継母の心得

トール

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第二部 第2章

288.フェリクスの名にペの字はない 〜 クレオ大司教視点/テオバルド視点 〜

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クレオ大司教視点


「大司教、お待ちください! もし騎士団に捜索願いを出せば、それを理由に教会へ騎士団の立ち入りを許してしまう事になります! あのような粗暴の者たちをこの神聖な場所へ招くなど、神への冒涜ぼうとくです!!」

フェリクスが、赤子の行方がわからないというのに、このような愚かな事を口にする司祭にうんざりする。

騎士団の出入りが神への冒涜というのならば、お前のような欲に塗れた者の出入りを許す方が神への冒涜ではないか。やれやれ、の影響が公爵領の教会にまで広がっておったとは……

「それがどうしたというのか。やましい事があるわけでもない。それよりもフェリクスの行方がわかるのであれば、喜んで騎士団を迎えようではないか」
「大司教! なりませんっ、たかが孤児の赤子がいなくなっただけで、ディバインの騎士団に教会内部に立ち入るきっかけを与えてしまっては、教会の立場が……っ」

たかが、孤児の赤子じゃと……!!

「フェリクスはわしの大切な孫で、『神託の子』。お主らよりもよほど大事な子供よ!」
「ぐ……っ」

いかん。私とした事が、フェリクスを悪く言われてつい、言い過ぎてしもうたか……?

騒ぎ立てていた司祭が、顔を怒りで真っ赤にさせ震えている。

何だその態度は。排他意識があるこやつに反省は見られんな。フンッ、今のでも言い足りんかった。

「……大司教、確かに我々にやましい事はございません。しかし、ディバイン騎士団に教会内部の捜査を許可してしまえば、教会の権威が弱まっている今、世間は教会がディバイン公爵家の下についたと認識するでしょう。そのような事になれば、この国のバランスを大きく崩す事になりかねません」

おそらくあやつの回し者であろう司祭の、上司である司教が意見してくるので思わず睨んでしまったわ。
しかし、司教の言うように、グランニッシュ帝国の情勢は、皇室、教会、ディバイン公爵家の三つ巴。
それが一年前、シモンズ伯爵家の娘が公爵家に入った事で、比重がディバイン公爵家に大きく傾いてしもうた。じゃが、公爵家は皇室を支持し、魔法契約まで行っているという噂じゃ。だからこそ、かろうじてバランスが保たれておる。
しかし、ここで大司教である私が、教会に公爵家の騎士団を招いてしまえば、こやつの言うようにバランスが崩れる可能性も低くはないのだ。最悪、教会と国が対立しかねぬ。

「これ以上ディバインに力をつけさせては危険です。ご考慮いただけますよう」

フェリクス……っ

「わかった……」
「大司教、ご配慮いただき感謝いたします」

ならば、私個人がディバイン公爵に頼めばよい。思慮深い公爵のこと、秘密裏に動いてくれるじゃろうて。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



テオバルド視点


「な、なんと……っ、公爵がフェリクスを保護してくださったのですか!!」

ぺーと言う子供の調査を始めてすぐ、クレオ大司教が公爵邸を訪ねてきた。
私が留守の間も何度か訪ねてきたらしいが、まさか大司教がぺーの祖父だったとは……。

「フェリクスは無事でしょうか!? 怪我はしておりませんでしたかな!? 熱を出したり、気絶したりしませんでしたか!?」

まくしたてるようにぺーの心配をする老人は、切れ者と評判の大司教と同一人物とは思えないほど、祖父として本気で心配する目をしていた。

「怪我などなく、熱もない。念の為医師に診察させたが、いたって健康だそうだ」
「ああ……っ、神よ。ありがとうございます!!」
「ただ、気絶は二度ほどしたようだが……何かの持病でもあるのか?」
「二度、気絶しましたか。なるほど……フェリクス……」

呆れたような、恥ずかしそうな顔をする大司教に、つい不審げな視線を送ってしまう。

しかし、ぺーの本名は、フェリクスというのか……。なぜぺーになった? ペなど一文字も入っていないではないか。


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