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21.俺の名前は

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なおが帰る凄く静かで、初めはなんとも思っていなかった沈黙が苦痛に感じる。

思えば最近、悩んでばかりだ。

あと…泣いてばっかり…

こんなんじゃ、武尊からしたら本当にガキ
じゃんかっ……


ベットに横たわり、考えても仕方ないことを
考えている。

無駄な時間なのは分かってるけど、これが今の俺唯一の沈黙を気にしないための策なのだ。


まぁ…気になってるけど…



そう言えば、今俺の家族はどうしているだろうか。

16歳男児というものは以外にもいや、
世間で思われているよりもデリケートなものだ。

例を上げれば反抗期。

俺の場合とくに、反抗していた訳じゃないが、それなりに無愛想ではあったと思う。

てか、今もだけど。

俺が死んだ(?)事で姉貴も自分を責めてなければいいけど。


この時の俺には、反抗期とはいえども、
本当にガキなので家族にもう一生会えないかもしれないというこの状況を今やっと受け入れ、その寂しさが一気に襲いかかっていた。


そっか…………


もう、会えないのか。




こーゆ時にだけ、都合よくいい思い出しか思い出さないもんだよなっ…本当。


勘弁してくれよ……。




涙腺がゆるゆるな時に限ってさ。




バレないようにうつ伏せになり、
枕に顔を埋める。




枕の布が熱くなって肌に張り付いてくる。



それでも、顔なんか上げられない。





「………………………ふがっ…」





枕に顔を埋める俺の頭を武尊が撫でる。




「……………………。」





何も言わない。





大人の対応って…すごいよな。







「俺の………………せいか?」




?!?!



ちっげぇぇえよ!!!!



こんな時まで、自分のことだって自惚れやがって…



こいつの年齢知ったからか大人だと思ったけど、やっぱ本質は変わらねぇよなっ…





「………………ぅ…ぁ…ぅ」




「……あぁ?」





ひぃっっ…?!




おいおい、泣いてる人間によくそんなっ!





仕方ない…




枕から少し顔を浮かして話す。





「違う。」






「……………………じゃあ、そろそろ寂しくなったか?」







図星を突かれて、自分でも分かるくらい

ビクッ…と、肩が反応してしまった。



こっ、こんなの、頷いたのと買わんねぇじゃねぇかよっ…俺のばかっ。






…………なんで分かるんだよばかっ。






「お前はさ、俺達本当に死んだと思うか?」






?!









前に俺も同じことを考えた事がある。




「…………わかんない、けど。
もしかしたら、とは思った。」




「……お前も…か、そうだな。
もしこの世界が、この物語が終わったら
俺達はどうなるんだろうな。」



そう。


シナリオ通りに進めないと崩壊してしまうようなこの世界が、シナリオが無くても進行されていく可能性は極めて低いと思う。



ハッピーエンドのあとは



「…………この世界の崩壊か、元の世界に戻されるかの2択だな。
いや、正しく言えばこの世界が壊れて俺達の存在ごと無くなるか、この世界が崩壊して
俺達は元の世界に戻されるか…だな。」




「……どっちにしろ、崩壊…するんだよな」



そう、どっちにしても俺のこいつへの想いは実ることはないのだ。


まぁ、告白なんてする前から振られていたけど。




「まぁ、つまり、このシナリオが終って
お前が家族に会える確率は50%って訳だ。
………もう一度会える可能性があるってだけいいだろ。」



それは………




「………ってか………頭撫でんな。」






「………………お?泣き止んだか?」




声が明らかに俺を煽っていてムカつくっ!!




「……はじめから泣いてねぇし。」





「あっそ」





武尊がガサゴソと音をたてながら
俺の布団に入ってくる。




「おぉいっ……武尊…1人分のベッド狭いんだからっ自分のとこいけよっ………」




「んー?やだ。はぁ…まこ…あったけぇ…」




「………………あの…さぁ、」




「ん?」





「……俺の名前………本当のやつ呼んで?」




「…………ふっ……やっぱ寂かったんだろっ」


違うよ。

それもあるけど、武尊に呼んでもらいたいんだよ。

これくらい……いいよね。









「…俺の名前は──────────」


















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