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番外編 〜 雑草だと思っていたら 〜 ユニヴァ王子視点
しおりを挟むユニヴァ視点
ディバイン公爵に頼まれた“コメ”という植物はなかなか見つからない。
もしかしたら家畜が食べているかもしれないと言われ、探してみたが、結局この貧相な豆しか見つけられなかった。
“コメ”が見つかれば、ジェラルドが気に入って食べていた、カレーにも合うと聞いたから探してはいるのだが……。
「ディバイン公爵も無茶な事を言ってくれる」
収穫物が何もないのはまずいだろうと、緑色の三日月のような形をした皮の中に、四つほどの小さな豆が出来る植物を取ってきたのはいいが、見た目は雑草だ。
これではディバイン公爵に無能だと思われかねん。
「どうしたものか……」
今回は一人、グランニッシュ帝国へと足を踏み入れ、久々にディバイン公爵家へ訪問する。
秘密裏の訪問なので特に護衛もいない。
「───ユニヴァ殿下、良くお越しいただいた」
「ディバイン公爵、久しぶりだな」
予め手紙を出していた為、領都に入った段階ですぐに迎えを寄越してくれて、すんなりと会う事が出来たが、一年ぶりに来たディバイン公爵領はさらに発展しているようだった。
街は活気に溢れていた。我が国もそのようにならなければ……。
「……奥方が出産されたと聞いた。ジェラルド王と私から、出産祝いを贈らせてもらったので後程届くだろう」
リッシュグルス国も、国王が交代しバタバタしている所なので、弟が直接会いに来る事は出来ないが、どうしても女神様に祝いの品を届けて欲しいと言われ、今回はわざわざ足を運んだのだ。
「お気遣い痛みいる。ところで、例のものを頼んで一年が経つが、進捗はどうだろうか」
「あー……いや、その……探してはいるのだが、なかなか……」
ディバイン公爵は無表情のまま、じっとこちらを見据えている。
クソッ、絶対無能だと思われている……っ。
この男はカレーが殊の外好きらしいから、“コメ”も楽しみにしているのだと、先程部屋に案内してくれた執事に聞いたが……。あれか、執事まで私にプレッシャーをかけているのか?
「代わりと言ってはなんだが、興味を引くのではないかと、持ってきたものがある」
例の豆を取り出せば、「雑草か」と呟かれた。
くっ、雑草で悪かったな!
「念の為、奥様にも見ていただきましょう。奥様は植物図鑑を読む事がお好きですので、何か分かるかもしれません」
前から思っていたが、ディバイン公爵夫人は一体何者なんだ!? 様々な研究をしている著名な研究者か何かなのか!?
「そうしてくれ。虫がいないか確認して洗い、取り除いてからベルに見せてやってくれ」
きちんと洗ってきたぞ!? ちょくちょく失礼な男だな!
執事が三日月豆(勝手にこう呼んでいる)を持って行ってから暫くして、ディバイン公爵夫人と共に戻って来たので驚いた。
「ディバイン公爵夫人、久しぶりですね。出産おめでとうございます。元気そうで何よりです」
「ユニヴァ殿下、お久しぶりでございますわ」
相変わらずディバイン公爵と並んでも見劣りしない美しさだな。ウチのジェラルドには負けるが。
「ユニヴァ殿下、こちらの植物はユニヴァ殿下が持って来てくださったと伺いましたが、どちらで手に入れられたものですの!?」
「これは、我が国に隣接する国で見つけたものだが……。三日月のような形をしているので、三日月豆と呼んでいる」
夫人の迫力に身体が仰け反ってしまう。
「三日月豆……これは、素晴らしい発見ですわよ!! 旦那様、この植物、栽培してみとう存じますわ!!」
「ベルがそうしたいというなら、好きにすると良い。必要なものはウォルトに準備させる」
「ありがとう存じます! これで、大豆やお醤油、お味噌も出来ますわ!!」
「よく分からないが……ユニヴァ殿下、妻を喜ばせていただき感謝する」
私が一番理解不能なのだが?? 持って来ておいてなんだが、なぜあんな雑草で喜べるのか不思議でならない。
この雑草が、素晴らしい調味料となり、三日月豆醤油、三日月豆味噌として世界中で食されるようになるのだが、それはまた別の話……。
ちなみに私が、三日月豆を塩ゆでしたものが大好物になるのは、運命だったのかもしれない。
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