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12.ファーストキス

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「……まこ!…………大丈夫?」

なおが息を切らせて走ってくる。
とても必死そうにしていたから、
また『平気』なとどと答えようとしてしまったとき、それに気付いたようにゆうがこちらをみる。

………………どっちにしろ言いにくいっ。

どうしようもない気持ちになり、
目を瞑ってしまう。


「…………見た目でわかんだろ。」


…………。

一見冷たい言い方だとは思うが、俺にはきちんと、俺を庇ってくれたのだとわかった。

よく漫画にいる不器用なタイプの良い奴だ。


「……………なお、さっきの人はゆうがボコボコにしたから大丈夫っ!
あと、俺は……今はもう平気だよ。」


「そう……よかった。」

なおが、ほっとしたように微笑む。


それに対して、ゆうは顔を顰めた。

「お前っ……だからさっきっ」


「わかってるよっ、でも、もう本当に今は平気なんだよっ…ゆうが助けに来てくれたしなっ!」


「………………そうかよ。」


少し照れたようなゆうの顔が演技ではないんだと思うと、何故かすこし嬉しく思えた。






⿴   ⿻   ⿸   ⿴  ⿻  ⿸   





今日は色んな事件がありすぎて、
………………死ぬかと思ったぁっ

疲れているはずなのに、何度もあの恐ろしい光景が目に浮かんで、なかなか眠れない。


消灯時間はとっくに過ぎている。
ゆうも寝たのかなと思い、謎の孤独感を感じる。


…………俺ってこんな精神弱かったっけ…。


すると、寝たと思っていたゆうがいきなり話しだす。



「…………まこ…あいつにさ、どこまで……
されたの。」



?!?!?!



「……おっ、お前…………何聞くんだよ……
まったく…………デリカシーの欠片もない…」




暗い中、俺の前で人影が動く。


「…………ゆ…う?……んっ?!」


ゆうの唇が何故か俺の唇と重なり合い、
そして、ゆっくりと俺の口から離れた。


「……………………なにっ……してっ」


ゆうの唇の感触が熱く俺の唇に残り、
その熱は全体にぼわぼわとひろがってゆく。



「……………こういうことも……されたの?」




「さっ…………されてねぇよっ…。ていうか、

今のが………………………………はじめて。」





はぁっと息を吸った音が小さく聞こえる。



「………………そうか。」



吐き出した息と同時に出る安心したような声。


「………まこと…おやすみ。」


「……うん。…おやすみ」


もしかしたら、他のところは触られたかもしれない。
そう思ってもこれ以上触れてこなかったのは
気遣いなんだろうとおもった。


デリカシーあんのかないのかっ……はぁ。







って!キッ、キキ、キスッ?!









シーンで大切なファーストキスを失ってしまったのだと思うと、喉の奥になにかつっかえているような感覚になった。



























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