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出逢い(2)

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 時間を忘れるくらい楽しい時間を過ごし、少し酔いを冷まそうと夜道を歩く。

「穂高君、もしよろしければ連絡先を交換しませんか?」
「はい、喜んで」

 渡部さんが、ポケットから紺色のガラケーを取り出す。

 俺もまだガラケーを愛用しており、一緒ですねと微笑みあう。 

 互いに連絡先を交換し合い、 

「じゃぁ俺も」

 互いに電話番号とメールを交換しあう。

「また一緒に飲みましょうね」

 連絡しますねと携帯を胸のあたりでふり、俺は待ってますねと頷いた。



※※※



 この頃、俺の携帯の着信履歴は渡部さんの名前ばかり並んでいる。

 互いに時間があると飲みに行こうと誘い、メールの返事に「了解しました」という文字を見るたびに気持ちが浮き浮きとする。

 渡部さんは楽しく飲める飲み仲間となりつつある。



 今日は大学時代の友人がバーデンダーをしているバーへと誘った。

「いらっしやいませ」

 華矢はなやは店では唯一の女性のバーデンダーで、シェーカーを振る姿はとてもかっこよく、彼女目当てに店へと訪れる客も多い。

「あら、なんだ。穂高じゃない。あれ、今日は筧とじゃないんだ」
「まあね。こちらは渡部さん。秀一郎の会社の上司さん」
「渡部です」
「華矢です」

 簡単に挨拶を済ませ、華矢は俺達にどうぞごゆっくりと言い別の客の元へと行ってしまった。

「華矢とは同じサークルの仲間だったのですよ」
「そうなんですか」
「彼女って美人でさばさばした性格をしていて、男女問わず人気者でした」

 今みたいにと華矢の方へと視線を向ければ、女子のグループにカクテルを作っている最中で。女の子たちがウットリしながら彼女を見ていた。

「ふふ、確かに。穂高君もあこがれていた一人、とか?」
「美人だし性格も良いとは思うけれど、友達って気持ちの方が強いですね」

 学生の頃、平凡な顔の俺が美人二人と仲良くしていたため、月並みが両手に華で良いなと嫌味ぽく言われ、そう嫉妬する奴には、羨ましいだろうという態度をとってやったものだ。

「穂高、何にするか決まった?」

 手が空いたのか再び俺達の前に来る華矢に、俺はどうするかと渡部さんを見る。

「そうですね。ではギムレットを」
「俺はいつもの通りで」

 カクテルにあまり詳しくない俺は、華矢にいつもお任せで作ってもらっている。

 今回はどんなカクテルを飲ませてくれるか楽しみだ。

 シェーカーを振る華矢の姿に、渡部さんがかっこいいですねと俺に囁きかける。

 何故だろうな、渡部さんにカッコいい姿を見せられる華矢が羨ましいなんて、そんな事を思ってしまった。

 いつもよりも酔いが回る。途中でいつも以上にハイペースで飲んでしまったせいもあるだろう。

 酔っていても意識はあるのに、酒の勢いもあってか、

「海に行きましょうよぉ」

 と口にしていた。

 酔っ払いの戯言と、そう軽く流してくれたらいいのに、少しも嫌な顔を見せることなく良いですよと俺をタクシーに乗せて海へと連れて行ってくれた。

 潮風と波の音が、とてもキモチガイイ。

 俺は、適当な場所を見つけていると腰を下ろすと、渡部さんがその隣に座った。

 なんて面倒見が良いのだろう。

 そういえば、渡部さんは、会社でも人気があるのだと、秀一郎に聞いたことがある。

「秀一郎が羨ましいです。俺も渡部さんの部下になりたいです」

 相手を思いやれる、そんな彼の下なら仕事もがんばれそうだ。

「おやおや。突然どうしたのですか?」
「秀一郎が言っていました。渡部さん、部下にも上司にもウケが良いと」
「そんなことないですよ。いつも皆に助けてもらっているのは、自分の方ですし」
「そう言える所も、渡部さんの素敵なところです」

 俺は気分がよくなって、砂が付くのもお構いなしに横になった。

「穂高君にそういってもらえて嬉しいです」

 と、手が頬へと触れ、その温かさに目を細める。

 星達は、闇夜をキラキラと照らし、とても綺麗だ。

 空を見れば、星達が闇夜を照らし輝いている。その隣には優しく微笑む渡部さんの顔があり、その顔がどんどん近寄ってくる。

 あぁ、渡部さんって爽やかで格好よい。俺は微笑んですっと目を閉じた。
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