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第一章
46.邪竜……?
しおりを挟む【ふんっ 邪竜などとセンスのない言い回しをしおって。まぁいい、娘、我の為にその力を使え】
センスが無いって言われた!!
あれ? 邪竜の身体が所々霞んでる?
そういえば、力が完全に戻ってなかったんだっけ。
【聞いているのか。愚鈍な娘め】
「失礼な! リッチモンドさんと双子だって聞いてたけど、全然似てないですね!」
【我はあれとは違い、優れておるからな。しかし、見た目は似ておるだろう】
「見た目こそ正反対ですけど!?」
リッチモンドさんは紳士的なのに、このドラゴンは不遜な感じだ。
【娘、お前の力は我のものだ】
「何で私の力が貴方のものなんですか!」
【お前はもう我のもの。だからその力も我のものなのだ。その小さな頭に叩き込んでおけ】
「さっきからちょくちょく失礼ですよ!!」
【うるさい】
邪竜はよっこらしょという感じで座り込み、顔を近付けてくるので後ろに下がる。
「な、何ですか?」
【何故お前のような小娘を、リッチモンドは気に入っておるのか……全く分からぬな】
「やっぱり失礼ですね!!」
【そうだ。我にもあれを作れ】
「あれ?」
【白い長いやつだ!】
「白い、長い?」
【何故分からぬ!? 琥珀色のスープの中に入った、白く長いあれだ!!】
もしかして、うどん?
「うどんですか?」
【多分それだっ 我はあれが食いたい!!】
「いや~、材料が無いので、取りに帰らないと作れませんけど……」
【フンッ 我は知っておるぞ。お前は家を作るスキルを持っている。家さえ作れば、畑も材料も付いてくるだろう。“見て”いたぞ】
「封印されてたのに、外が見れたんですか?」
【我の一部はリッチモンドに繋がっているからな】
一部が繋がっている……。じゃあ、もし邪竜が倒されたら、リッチモンドさんになんらかの影響があるんじゃないの……?
【さぁ、早く家を出して“うどん”というものを作るがよい】
「はぁ、それは良いですけど……もしかして私を拐ったのって、うどんを食べたかっただけだったり……します?」
【うっ うるさい!! 我はよく分からんが邪竜と呼ばれておるのだぞっ ドラゴンの国を滅ぼした邪竜だぞ!!】
「私にセンス無いって言ってたくせに、自分で邪竜って言ってるし、貴方、本当にドラゴンの国を滅ぼした本人ですか?」
【うっ 我が貸してやった力で“奴”がしでかしたのだ!! だから我がやった事だ!】
どうしよう……、
このドラゴン、お馬鹿だ。
「あの、もしかしてリッチモンドさんと敵対した時、誰かに何か……アドバイスみたいなものをもらったりしましたか?」
【!? な、なぜ分かる!? しかしリッチモンドと敵対はしておらん!】
やっぱりだ。
「じゃあ、リッチモンドさんに不遜な態度をとったのは、例えば……ご両親に、あいつとお前は立場が違うんだから、それなりの行動をとるべきだ! みたいな事を言われた、とか?」
【そうだ! 父上がきちんと差をつけてやらねば、リッチモンドが困ると言っていた。それに、リッチモンドの魔力は元々お前のものだと言われていた】
「じゃあ、何でリッチモンドさんの身体を乗っ取ろうとしたんですか!?」
【乗っ取る? そんな事はしておらん。リッチモンドは魔力が高すぎてつがえるものがおらぬと苦労していたのだ。我は魔力が平均量なのでな。二人で分け合えばリッチモンドもつがえると言われ、よく分からぬ魔術をかけてもらったら、我の魔力が増え、リッチモンドと一部が繋がったのだ】
「え? 私は貴方が何万人もの人を生贄にして魔力を増やしたって聞いたけど??」
【? 我はそのような恐ろしい事などせん!】
どういう事??
「でも、ドラゴンの国を滅ぼしたんですよね?」
【この国の民が我の弟を追放したのだぞ!! 非道な事をしたのだ!! 建物を破壊する位で済ませてやったのだから、反省して自分達で国を建て直すがよかろう】
え、いや、結構な数が亡くなってるみたいなんですが……。
「あの、もしかして……貴方ここから動けないんですか?」
【その通りだ! 娘、お前の村に行きたかったが、封印を解かれてから、まだ力が戻らぬ】
「……えーと、この国に執着してたのでは?」
【弟が建てた国だったからな! しかし、国民も国を動かす者もクソだった。あれだけ国に尽くしてきたリッチモンドを追放したのだ! そんな国に留まる意味はない。我も娘の村へ行く】
「そうですか……。私の力が貴方のものって言っていたのは……」
【娘は弟とつがうのであろう? ならば我の義妹。家族の力は我の力だ。そして我の力は家族の力なのだぞ!!】
この邪竜、邪竜じゃなくて、弟思いのお兄ちゃんだったーーーー!!!
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