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16:豆腐百珍

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「寂しい顔?」
「意味わかんないでしょ? でも、全部食べたんだって」
 食べたんだ。
「彼氏の仕事は?」
「会計士、ちなみにメニューは豆腐と油揚げの味噌汁、冷奴、炒り豆腐、麻婆豆腐」
 豆腐屋さんに、だよね?
「あえてよ。豆腐勉強してますってアピール。でもあえて豆腐はスーパーで購入」
「スーパーで購入が、あえてなの?」
「豆腐屋で買ったら、良くても悪くても、豆腐屋の彼氏のお父さんに角が立つでしょ」
 豆腐だけに角?
「頭ぶつけろ。でも、豆腐一種類で全部料理しちゃったって、言ってたから、それが失敗だったのかも」
「絹? 木綿?」
「やわらかいのだって」
「お待たせしました。星型ピザです」
 ローテーブルに、ピザが置かれた。
 中央はマリゲリータなのだけど、六ヶ所が尖っていて、その部分は生地が折ってあり、中にはリコッタ・チーズが入った特製ソーセージが包まれているのだ。
 破けそうなソーセージ以外で、唯一食べられる特別なソーセージメニューなのだ。
「どうぞ、ごゆっくり」
 立ち上がったパパに、彩香が、声をかけた。
「この話、どう思います? バーテンダーさん」
 ちょ、おま、ナニしてくれてるの!?
 慌てる私に気づかないように、パパは、小首を傾げて、少し考えた後、
「思うに、社会が進みすぎたのではないでしょうか?」
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