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1. 秘密

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「高橋君っ、おやすみなさぁ~い」

(おやすみなんて、いってやるものかっ)


明日寮長さんに頼んでこいつを違う部屋にしてもらおう。

「ねぇ、おやすみってば」

(うるさそうだし…言うしかないか)

「…………おやすみ。」

「うんっ!おやすみっ」





『ご両親があんな事故に巻き込まれちゃって、気の毒ね』

『そうね、でも聞いてよっ。
あの子お葬式じゃ表情ぴくりとも変えなかったっていうじゃない』

『そう、それ、聞いたわ。
むしろ、笑ってたらしいじゃないの』

『あの子、やっぱりおかしいわね』



『なんであの時っ、車で迎えなんて頼んだのよっ!あれさえ…なければ私達。
幸せだったのに。』

『お前なんか…いなきゃよかった。』





「っっ……………はぁっ、はぁ、はぁ、」

(またっ…この夢。)

母さんと父さんが…事故で亡くなった時の夢。

あの日から、1度も涙がでなくなった。

あの日から、1度も人を信じなくなった。

あの日から、ずっと自分が許せない。


「んっ……高橋くん?」

(やべっ…起こしちゃったか。)

「えぇ、どうしたの!?
すっごく顔色悪いよ??」

「あ、いや…
ちょっと悪い夢をみたっ…だけだからっ」

(あれ?っっ…ちょっと待ってなんで…
こんなことあの日からなかったのに…)

「高…橋くん?なんで…」

「なんでって…」

「なんで泣いてるの?」

「っっっ?!」

(嘘だ…。こんな事しかも人前でなんて…)

滲む視界が、熱い目頭が、濡れる頬が。
こいつの言葉よりも、今自分が涙を流していることを教えてくれた。

「高橋くん…大丈」

「ぅっ…ちょっと今…見ないで。」

「でっ、でも」

「うるさいっ…あっちいってろ」

何も悲しいことなんてないのに。
何も辛いことなんてないのに。
俺は、泣く資格なんてないのに。

「ごめんっ、ほんっとごめん!」

「っ…何をお前があやまってるんだ。」

「実はねっ…」

ぺろり。

俺の頬を何かザラザラとしたものが這った。

「ふぇっ…なにっ」

なんとも情けない声がでた。

でも今はそんなことよりも…
こいつが起こした行動が頭の中で整理できていない。

「んっ…おいしっ」

「へ?」

涙は驚きにせき止められた。

「僕、吸涙鬼なんだっ」
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