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29:狐憑き

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「合コンで、彼女?」
「もう、人が変わったように。え?」
 今、気になるのは、そっちじゃない。
「彼女、できたの?」
「あ、ええ、まあ」
 またか。
 将兵は、学生のころから、なんでもすぐオカルトに関係した女性と付き合う傾向があった。
「目つきも、怖いくらいに目を見開いて、すごい表情らしいです」
 話題を逸らそう、としているが社会人になったのに、まだそのままなのか?
「あ、これ彼女の写真です」
 おいおい。
 見なきゃいけないの?
 スマホを渡されて、渋々見た。
 はいはい、美人美人。
「更年期とか、じゃないの?不安定になるみたいだし」
「更年期障害なら、母がなりましたけど、怠くなるみたいです」
 確かに、身体が辛いし、やる気も出ないから、ベッドから出られない、とか聞くよね。
「でも、夜も寝ないで掃除をしたりするらしいです。彼女も心配していていて。でも病院へ連れていくのも怖いらしくて」
 ローテーブルに、小鉢が置かれた。
 片栗粉の衣をつけ、高温でサッと揚げて暖かい出汁につけた胡麻豆腐だ。
 できたては中心がまだ冷たくて、少し時間を置くと余熱と出汁で中までトロトロになって、温度差と食感が、いつ食べたらいいのか迷ってしまって、ビールが止まらないのだ。
「どうぞ、ごゆっくり」
 立ち上がったパパに、将兵が、声をかけた。
「この話、どう思います? バーテンダーさん」
 ちょ、おま、ナニしてくれてるの!?
 慌てる私に気づかないように、パパは、小首を傾げて、少し考えた後、
「思うに、病気、ではないでしょうか?」
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