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第四章

凛太朗の心の奥(一)

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 翌日は雨だった。

 昨日はあれから駅の掲示板にチラシを貼ってもらうようお願いして、二人はそのまま解散した。
 本当はもう少し一緒にいたかった凛太朗だが、天気も心配だったので、諦めて大人しく帰路に着いたのだった。

 帰宅すると早速凛太朗の元に何件か連絡が来たが、来所を促すと皆「よく見たら違った」や、「懸賞金は?」など、どれも信憑性に欠ける情報ばかりだった。凛太朗にとっては想定内のことだった為、それ程驚きはしなかったが、やはり多少は落ち込んだ。

 今朝はそんな凛太朗の心を写したような天候だ。

 いつもの様に書類整理やら依頼内容の確認やらの業務をこなしていると、あっという間に一時になった。

 最近はこの時間が待ち遠しい。重く沈んだ空とは裏腹に、凛太朗の心は晴れやかだった。


 気持ちがそわそわし始めた頃、待ち人の到着を知らせるチャイムが鳴った。

 いつもの様に打ち合わせをし、いつもの様に二人で揃って出発する。

 いつもの様に柏原愛が籠を持ち、いつもの様に凛太朗がタモを持つ。

 この数日間ですっかり日課となってしまった行動に、凛太朗は思わず笑みを浮かべた。

「どうかしましたか?」
 隣で不思議そうな表情を浮かべる女性を一瞬見やった後、凛太朗は「いえ、何でもありません」と、エレベーターのボタンを押した。


 いつもと違うことと言ったら、この天候だ。

 昨夜から降り始めた雨は、一向に止む気配がない。

「生憎の天気ですね」
「そうですね」

 頷く彼女の傘の表面から幾つかの雨粒が流れ落ち、花柄のレインコートの裾を揺らした。

 桜公園のシンボルツリーは、人気のない公園をまるで見守っているかのように、大きな腕を広げながらどっしりと佇んでいる。

「実は僕、雨が苦手なんですよ」
「そうなんですか? でもまあ、あまり好きな人はいないかも知れませんね」

 次から次へと落ちてくる大きな粒が、二人の傘の上で楽しそうに弾んでは滑り落ちていく。

「ですよね。雨を見てると、なんだか切ない気持ちになります」

「切ない?」

 凛太朗は、無数に降り注いでくる冷たい雫をぼんやりと見つめた。

「よくわからないのですが……。なんとなく……です」

 視線を感じた凛太朗は、顔を少しだけそちらの方に向けると薄く笑った。
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