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35.記憶
しおりを挟む「ここは…一体。」
俺の中でも何かが壊れる音がした。
「お、おい、涙?……とりあえずそこから動くなよ?破片が散らばってるかもしれないから」
(なんだ……何かがおかしい。)
「ちょっと待ってろ、今何か破片集めるものを…」
「……誰?」
「…………ぇ」
「なんで僕の名前知ってるの?
なんで僕はこんな所に……」
痛い。
そう思った。破片が突き刺さったように
そこから何かが流れ出した。
そうだ。やっぱり、俺が悪かったんじゃないか。やっぱり、関わりなんか持たなければよかったんだ。
「…………大丈夫?えと、君の名前は?」
「……高橋…………水葵。」
「そっか!よろしく!水葵ってよんでもいい?」
この状況で明るく話せるこいつを心底尊敬する。
何も分からない……忘れているこんな状況で。
「……よろしく、あのさぁ」
と、話を続けようとした時。
この瞬間を待っていたかのように携帯が鳴った。
「あ、ちょっとごめん。
…………はい、高橋です。なんで、言わなかったんですか。」
やはり、宮川さんからの電話だった。
やたら、涙の体調を気にしていたのはやっぱりこれか。
「……その感じからすると…やはり。
すまない、これからこっちへ来れるか?」
「……はい。分かりました。失礼します。」
「涙。今、混乱しているとはおもうが、
一緒に来て欲しい所がある。
宮川さんて言えばわかるか?」
「…なんで、宮川さんを知って……。
あっ、えと、分かった!用意してくる。」
やっぱり。俺が…………俺だけが涙の記憶の中から消えている。
でも、今は落ち込んでる場合じゃない。
涙はフレンドリーな分あまり話していて違和感…というものはまだ無いが、俺は、涙が俺を忘れてしまったという現実を第三者から突きつけられたとき…この冷静を保っていられるだろうか。
「……こんにちは。宮川さん。」
「お久しぶりです。宮川さん。」
かつて『お久しぶりです』という言葉にこんなに心を痛めつけられた者がいただろうか。
「こんにちは。2人とも。
沖水くんお久しぶりの所悪いんだけれど
先に高橋くんと2人で話をさせてもらってもいいかな?」
「はい。大丈夫ですよ。」
涙は少し不思議そうな表情をしながらも、
この雰囲気を察して足早に出ていった。
「………………高橋くん。
まずはじめに謝らせて欲しい。
すまなかった。」
「…………。」
何が?何で?何に謝ってるんだ。
「高橋くん。君が飲んでいた、あの薬は。
沖水くんの、吸涙鬼の涙だったんだ。」
「……だから、なんだって言うんですか。」
命を助けてもらった人間にこんな言葉の使い方をしてはいけないと知っている。
でも、だけど、怒りを抑えるのに精一杯で
高校生の覚束無い言葉遣いはボロボロと壊れていく。
「高橋くん。吸涙鬼ってのはね、通常は涙を流してはいけないんだ。」
「……それはっ……どういう…」
「涙を流した分記憶がすり減るんだよ。
新しいことから順にね。」
「………………なんで、それを先に言わなかったんだよっ…あいつに忘れられてまでっ俺はい…………生きたくなかった。」
「…………それは、沖水くんも同じ気持ちだっただろうね。君は、自分の命よりも彼の気持ちを、彼は、自分の記憶よりも君の命を。」
リセットボタンを押されたゲームの様に
俺と涙がすごした時間だけが消えてなくなった。
……でも、結局。
リセットボタンを押したのは俺か。
俺の中でも何かが壊れる音がした。
「お、おい、涙?……とりあえずそこから動くなよ?破片が散らばってるかもしれないから」
(なんだ……何かがおかしい。)
「ちょっと待ってろ、今何か破片集めるものを…」
「……誰?」
「…………ぇ」
「なんで僕の名前知ってるの?
なんで僕はこんな所に……」
痛い。
そう思った。破片が突き刺さったように
そこから何かが流れ出した。
そうだ。やっぱり、俺が悪かったんじゃないか。やっぱり、関わりなんか持たなければよかったんだ。
「…………大丈夫?えと、君の名前は?」
「……高橋…………水葵。」
「そっか!よろしく!水葵ってよんでもいい?」
この状況で明るく話せるこいつを心底尊敬する。
何も分からない……忘れているこんな状況で。
「……よろしく、あのさぁ」
と、話を続けようとした時。
この瞬間を待っていたかのように携帯が鳴った。
「あ、ちょっとごめん。
…………はい、高橋です。なんで、言わなかったんですか。」
やはり、宮川さんからの電話だった。
やたら、涙の体調を気にしていたのはやっぱりこれか。
「……その感じからすると…やはり。
すまない、これからこっちへ来れるか?」
「……はい。分かりました。失礼します。」
「涙。今、混乱しているとはおもうが、
一緒に来て欲しい所がある。
宮川さんて言えばわかるか?」
「…なんで、宮川さんを知って……。
あっ、えと、分かった!用意してくる。」
やっぱり。俺が…………俺だけが涙の記憶の中から消えている。
でも、今は落ち込んでる場合じゃない。
涙はフレンドリーな分あまり話していて違和感…というものはまだ無いが、俺は、涙が俺を忘れてしまったという現実を第三者から突きつけられたとき…この冷静を保っていられるだろうか。
「……こんにちは。宮川さん。」
「お久しぶりです。宮川さん。」
かつて『お久しぶりです』という言葉にこんなに心を痛めつけられた者がいただろうか。
「こんにちは。2人とも。
沖水くんお久しぶりの所悪いんだけれど
先に高橋くんと2人で話をさせてもらってもいいかな?」
「はい。大丈夫ですよ。」
涙は少し不思議そうな表情をしながらも、
この雰囲気を察して足早に出ていった。
「………………高橋くん。
まずはじめに謝らせて欲しい。
すまなかった。」
「…………。」
何が?何で?何に謝ってるんだ。
「高橋くん。君が飲んでいた、あの薬は。
沖水くんの、吸涙鬼の涙だったんだ。」
「……だから、なんだって言うんですか。」
命を助けてもらった人間にこんな言葉の使い方をしてはいけないと知っている。
でも、だけど、怒りを抑えるのに精一杯で
高校生の覚束無い言葉遣いはボロボロと壊れていく。
「高橋くん。吸涙鬼ってのはね、通常は涙を流してはいけないんだ。」
「……それはっ……どういう…」
「涙を流した分記憶がすり減るんだよ。
新しいことから順にね。」
「………………なんで、それを先に言わなかったんだよっ…あいつに忘れられてまでっ俺はい…………生きたくなかった。」
「…………それは、沖水くんも同じ気持ちだっただろうね。君は、自分の命よりも彼の気持ちを、彼は、自分の記憶よりも君の命を。」
リセットボタンを押されたゲームの様に
俺と涙がすごした時間だけが消えてなくなった。
……でも、結局。
リセットボタンを押したのは俺か。
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