憶はありませんけど!?
「皇后陛下、イーニアス殿下、拝謁賜り光栄でございます」
「元気そうでなによりだわ。あなたのお姉様も、あなたがアカデミーで元気にやっているか心配していたわよ」
「うむ! またともに、あそんでもらいたい」
これは……、他の貴族子息への牽制では……?
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「そうだわ。ちょうどあなたに紹介したい人がいるのよ」
「え?」
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「エリオット、ご挨拶しなさい。オリヴァー、この子、アタシの弟のエリオット・コーデン・イートン侯爵よ」
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