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揺れ動く心(3)

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 ふたりと仲良くなりお土産にパンを持たせ保護施設へと帰っていった。

 お茶を飲みながらふたりのことを話していたら、

「エメ、もう一つ頼みごとがある」

 と言われて乗り掛かった舟だ。ギーとルネに関する頼み事なら聞くつもりだ。

「ふたりは一週間以内に施設をでなければならない。当面の間、エメの家に住まわせてもらえないか?」

 保護施設は親のいない子、虐げられて傷ついた子、売買目的で買われ保護した子などがいて、成人の儀を終えると一人達をする。そして当面は雇い主が住まいを用意するそうだ。

「そうだったね。でも三人で住むには狭いかも」

 当面はギーとルネには一緒の部屋で我慢してもらおう。

「エメは俺の所へくるだろう?」

 あまりに当然のことのようにいうものだから一瞬ためらった。

「ライナー先生の所で一緒に」

 尻尾をぶんぶんと振り回して喜んでいたが、はたっとなる。

「まって、やっぱりそれは……」

 部屋を貸したら住まう場所がない。だから誘ってくれているのはわかっているがそれは非常にまずい。

 ライナーと住むのは嫌ではない。ただ離れようとしていたのに前よりも近づいてしまうからだ。

「俺と住むのは嫌か?」

 店で寝泊りをするからと断ろうとしたが、それよりも先に言われてしまった。 

「そんなことない」

 本当はすごく嬉しい。

「そうか。それなら寝床も一緒で構わないよな?」

 ぐいぐいと近づいてくるライナーから逃れることは、エメにはできるはずがない。

「ハイ、カマイマセン」
「嫌だと断られたらへこむところだった。いい返事をもらえてよかったぞ」

 そう素敵な笑顔とともにライナーが口にする。

 それにホワンとなりかけたが、距離をとろうとしていたのにさらに近づいてしまった。

 だが今更なかったことにはできない。ジェラールがいった通りとなった。

 しかも心は正直だ。離れられない理由がまたできて喜んでいるのだから。

「うん」

 手の届く所にライナーがいる。それがエメに欲を持たせる。離れる選択ではなく誰にも譲らない選択をしてもいいのだろうか。

 もし、そうだとしたら。

 尻尾が揺らぎだす。嬉しい、幸せという気持ちでいっぱいとなった。
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