341 / 371
第二部 第3章
458.ノアとウェルスの力
しおりを挟む皇帝陛下は皇后様とテオ様の指示により、災害救助隊を即座に編成。ウィニー男爵領に向かわせた。
後に、その迅速な対応で、ウィニー男爵、領民だけでなく、グランニッシュ帝国の全国民に賢帝と讃えられ、ますますネロウディアス帝の人気は高まっていった。
同時に、支援物資等を運搬する用の馬車や支援金をディバイン公爵家、シモンズ伯爵家、ベル商会から寄付する形を取り、皇室への協力をアピール。貴族に対し、完全に派閥が消滅した事を周知したのだ。
そして……氷の魔石がどうなったかというと……
皇后様が後日派遣した調査団によれば、ウィニー男爵領の氷の魔石は、思った以上の埋蔵量だったらしい。
どうやら、山全体……つまりウィニー男爵領の地面が全て、魔石の塊のような状態だったのだとか。
「魔力が豊富とはいえ、たった一人の人間に山一つを魔石にする事は可能なのかしら……」
ディバイン公爵家の初代であるウェルス様は、ノアの前世だ。ノアは確かに豊富な魔力を有している。しかもわたくし考案の魔力コントロール法に、妖精、珍獣との契約……、前世よりも大きな力を持ってしまっただろう。
けれど、ノアから魔力が溢れ出るような事もなければ、ディバイン公爵家の敷地を氷の魔石に変えるわけでもない。力を抑え込んでいるのかというと、そういうわけでもなさそうなのだ。
「ももんちゅによると、管理者になった事で力は増すけれど、珍獣と繋がりができ、溜め込んでいた力を珍獣が逃がして、暴発するという危険性がなくなった、と言っていましたわね」
テオ様は、ウェルス様が神殿の管理者だったと仰っていましたわ。という事は、ウェルス様もノアと同様だったはず。
「……それなら、ウィニー男爵領を氷の魔石に変えたのは、ウェルス様ではない?」
いえ、そもそも、誰かが変化させたと考えるのがおかしいのかもしれない。
「前提が間違っていたとすれば───」
「おかぁさま、どぅちたの? ポンポン、いたた?」
「かぁちゃ、ぽぉ、ぽぉ、ったた?」
可愛いお顔が二つ並んで、わたくしを見上げておりますわ。
リビングで趣味の読書をしながら、合間にウィニー男爵領やウェルス様の事を考えていたら、いつの間にか、お勉強が終わったらしいノアとぺーちゃんが来ているではないか。
「ノア、ぺーちゃん、お母様、考え事をしておりましたの。お腹が痛いわけではありませんのよ。心配させてしまいましたわね」
二人に、こちらへいらっしゃい。と隣に招き頭を撫でる。
「今日はどんなお勉強をしたのかしら?」
「きょーは、はちゅ……はつ、おんの、れんしゅ、ちたのよ」
「ぺぇちゃ、みょ!」
「それは、お勉強の成果が出ておりますわね。『はつおん』と、綺麗に言えておりますわ」
ノアはわたくしの言葉に、嬉しそうに頷くと、「あめんぼ、あかいな、あぃ、ゆえお!」と教えてもらったであろう発音練習を披露してくれる。
「にょあ、ちゅっぎょー!」
「うふふっ、しゅごい? ぺーちゃんも、おじょうず、だったのよ」
「ぁい! ぺぇちゃ、みょ、ちゅっぎょー!」
「しょうよ。ぺーちゃんも、すっごーいの!」
あらあら、可愛らしいやり取りですわね。
ノアとぺーちゃんは、きゃっきゃとお話しながら、仲良く笑い合っている。
こんなに可愛らしいノアが風と水の管理者で、妖精と契約し、氷の攻撃魔法が使えるとは、想像できませんわね。ぺーちゃんも、瞳に浮かぶ魔法陣から、特殊な体質だと推測はできますけれど……、可愛い子供たちが、これから先、特別な力について悩まされたりしなければいいのですけれど……
「おかぁさま、きょーは、わたち、えほんよむのよ」
「あら、今日の絵本の時間は、ノアが読んでくれますのね」
「ぺぇちゃ、みょ!」
「ぺーちゃんは、まだ文字を習っていませんから、お母様のお膝の上で、ノアの朗読……お話を聞きましょうね」
「にゃ……、ぺぇちゃ、ちゅっぎょー」
ちゅっぎょー? すごいって言っておりますのよね? もしかして、文字が読めるとか? ……いえ、まさかそれはありませんわよね。まだ赤ちゃんですもの。わたくしったら、おかしな事を考えてしまいましたわ。
「もちろん、ぺーちゃんは、すっごーく、可愛い子ですわよ」
「にゃ、ぺぇちゃ、きゃ、ぃ?」
おめめをくりくりさせて、コテンと首を傾げているぺーちゃん、可愛すぎますわ!
「ええ。ぺーちゃんもノアも、とっても可愛いですわ」
「にょあ、ぺぇちゃ、きゃ、ぃー!!」
マディソン、先程から頬が緩みっぱなしですわよ。その気持ち、わかりますけれど!
こうして、ぺーちゃんの可愛さに身悶え、ノアの絵本朗読にも身悶え、幸せなひと時を堪能したのであった。
~ おまけ ~
「───かめお、たしゅ、たすけた、おとぅさま、かめに、さらわれてりゅ? ちがうの。かめ、のって……」
「の、ノア。確かにわたくし、テオ様をモデルに描きましたけれど、もしかして、絵だけでお話を勝手に作っておりません?」
「かめさん、のる……おかぁさま、かめさん、おとぅさまにちゅぶされた……」
「みゃおー、きゃ、んめ、ちゅぶ!?」
この後、ノア様の絵本の朗読は、テオバルド坊ちゃまが助けた亀を潰した、潰さない論争に発展し、ノア様が泣いてしまった為に強制終了になりました。
このマディソン、ノア様の想像力に感服です。さすがディバイン公爵家の後継ぎ。ディバイン公爵家は安泰ですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも【継母の心得】をお読みいただき、ありがとうございます。
皆様の応援のお陰で、ノベルは4巻まで出版させていただけ、コミカライズにもなり、感謝の気持ちでいっぱいです。
1週間ほどお盆休みをいただいておりましたが、本日より、毎日更新を再開いたします。
今後も楽しんでいただけるよう、精進してまいります。
よろしくお願いいたします。
4,962
お気に入りに追加
27,690
あなたにおすすめの小説
白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!
ユウ
恋愛
辺境地に住まう伯爵令嬢のメアリ。
婚約者は幼馴染で聖騎士、親友は魔術師で優れた能力を持つていた。
対するメアリは魔力が低く治癒師だったが二人が大好きだったが、戦場から帰還したある日婚約者に別れを告げられる。
相手は幼少期から慕っていた親友だった。
彼は優しくて誠実な人で親友も優しく思いやりのある人。
だから婚約解消を受け入れようと思ったが、学園内では愛する二人を苦しめる悪女のように噂を流され別れた後も悪役令嬢としての噂を流されてしまう
学園にも居場所がなくなった後、悲しみに暮れる中。
一人の少年に手を差し伸べられる。
その人物は光の魔力を持つ剣帝だった。
一方、学園で真実の愛を貫き何もかも捨てた二人だったが、綻びが生じ始める。
聖騎士のスキルを失う元婚約者と、魔力が渇望し始めた親友が窮地にたたされるのだが…
タイトル変更しました。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
【完結】悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のマリアンヌには第一王子ジャルダンという婚約者がいた。
しかし、ジャルダンは男爵令嬢のロザリーこそが運命の相手だと豪語し、人目も憚らずに学園でイチャイチャしている。
ジャルダンのことなど好きではないマリアンヌにとってはどうでもいいことだったが、怒った父の公爵が婚約破棄の準備を進める中、マリアンヌは自分の噂話の現場に出くわしてしまう。
思わず聞き耳を立てると、最初はジャルダンとロザリーの非常識な振舞いに腹を立てているありきたりな内容は、次第にマリアンヌが悪役令嬢となってロザリーにお灸をすえて欲しいという要望に変わっていき――
公爵令嬢として周囲の期待に応えることをモットーとして生きてきたマリアンヌは、完璧な悪役令嬢となってロザリーに嫌がらせを行うことを決意する。
人並み外れた脚力と腕力を活かしてヒロインに嫌がらせを行い、自分のアリバイをばっちり作って断罪返しをする悪役令嬢……を期待された公爵令嬢のお話です。
ゆるい短編なので、楽しんでいただけたら嬉しいです。
完結しました。
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
手切れ金代わりに渡されたトカゲの卵、実はドラゴンだった件 追放された雑用係は竜騎士となる
草乃葉オウル
ファンタジー
上級ギルド『黒の雷霆』の雑用係ユート・ドライグ。
彼はある日、貴族から依頼された希少な魔獣の卵を探すパーティの荷物持ちをしていた。
そんな中、パーティは目当ての卵を見つけるのだが、ユートにはそれが依頼された卵ではなく、どこにでもいる最弱魔獣イワトカゲの卵に思えてならなかった。
卵をよく調べることを提案するユートだったが、彼を見下していたギルドマスターは提案を却下し、詳しく調査することなく卵を提出してしまう。
その結果、貴族は激怒。焦ったギルドマスターによってすべての責任を押し付けられたユートは、突き返された卵と共にギルドから追放されてしまう。
しかし、改めて卵を観察してみると、その特徴がイワトカゲの卵ともわずかに違うことがわかった。
新種かもしれないと思い卵を温めるユート。そして、生まれてきたのは……最強の魔獣ドラゴンだった!
ロックと名付けられたドラゴンはすくすくと成長し、ユートにとって最強で最高の相棒になっていく。
その後、新たなギルド、新たな仲間にも恵まれ、やがて彼は『竜騎士』としてその名を世界に轟かせることになる。
一方、ユートを追放した『黒の雷霆』はすべての面倒事を請け負っていた貴重な人材を失い、転げ落ちるようにその名声を失っていく……。
=====================
アルファポリス様から書籍化しています!
★★★★第1〜3巻好評発売中!★★★★
=====================
【完結】私の大好きな人は、親友と結婚しました
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
伯爵令嬢マリアンヌには物心ついた時からずっと大好きな人がいる。
その名は、伯爵令息のロベルト・バミール。
学園卒業を控え、成績優秀で隣国への留学を許可されたマリアンヌは、その報告のために
ロベルトの元をこっそり訪れると・・・。
そこでは、同じく幼馴染で、親友のオリビアとベットで抱き合う二人がいた。
傷ついたマリアンヌは、何も告げぬまま隣国へ留学するがーーー。
2年後、ロベルトが突然隣国を訪れてきて??
1話完結です
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。