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11.林間学校④<肝試し>
しおりを挟む「くっそ…真っ暗でなんにも見えねぇ…」
この肝試しは、林を抜けて、先の方にある
墓地の近くに花を添えて戻ってくるだけの
極めてスタンダードな肝試しだ。
順路標識を見ながら正確に進んでゆく……
はずだった。
(あれ?ここ…どこだ?え?迷った?!)
『1人に当たった人は帰って来れなくなる』
そんな言葉があたまをよぎる。
そんな時。
ガサガサの草をかき分ける音がする。
「っ………………誰だっ。」
(……もっ、もしかしてっ幽霊っ)
「あっれぇ~水葵?ここ順路じゃないよねぇ?」
「涙!? なんで、こんな所にいるんだ?」
「それはこっちのセリフだよ~
あっ、もしかして…僕のこと幽霊だと思ったでしょ?」
「そっ…俺はただ…熊にでも会ったかとおもって焦っただけだ。」
「ほ~僕が来て安心したんじゃなぁい?」
「そっ、それは、熊じゃなかっただけましかもな。」
「もぉ~素直じゃないんだから。」
そう言って涙は俺の手を握ってくる。
「ちょっ、何やって。」
「この方が安心、でしょ?」
その手は、俺よりも少し大きくて
ひんやりしていたが、
何故か俺には暖かくも感じられた。
「わっ、水葵の手あったかい。」
「お前の手は冷たくて気持ちいいな。」
「っ……ありがとう。」
こいつは、いつも変態じみたこと
ばかりしてくるくせにこういう時は何故か照れる。
(ピュアなんだか、変態なんだか…。)
「ていうか、お前も迷ったのか?」
「ん?そうだよ?」
「まじかよ…使えねぇな。」
「ひど~い!」
「んで、お前も標識道理にきたよな?」
「うん。多分標識が間違ってたのかなぁ」
「じゃぁ…なんで俺達だけ…。」
「確かに……仕組まれた?
これって愛の罠?」
「うっせー黙っとけ。
というか、お前ペアはどうしたんだよ。」
「あ、あぁ、なんか驚かしたらどっかいっちゃった…あは?」
(こいつとペアにならなくてよかった…。)
「もしかして、はめられたのか?」
「でもとりあえず来た道戻るしかないね」
「そうか、その手が…って」
「どっから来たっけ………。」
ガサガサ。
「ひぃっ………なっ…なに?」
(今度は本当に熊か?!)
「水葵下がって……。」
俺は言われた通り3歩後ろに下がる。
「………人だ。」
「だっ、誰だよ。」
黒い影がゆっくりと近づいてくる。
「ん?あれ!涙じゃん!…と…誰?」
(お前こそ誰だよっ?!)
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