30 / 44
29.鱗
しおりを挟む
「んっ…………あれ?」
(もう朝か……。)
隣には昨日俺の事が心配だからと
俺が寝るまでついて居ると言った涙の姿があった。
あれだけ布団で寝ろと言ったのに
結局俺の隣で寝こけている。
体がだるいため、2度寝しようとまた
ゴソゴソと布団を被る。
「……ん?…………水葵?」
起こしてしまったようだ。
「…あ、起こしてごめんな、涙。」
「ん?いいやぁ…おはよ。水葵」
まだ目を瞑ったまま、眠そうな顔で
話す。
(器用なやつだな。)
「水葵……体は大丈……!?水葵……それ…」
「………………なんだ?」
俺には涙のいう『それ』が何だか全くわからななかった。
「………………ちょっと待ってて」
全くなんのことだか分からない俺は
涙を待つしかできなかった。
「……これ。」
渡されたのは鏡。
俺が覗き込むのと同時に
鏡の中の俺もこちらを覗く。
青紫色。
宮川に噛まれた首の傷から
広がるように浮き上がっている蛇の鱗のような痣。
自分で見てもぞっとする。
気色が悪い。
「な…なんだ……これ。
俺の……本当にっ……これは……」
また、震えが止まらない。
こんなあからさまに、宮川社長の言われたままの症状が出るだなんて。
「水葵っ…………大丈夫。大丈夫だから。」
今の涙にはそれしかかけられる言葉がないことなんで知っていた。
でも、結局一人だって思い知らされるんだ。
「…………に……が
何が大丈夫なんだよっ!…………っ」
「…………ごめん。大丈夫だから。
もう少しだけ、我慢してね。」
やはり、俺にはその意味がわからなかった。
意味がわからないことばかり言うのには
少しばかりムカついたが、
こいつのこんな泣きそうな表情を見てしまったら、俺はもう何も言えない。
「………………悪かった。」
「ううん……僕も、まだ何も出来なくてごめんね。」
その『まだ』の意味を
最悪の結果で知ることになるなんて
俺はまだ知る由もなかった。
(もう朝か……。)
隣には昨日俺の事が心配だからと
俺が寝るまでついて居ると言った涙の姿があった。
あれだけ布団で寝ろと言ったのに
結局俺の隣で寝こけている。
体がだるいため、2度寝しようとまた
ゴソゴソと布団を被る。
「……ん?…………水葵?」
起こしてしまったようだ。
「…あ、起こしてごめんな、涙。」
「ん?いいやぁ…おはよ。水葵」
まだ目を瞑ったまま、眠そうな顔で
話す。
(器用なやつだな。)
「水葵……体は大丈……!?水葵……それ…」
「………………なんだ?」
俺には涙のいう『それ』が何だか全くわからななかった。
「………………ちょっと待ってて」
全くなんのことだか分からない俺は
涙を待つしかできなかった。
「……これ。」
渡されたのは鏡。
俺が覗き込むのと同時に
鏡の中の俺もこちらを覗く。
青紫色。
宮川に噛まれた首の傷から
広がるように浮き上がっている蛇の鱗のような痣。
自分で見てもぞっとする。
気色が悪い。
「な…なんだ……これ。
俺の……本当にっ……これは……」
また、震えが止まらない。
こんなあからさまに、宮川社長の言われたままの症状が出るだなんて。
「水葵っ…………大丈夫。大丈夫だから。」
今の涙にはそれしかかけられる言葉がないことなんで知っていた。
でも、結局一人だって思い知らされるんだ。
「…………に……が
何が大丈夫なんだよっ!…………っ」
「…………ごめん。大丈夫だから。
もう少しだけ、我慢してね。」
やはり、俺にはその意味がわからなかった。
意味がわからないことばかり言うのには
少しばかりムカついたが、
こいつのこんな泣きそうな表情を見てしまったら、俺はもう何も言えない。
「………………悪かった。」
「ううん……僕も、まだ何も出来なくてごめんね。」
その『まだ』の意味を
最悪の結果で知ることになるなんて
俺はまだ知る由もなかった。
1
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
桜の奇跡 ~赤い糸の絆~
綾月百花
BL
石垣総合病院救命救急センターに務める原晃平(はらこうへい)は医師免許を持った看護師だった。失恋を機に、医師へと転身、病院も変わり、指導医は幼なじみに加納澄人 (消化器外科医)が受け持ってくれたが、原は救命救急センターに転属願いを出して、今ではドクターヘリに乗れるほど成長した。原は前の病院で後輩の看護師(男)を好きになり同棲まで考えていたが、すっぱりと断られてしまった。二度目の失恋だ。一度目の失恋は、指導医の加納澄人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる