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26.震える肩
しおりを挟む 翌朝。
空は曇っているが、雨は降りそうにない。
町の人たちに、白竜の情報を聞き込みにまわる。
「すみません。このあたりで白竜を見ませんでしたか?」
「白竜なら、たまに見るよ。上空を飛んでいて、とても大きくて綺麗な竜だよ!」
八百屋のおばさんが愛想良く答えてくれた。
「白竜の住む谷って、どこにあるか分かりますか?」
「竜の住処までは分からないねぇ…」
「そうですか…。ありがとう。この果物を4つ買います」
リンゴのような赤い実を指さした。
「これ、今が食べごろで美味しいんだよ~。1個おまけしてあげるね」
「ありがとう」
果物をアイテムボックスに入れて、道行く人にも手分けして聞いてみる。
数時間いろんな人に聞いてまわったので、広場のベンチで休憩することにした。
さっき八百屋で買った果物を皆に配る。おまけはモーリスにあげた。
乾いた喉に、瑞々しく甘い果物は最高だ。
「どうだった?」
僕が訊くと、モーリスが答えた。
「この町のほとんどの人が白竜を見ています。このあたりで数日待てば、白竜を見れる可能性は高い。しかし、白竜の住む谷について知ってる人はいませんでした」
「私たちも同じ意見です」シャルルがつぶやく。
「こんな曇り空では、もし白竜が上空で飛んでいても見つけられませんね」
モーリスが空を仰いだ。
「では、晴天の日に白竜が飛んでいたら尾行しようか。住処に辿りつくまで」
僕が提案すると、心配するシャルル。
「竜を尾行するなんて…怒らせて攻撃でもされたら危険ですわ!」
「では、透明人間になって空を飛ぶよ」
「サファーロ様! 俺も一緒に飛んで護衛します!」
「ありがとう、モーリス」
シャルルはまだ、心配そうだ。
「では、今日はこれで解散にしよう。昨日も大変だったし、たまには休みもしないと。
モーリス。エミリーさんとデートしてくるといい。夕方六時ごろには湖のほとりの家に帰ってくるんだよ」
「えっ。いいんですか? エミリー、行こう!」
「サファーロ様! お嬢様のこと、よろしくお願いしますね。行ってきます!」
ふたりは仲良く手をつないで歩いていった。
シャルルが頬を染めて、僕を見つめている。
昨夜、僕の背中に手を回して、抱きしめてきたシャルル。
僕は少し、自惚れてもいいだろうか…?
「もうすぐ白竜も見つかりそうだし、もし宝玉が見つかり、おばあさまに届けたら、その後シャルルはどうするのですか? 公爵家に戻って、新たな縁談を受けるのですか?」
そうだと言われたら、身を引くしかない…。
「いいえ…。私は公爵家には戻らず、修道院へ入るつもりです」
想像もしていなかった返事に、僕は驚く。
「…なぜです?」
「私は、サファーロが好き…。貴方が爵位の差を気にして私から離れていくのなら、貴方以外の人に嫁ぐくらいなら、修道女になったほうがましです!」
シャルルの瞳から、真珠のような涙が零れる。
彼女がそれほど僕を想ってくれていたなんて…!
僕の胸は、感動で熱く燃えた。
「修道院へ行くくらいなら、僕と駆け落ちしてください! いつか陞爵してもらえるような手柄をあげて、貴女と夫婦になれるように頑張りますから。それまで、僕の傍で婚約者として待っていただけませんか?
公爵家ほどの暮らしではなくても、不自由はさせません! 狐の和み亭のサイコロステーキだって食べ飽きるほどごちそうします。あなたの望むことは何でも叶えるように努力しますから!」
「本当ですか?! 俺たちも是非、ご相伴に預かりたいです!!」
デートに行ったはずのモーリスとエミリーが、僕らの座っていたベンチの後ろから現れた!
「また覗いていたのか!」
早速、モーリスはシャルルに説得を始めた。
「サファーロ様は心の優しい良い人です。駆け落ちしたって、きっとシャルル様を幸せにしてくれます!
それに! 今、OKすれば、皆で狐の和み亭のサイコロステーキが食べ放題なんですよ!!」
いつの間に、そんな話になってるんだ!!
「私、サファーロと駆け落ちします!」
「えぇっ!?」
サイコロステーキ効果?!
「「やったぁ~~~♪」」
踊りだすモーリス&エミリー。そんなに食べたかったのか!
「サファーロ様、おめでとうございます! では邪魔者は退散しますので、あとは若い二人でごゆっくり♪」
仲人のような口ぶりで、モーリスとエミリーは仲良くどこかへ消えた。
「私、サイコロステーキに釣られたわけじゃありません。サファーロがこれからも私の傍にいてくれることが嬉しくて…」
「泣かないで…」
シャルルの涙をハンカチでそっと拭う。
「これから、もっとシャルルを幸せに出来るように頑張るよ」
やさしく抱き寄せると、安心したように体を預けてくるシャルル。
「あなたが傍に居てくれたら、それだけで充分幸せです…」
「シャルル…」
今夜、僕はもふもふの銀猫になって、きみに存分にもふられるかもしれない。
空は曇っているが、雨は降りそうにない。
町の人たちに、白竜の情報を聞き込みにまわる。
「すみません。このあたりで白竜を見ませんでしたか?」
「白竜なら、たまに見るよ。上空を飛んでいて、とても大きくて綺麗な竜だよ!」
八百屋のおばさんが愛想良く答えてくれた。
「白竜の住む谷って、どこにあるか分かりますか?」
「竜の住処までは分からないねぇ…」
「そうですか…。ありがとう。この果物を4つ買います」
リンゴのような赤い実を指さした。
「これ、今が食べごろで美味しいんだよ~。1個おまけしてあげるね」
「ありがとう」
果物をアイテムボックスに入れて、道行く人にも手分けして聞いてみる。
数時間いろんな人に聞いてまわったので、広場のベンチで休憩することにした。
さっき八百屋で買った果物を皆に配る。おまけはモーリスにあげた。
乾いた喉に、瑞々しく甘い果物は最高だ。
「どうだった?」
僕が訊くと、モーリスが答えた。
「この町のほとんどの人が白竜を見ています。このあたりで数日待てば、白竜を見れる可能性は高い。しかし、白竜の住む谷について知ってる人はいませんでした」
「私たちも同じ意見です」シャルルがつぶやく。
「こんな曇り空では、もし白竜が上空で飛んでいても見つけられませんね」
モーリスが空を仰いだ。
「では、晴天の日に白竜が飛んでいたら尾行しようか。住処に辿りつくまで」
僕が提案すると、心配するシャルル。
「竜を尾行するなんて…怒らせて攻撃でもされたら危険ですわ!」
「では、透明人間になって空を飛ぶよ」
「サファーロ様! 俺も一緒に飛んで護衛します!」
「ありがとう、モーリス」
シャルルはまだ、心配そうだ。
「では、今日はこれで解散にしよう。昨日も大変だったし、たまには休みもしないと。
モーリス。エミリーさんとデートしてくるといい。夕方六時ごろには湖のほとりの家に帰ってくるんだよ」
「えっ。いいんですか? エミリー、行こう!」
「サファーロ様! お嬢様のこと、よろしくお願いしますね。行ってきます!」
ふたりは仲良く手をつないで歩いていった。
シャルルが頬を染めて、僕を見つめている。
昨夜、僕の背中に手を回して、抱きしめてきたシャルル。
僕は少し、自惚れてもいいだろうか…?
「もうすぐ白竜も見つかりそうだし、もし宝玉が見つかり、おばあさまに届けたら、その後シャルルはどうするのですか? 公爵家に戻って、新たな縁談を受けるのですか?」
そうだと言われたら、身を引くしかない…。
「いいえ…。私は公爵家には戻らず、修道院へ入るつもりです」
想像もしていなかった返事に、僕は驚く。
「…なぜです?」
「私は、サファーロが好き…。貴方が爵位の差を気にして私から離れていくのなら、貴方以外の人に嫁ぐくらいなら、修道女になったほうがましです!」
シャルルの瞳から、真珠のような涙が零れる。
彼女がそれほど僕を想ってくれていたなんて…!
僕の胸は、感動で熱く燃えた。
「修道院へ行くくらいなら、僕と駆け落ちしてください! いつか陞爵してもらえるような手柄をあげて、貴女と夫婦になれるように頑張りますから。それまで、僕の傍で婚約者として待っていただけませんか?
公爵家ほどの暮らしではなくても、不自由はさせません! 狐の和み亭のサイコロステーキだって食べ飽きるほどごちそうします。あなたの望むことは何でも叶えるように努力しますから!」
「本当ですか?! 俺たちも是非、ご相伴に預かりたいです!!」
デートに行ったはずのモーリスとエミリーが、僕らの座っていたベンチの後ろから現れた!
「また覗いていたのか!」
早速、モーリスはシャルルに説得を始めた。
「サファーロ様は心の優しい良い人です。駆け落ちしたって、きっとシャルル様を幸せにしてくれます!
それに! 今、OKすれば、皆で狐の和み亭のサイコロステーキが食べ放題なんですよ!!」
いつの間に、そんな話になってるんだ!!
「私、サファーロと駆け落ちします!」
「えぇっ!?」
サイコロステーキ効果?!
「「やったぁ~~~♪」」
踊りだすモーリス&エミリー。そんなに食べたかったのか!
「サファーロ様、おめでとうございます! では邪魔者は退散しますので、あとは若い二人でごゆっくり♪」
仲人のような口ぶりで、モーリスとエミリーは仲良くどこかへ消えた。
「私、サイコロステーキに釣られたわけじゃありません。サファーロがこれからも私の傍にいてくれることが嬉しくて…」
「泣かないで…」
シャルルの涙をハンカチでそっと拭う。
「これから、もっとシャルルを幸せに出来るように頑張るよ」
やさしく抱き寄せると、安心したように体を預けてくるシャルル。
「あなたが傍に居てくれたら、それだけで充分幸せです…」
「シャルル…」
今夜、僕はもふもふの銀猫になって、きみに存分にもふられるかもしれない。
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