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8.プレゼンをしよう

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「ルドルフ様、学校では楽しく過ごされておりますか?」
「ぇ……あ、そうだな……」

あ、マズい。

私の中ではルドルフ君はものすごい美形だけど、この世界ではものすごい不細工になるんだった。しかも貴族は容姿で優劣を判断しがちな生き物でもある。ルドルフ君は高位貴族だから、表立って虐めてくるような人はいないだろうけど、この反応だと距離を置かれているのかもしれない。

「……ユーリは?」
「え?」
「ユーリは、学校……楽しいか?」
「そうですわね。わたくしは、ルドルフ様に会えないので楽しくありませんわ」
「!?」

予想外の答えだったのか、私の返事にキョトンとしているルドルフ君も大変可愛らしい。

「いつも、ルドルフ様は今頃何をされているのかしらって、そればかり考えてしまいますの」
「っぼ、僕も! 僕もユーリの事ばかり考えてる!」
「まぁ、それは嬉しいですわ」

ヘラリと笑えば、ルドルフ君は顔を真っ赤にさせ瞳を潤ませる。なんて可愛いんだろうか。

「僕、ユーリの婚約者として相応しくなれるよう頑張るから、だから、だから、捨てないで!」
「捨てるだなんてっ、わたくしがルドルフ様をどれほど想っているか、伝わっておりませんでしたか?」

どさくさに紛れて彼の両手を握れば、頭をふるふると振って困ったように笑うので、つい抱き締めてしまいたくなった。

「ユーリが僕の事を大切に思ってくれてるのは分かってるんだ。けど、僕はこんな容姿だから……」

不安なんだと漏らす言葉に、胸がギュッと締め付けられる。

ルドルフ君は世界一可愛いから!!!!

声を大にして叫びたいが、きっと誰にも分かってもらえないのだろう。

「何度も言っておりますでしょう? 貴方の容姿も含め、貴方の全てが好きなのです」
「っユーリ……」
「不安であれば、何度でも申しましょう」

わたくしの婚約者は、いいえ、わたくしの旦・那・様は、ルドルフ様ただお一人ですわ。

12歳にあるまじき告白をした後、泣き崩れたルドルフ君を甘やかしまくってから別れ、我が家に帰ってきた私は、彼の為に『新たな学校を創る』決意を固めた。
もし、ルドルフ君が学校を退学になっても、受け入れる学校が他にあるなら問題ないのではないか。と考えた結果だ。

容姿や出自で差別される事のない、完全実力主義のインターナショナルスクールを、私は創る!! この有り余る財力と権力を使ってな!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「海外に進出する商家が増えている昨今、内向的な授業カリキュラムは時代にそぐわないのでは、との考えから、我が国の伝統を守りつつも、新たな風を取り入れた学校が必要ではないかと熟考致しました。そこでご提案いたしますのは、我が国初のインターナショナルスクールです」
「しかし、国営の学園が存在するのだ。今更学校を建ててもなぁ……」
「優秀な留学生を多く誘致する事は、我が国の今後を考えても利点がございます。例えば、他国との繋ぎになるだけでなく、多文化に触れられる事により、語学力の向上や、探究型の思考が育ちやすくなる事、等です。留学生との交流を持って国際社会で活躍する人材を育成し、今後来るであろうグローバル化に対応する能力を持った、優秀な人材を多く生み出すという事は、我が国の重要な───」

学校を創ると決めた私は、さっそく資料を作り、祖父と父、その補佐である執事長を加えた三人にプレゼンを行っている。いくらお金が有り余っているとはいえ、所詮12歳の子供だ。さすがに学校を勝手に創るわけにもいかないわけで、大人に頼る必要がある。

それに、一人前の貴族として認めてもらえる学校は、国の認可が必須なのだ。特に王族の御墨付をもらうには、父や祖父の協力が必要不可欠というわけである。

「ふむ。確かに近年他国との交流が増え、外交に強い人材の育成は重要事項と認識はしていたが、新たな学校か……」
「さっすがユーリちゃん!! ウチの娘は天使で女神で天才だよ!!」
「その美しさも天上の如くでございますが、資料も非の打ち所がございません。お嬢様の多才ぶりには驚きを隠せませんね」

この中で唯一真剣に話を聞いているお祖父様は良い。執事長もまぁ良いとして、お父様、きちんと話を聞いてます?

「はぁ! 愛らしい瞳が私を映してる!!」

ブレないな、父よ。
しかしこんな風だが、この人かなり有能らしく、父が公爵家を継いでから増々繁栄しているらしい。解せぬ。

「ふむ。では、実際に教鞭をとる者や授業カリキュラムなどを具体化した上で、国の認可を貰ってこよう。王家には何らかの功績を出さねば認められぬが……」
「存じ上げております。人材育成には時間もお金もかけねばなりません。結果が出るのはまだ先の話になるでしょう。ただ、お祖父様もお父様も、他国の王侯貴族に伝手がお有りだとお伺いしました。出来れば、留学生は高位貴族や王族などの誘致が望ましいかと存じますわ。お二人のお力でお誘いいただけませんでしょうか?」
「勿論だよ! 他国の高位貴族だろうが王族だろうが、引きずってでも連れてくるからね!」

引きずったらダメだからね!

「うむ。ならば世界中から優秀な教授陣も集めようぞ。やるからには、この国……いや、どこの国にも負けぬ学校を、我が領地に創るのだ」
「はい! ありがとうございますっ」

持つべきものは孫と娘に激甘な大金持ちの権力者である。

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