きんだーがーでん

紫水晶羅

文字の大きさ
上 下
65 / 100
衝動

しおりを挟む

 聖が学校に姿を見せなくなってから、三日が過ぎた。

 元々真面目な生徒ではなかったが、さすがに三日も来ないというのはおかしい。
 表向き彼女ということになっている楓の元に、クラスメイトたちが次々と様子を探りに来るが、あれ以来連絡をとっていない楓には説明のしようがなく、「風邪をこじらせたみたい」と誤魔化すより他なかった。

 政宗と美乃里も聖の容態を心配し、毎日話題に上げるが、毎晩電話しているから大丈夫だという楓の嘘を信じ、とりあえずは安堵の表情を浮かべていた。

「電話だとめっちゃ元気なんだけどね」と笑う楓に、「早く会いたいね」と美乃里が慰めの言葉をかける。
「そうだね」
 楓は胸の内を知られないよう、ひたすら明るく振る舞うしかなかった。

 家に帰って一人になると、あの日の光景が頭の中に蘇ってくる。
 カーテンの引かれた薄暗い部屋。
 つい先程までそこにいたかのような、乱れたベッド。
 咄嗟に掴んだシーツの生温い感触。
 能面のように固まった聖の表情かお
 薄闇の中で禍々しい光を放つ琥珀色の瞳。
 なんの感情も持たず伸ばされた腕。
 肩を掴んだ冷たい手。
 むせかえるような、甘い香り……。

 楓は自室で膝を抱え、恐怖に身体を震わせていた。


 代返、代筆のできる授業は極力皆で協力していたが、それはほんの一時凌ぎでしかなく、いつまでもこのままという訳にはいかない。
 ましてや聖は、校内でも目立つ存在だ。このままバレずにやり過ごすには無理がある。
 なんとかしなければと思う楓だったが、聖のことを考えると恐怖心が先に立ち、なかなか行動を起こせずにいた。

 そんな状態が一週間続いた週末、楓はついに意を決し、聖にメッセージを送った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

猫嫌いの探偵が猫探しをすることになりまして

紫水晶羅
ライト文芸
ひいらぎ探偵事務所所長、柊凛太朗は、大の猫嫌い。 そんな凛太朗の元に、ある日猫探しの依頼が舞い込んだ。 依頼主の女性に一目で心を奪われてしまった凛太朗は、条件付きで依頼を引き受けることにするが……。 心温まる、ちょっぴり不思議な物語です。

かあさん、東京は怖いところです。

木村
ライト文芸
 桜川朱莉(さくらがわ あかり)は高校入学のために単身上京し、今まで一度も会ったことのないおじさん、五言時絶海(ごごんじ ぜっかい)の家に居候することになる。しかしそこで彼が五言時組の組長だったことや、桜川家は警察一族(影では桜川組と呼ばれるほどの武闘派揃い)と知る。 「知らないわよ、そんなの!」  東京を舞台に佐渡島出身の女子高生があれやこれやする青春コメディー。

【完結】お茶を飲みながら  -季節の風にのって-

志戸呂 玲萌音
ライト文芸
les quatre saisons  フランス語で 『四季』 と言う意味の紅茶専門のカフェを舞台としたお話です。 【プロローグ】 茉莉香がles quatre saisonsで働くきっかけと、 そこに集まる人々を描きます。 このお話は短いですが、彼女の人生に大きな影響を与えます。 【第一章】 茉莉香は、ある青年と出会います。 彼にはいろいろと秘密があるようですが、 様々な出来事が、二人を次第に結び付けていきます。 【第二章】 茉莉香は、将来について真剣に考えるようになります。 彼女は、悩みながらも、自分の道を模索し続けます。 果たして、どんな人生を選択するのか? お話は、第三章、四章と続きながら、茉莉香の成長を描きます。 主人公は、決してあきらめません。 悩みながらも自分の道を歩んで行き、日々を楽しむことを忘れません。 全編を通して、美味しい紅茶と甘いお菓子が登場し、 読者の方も、ほっと一息ついていただけると思います。 ぜひ、お立ち寄りください。 ※小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にても連載中です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

さつきの花が咲く夜に

橘 弥久莉
ライト文芸
国立大学の教務課で働く桜井満留は、病床 に臥す母親を抱えながらひとり、鬱々とした 日々を過ごしていた。余命幾ばくもない母の ため、大学と同一敷地内に隣接する国立病院 に泊まり込みで看病をしていた満留は、ある 夜、お化けが出ると噂のある中庭で一人の 少年と出会う。半年前に亡くなった祖母を 想いながらこの中庭によく足を運ぶのだと話 をしてくれた少年、満に、自分と同じ孤独を 垣間見た満留はひと時の癒しを求め中庭で会 うように。 一方、大学でタイムマシンの原理を研究し ているという風変わりな准教授、妹崎紫暢 ともある出来事をきっかけに距離が縮まり、 意識するようになって……。 誰とでも仲良くなれるけれど「会いたい」 「寂しい」と、自分から手を伸ばすことが 出来ない満留はいつもゆるい孤独の中を 生きてきた。けれど、母の手紙に背中を 押された満留は大切な人たちとの繋がり を失わぬよう、大きな一歩を踏み出す。 勇気を出して手を伸ばした満留が知る 真実とは?  母娘の絆と別れ。親子のすれ違いと再生。 異なる種類の孤独を胸に抱えながらもそれ を乗り越え、心を通わせてゆくヒューマン・ ラブストーリー。 ※エブリスタ新作セレクション選出作品。 2022.7.28 ※この物語は一部、実話を交えています。 主人公の母、芳子は四十九歳の若さで他界 した作者の祖母の名であり、職業こそ違う ものの祖母の人生を投影しています. ※この物語はフィクションです。 ※表紙の画像はミカスケ様のフリーイラスト からお借りしています。 ※作中の画像はフリー画像サイトpixabayから お借りしています。 ※作中に病気に関する描写がありますが、 あくまで作者の経験と主観によるものです。 ===== 参考文献・参考サイト ・Newtonライト3.0 相対性理論 ゼロからわかる相対性理論入門書 ・タイムマシン、空想じゃない 時空の謎に迫る研究者 https://www.asahi.com/articles/ ASNDS2VNWND2PISC011.html ・日本物理学会 https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/ files/71-09_70fushigi.pdf ・メンタル心理そらくも https://sorakumo.jp/report/archives/125

君と奏でるトロイメライ

あさの紅茶
ライト文芸
山名春花 ヤマナハルカ(25) × 桐谷静 キリタニセイ(25) ピアニストを目指していた高校時代 お互いの恋心を隠したまま別々の進路へ それは別れを意味するものだと思っていたのに 七年後の再会は全然キラキラしたものではなく何だかぎこちない…… だけどそれは一筋の光にも見えた 「あのときの続きを言わせて」 「うん?」 ********** このお話は他のサイトにも掲載しています

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

金色の庭を越えて。

碧野葉菜
青春
大物政治家の娘、才色兼備な岸本あゆら。その輝かしい青春時代は、有名外科医の息子、帝清志郎のショッキングな場面に遭遇したことで砕け散る。 人生の岐路に立たされたあゆらに味方をしたのは、極道の息子、野間口志鬼だった。 親友の無念を晴らすため捜査に乗り出す二人だが、清志郎の背景には恐るべき闇の壁があった——。 軽薄そうに見え一途で逞しい志鬼と、気が強いが品性溢れる優しいあゆら。二人は身分の差を越え強く惹かれ合うが… 親が与える子への影響、思春期の歪み。 汚れた大人に挑む、少年少女の青春サスペンスラブストーリー。

処理中です...