きんだーがーでん

紫水晶羅

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不協和音

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「おおーい! お待たせー!」
 カキ氷の容器が空になった頃、ようやく聖と楓が戻って来た。

「お帰り。どうだった?」
「めっちゃ楽しかったよ! 美乃里も来れば良かったのに」
 頬を紅潮させながら、楓が興奮気味に答えた。
「そっちは? 二人で何してたの?」
 聖が政宗と美乃里の手にあるカキ氷の容器に目を向け、カキ氷いいなぁ、と喉を鳴らした。
「俺ら、めっちゃいいことしたぞ。な、美乃里」
「うん。そうだね」
 政宗と美乃里が、満面の笑みを浮かべてお互い顔を見合わせた。

「いいことって何? エッチなことでもしてた?」
 聖が卑猥ひわいな笑みを浮かべた。
「てめ……っ! 何言って……!」
「もう! 聖の馬鹿!」
 政宗と美乃里は、同時に顔を赤らめた。
「エッチなことって……?」
 楓がポツリ呟く。
「楓まで何言ってんの? そんな訳ないでしょ!」
 首から上を上気させ、美乃里が叫んだ。

「迷子の相手してただけだよ」
 ムッとしながら、政宗が話を切り出す。
「迷子?」
「ああ、さっきそこで迷子に会って……」
 意外そうな表情を浮かべる聖と楓に、政宗が先程あった一部始終を話して聞かせた。

「へぇ。やるじゃん政宗」
「でしょ? 私もちょっと感動しちゃった」
 楓と美乃里が、顔を見合わせ笑った。
「なぁんだ。つまんねぇの。俺はてっきり二人でイチャコラしてたのかと思ったのに」
 残念そうに、聖が頭の後ろに両腕を組む。
「んな訳ねぇだろ!」
 無防備な聖の腹を、政宗が拳骨で叩いた。
「うっ。暴力反対!」
「てめぇが悪りぃんだろ!」
「はいはい。いいからご飯にしよ。お腹減っちゃった」
 二人の間に、楓が割り込む。
「そうだね。もうお昼だもんね」
 再びマップを取り出すと、「何食べよっか?」美乃里はマップ横の食事処の欄に視線を這わせた。

「あたし、イタリアンがいい」
「あ、俺もパスタ食いたい」
 楓と聖が口を揃える。
「ええ……? そんなお洒落な店なんて……あった」
「どれどれ?」
 美乃里が指差す店の番号を、政宗がマップの中で探す。
「こっちだな」
 頭を寄せ合い、政宗と美乃里は連れ立って歩き出した。

「なぁ。あの二人……」
 その後ろ姿を、聖が神妙な面持ちで眺める。
「なに?」
 きょとんとした顔で、楓が聖を横目で見た。
「なんか、いい雰囲気じゃね?」
「そ、そうかな?」
 楓が瞳を泳がせる。
「気になる? 楓」
 悪戯っぽく、聖が楓の顔を覗き込んだ。
「な、なんであたしがっ?」
「いや。別に……」
 ふっと笑うと、「早くしないと俺らも迷子になるよ」聖は足早に、二人の後を追いかけた。

「あ! ちょっと待って!」
 楓も慌ててその後を追った。


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