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38.嫌な予感

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「あたしとね……夫婦になって、魔王国で暮らさない?」
 リリームからの告白に、俺は固まった。
 面と向かって告白されると何度あって緊張してしまうものだ。ユキの時もそうだった。
 でも、俺にはワイルド王国を守るという使命がある。リリームの告白はうれしいが利用すると決めている。
(そのために惚れ魔法を使ったんだが……)
 違和感を覚えていた。惚れ魔法を使い、メロメロになってリリームを手駒にしてワイルド王国を乗っ取るという算段だったが早速問題が起きている。
 
 惚れ魔法は相手が絶頂を迎えることによって効果を発揮する。

 まだ、リリームはイッてない。絶頂を迎えていないはずだ。あれだけ痛がっていたのが演技だとは思えないし、そうだとしても惚れ魔法の効果が発揮しているかと言えば微妙なところだった。
(この告白自体が演技っていう可能性も……いや、ないな)
「うぐっ、ひぐっ)
 抱き着きながら流れる涙と嗚咽に嘘偽りがないことを確信する。
 リリームは本気で俺のことが好きであり、手放したくないということが伺える。
 この告白に対する返事は決まっている。だが、本当にそれでいいのかと考えてしまう。

 彼女を傷つけることが俺の本心であり、そのためだったら手段を択ばないのか? 

 ああ、駄目だ。また考えてしまっている。俺はバカだ。バカなんだから考えても仕方ないだろう。
 リリームを傷つけるとか俺の本心とか……そんなものは最初から決まっているだろ。
 リリームのことが好きだし、俺の本心はワイルド王国を守ることだ。
 そのために何かを傷つける覚悟なんてない。全員が幸せになる。好きになる。
 惚れ魔法は……そのために使うものだ。
「リリーム……俺は魔王国では暮らせない」
「…………うん」
 目を合わせて、誠意を見せる。これが俺の本心である。
「ワイルド王国を守るために……俺はセレスを妻にするつもりだ」
「……そっか」
「俺はリリームも妻に迎え入れたい」
「……はっ?」
 最低最悪のクソ野郎でいい。それでもこれが俺の嘘偽りのない感情だった。
 どう反応するのか……俺は叩かれる覚悟でリリームを見つめた。

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