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7.林間学校①

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「くっ……はぁ、はぁ、はぁ。」

(なんでこんなっ…山登りなんかっ)

「水葵大丈夫?ほら、お水あるよ?」

「はぁ…いらっ、ない。」

「え~!倒れちゃうよ、ほらっ
飲まないと無理矢理飲ませるよ?」

「っ…わかったよ、飲みゃあいいんだろ」

喉を冷たい水が通り、心地いい。

「……ぷはぁっ……おいしい。」

「でしょっ!」

こんな暑い中でも汗を一滴もかかず
長袖のジャージを着ているこいつを羨ましいと思う。

「お前さぁ、なんでいつも長袖なの?」

「え~?あぁ、吸涙鬼ってさ、食事をしないと体温が低下し続けちゃうんだよ。
だから、こうやって保温してるんだっ」

「へぇ~…」

「なかなか大変でしょっ、んふ」

「なんで嬉しそうなんだよ…。」

「え~だって、水葵が僕に興味持ってくれるなんて…ね?」

(ね?って言われても…。)


「………………あっ、え、水葵。」

涙がとても焦った顔をしている。

「なんだよ?」

「せ、背中にっ………蜘蛛がっ」

「ひぃっ?!…ちょっあ、まじっ
涙とってくれ!!!」


「うぇっ、え、やだよぉ」

「ふぁっ、ひっ……背中に入ってき…」


「水葵!!!!危ないっ!」

「え」

俺は足を滑らせ、バランスを崩す。
涙は咄嗟に俺の手を取るが、
体重を支えきれず、登山コースから
二人とも落下してしまう。


「いってっ…………っつ。」

「水葵っ、大丈夫?」

「お、お前はっ」

「平気。」

嘘だ。涙の顔は平気だなんて言えるような表情じゃなかった。

「………お前っもしかしてっ足…。」

「…………今はどうやって助けを呼ぶかが先だ。」

(なんであの時…手を離さなかったんだよ。絶対に無理だって分かってたはずなのに)

「山の夜は夏でも冷えるし、
今日はこれから雨が降るって言ってた。
こんな所じゃ風邪ひいちゃう。」

「そうだな。」

俺たちは少し歩いた所に小さな建物を見つけた。

「ここでいいでしょ。」

「いや、でも勝手に。」

「今は緊急事態だからね事情を話せば大丈夫。」

「そう…だな。」

「ちょっと僕は外に出てくるよ。」

「いや、だってお前!足怪我してるんじゃ」

「大丈夫。僕、吸涙鬼だし。」

(吸涙鬼だからって、なんだっていうんだ。)

俺のせいでこんなことになったのに…
こいつばっかり。

「出てきたら…舐めちゃうかもよっ?」

「お前っ?!こんな時まで何言って…」

「ほらっ、だから、いい子で待ってて」

「………わかった。」

(こいつには毎回負けた気にさせられる。)
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