上 下
17 / 44

16.わがまま

しおりを挟む
「涙、お前やっぱり、この部屋でてくのか?」

「ん?なぁに?やっぱり寂しいの?」

涙は少し嬉しそうに微笑む。

「……いや……そういう訳じゃなく……」

沖水宗介は俺から涙を突き放そうとしていた。その事について涙に話さなくてはならないのだが…。

(あいつのこと、すごい信用しているようだったし……。)

「……………………宗介のこと?」

「えっ!いやぁ…そうじゃないこともないんだけど……。」

「ほぉ…そういう事って意味ね。」

「ん~…」

「で、どういう自体になってるの?」

俺は沖水とあった出来事を全て話した。

「え~!宗介と水葵が僕を取り合ってるのぉ?大変だぁ~!」

(大変とか言っときながら嬉しそうに見えるのは俺の気のせいか?)

「俺は別に取ろうとも思ってない。」

「え~…じゃあ、僕、宗介と付き合っちゃおうかなぁ~」

何かを企むような目。

「俺には関係ないけど、好きじゃない奴と付き合うのは印象がいいとは言えないな」

「関係ない…か…僕はね、
前も言ったけど、僕が水葵のこと好きだってこと忘れないで欲しいんだ。」

「好…き。って言うのは、知ってる。」

「じゃあさ、僕のこと……どう思ってるの?」

「そ…………れは…。」


ピンポーン。

沈黙した俺への助け舟かのように
静かな部屋にチャイムが響く。

「……僕…出てくるよ。」

「涙!忘れ物取りに行くだけで何時間かかってんだよ…心配したぞ…」

「あぁ……ごめん、ごめん。」

「ったくぅ…………しょうがないな」

「ね、宗介。全部聞いたよ。水葵から。」

「………………。そう。」

「でね、宗介。僕考えたんだ。
宗介を好きかなんて僕にはまだわからないけど。一緒に過ごしてみる価値はあるんじゃないかって。」


(!?……。)


ドアの向こうで宗介がほくそ笑む。

「そうだなっ!じゃあ、早く部屋に戻っ」

「いや……それはね…僕この部屋がいいんだ。でも、学校ではどんなに話しかけてくれてもいいよ。」

涙は俺の前から居なくなろうとはしなかった。だけど、距離を置こうとしているような…あまりいい感じはしない。

「そうか、涙がそう言うならそうしよう」

「うん。じゃあ、また明日。」

「おう、おやすみっ。」



「涙…さっきのだけど…」

「ん?あぁ…それは…答えくてもいいよ」

「え………………あぁ……そうか。」

突き放された気がした。
1度優しさを感じすぎてしまった俺の心はもうグラグラだけれど、
俺は、自分を騙すのには特別長けていた。

「あ、そだ。明日から宗介と帰るから。」

「……わかった。」

(なんで…俺って素直じゃないんだろ。)

素直になったとしても、
俺は、涙を大切な人だと認識しているだけで、涙の気持ちには答えることが出来ない。でも…『居なくならない』とあいつはそう言ってくれた。
そんな俺のわがままに、いつまで付き合わせていいのだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...