66 / 90
第八章 真実は何処に
何もない部屋
しおりを挟む
「あ、良かったら椅子に座って」
そう言って、案内されたアキの家は、最低限の家具しかない、殺風景な家であった。
床の上に、取っ手の付いた絵の具の木箱やパレット、そしてガラスの水入れが無造作に置かれ、床には書き散らかした絵が散乱している。
ミリアは、そんなアキの部屋を唖然と見遣ると、背もたれの付いた椅子に腰かけこう言った。
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言ってからも、ずっと部屋を呆然と眺めるミリアに。
アキは困ったように後頭部をかくと、苦笑気味にこう言った。
「びっくりしたでしょ? 見事なほど何もなくて」
そう言って、恥ずかしそうに笑うアキに。
ミリアは真面目な顔をしてこう尋ねる。
「アキさん……ちゃんと食べてるんですか?」
問い詰める様にそう言うミリアに。
アキは、少し後ろに仰け反り気味にこう言った。
「うん? そこらへんは大丈夫。そのぐらいはちゃんと稼げてるから!」
そう言って、必死に弁明するアキに。
ミリアはジト目を向けるとそれでも、大袋の中から木製の入れ物を取り出してこう言った。
「これ……良かったら」
そう言って、ミリアが取り出した入れ物を受け取ると。
アキは、徐にそのふたを開けて嬉しそうにこう言った。
「……お、ポテトフライだ! 俺の好物なんだよねー。それにしても、随分と、面白い形のポテトフライだね。それに、食べ応えがありそうだ。ありがとね、ミリアちゃん」
そう言って、すかさずひとつつまんで口に放り込むアキに。
ミリアは言い出し難そうに俯くとこう言った。
「あの……」
「うん?」
「さっきの話、聞いてました、よね?」
「うん」
「その……大丈夫ですか」
そのミリアの問いに。
アキは眉を顰めると、若干、苦笑気味にこう言った。
「うーん。やっぱ、ちょっとキツいかな。自分が何言われようが構わないけど、兄が悪く言われるのは、ね……」
そう言って、ため息をひとつ吐くアキに。
ミリアも大きく頷くとこう言った。
「そうですよね。私だって、家族がそんな風に言われたら辛いですから」
そう言って、しゅんと下を向くミリアを前に。
アキは申し訳なさそうに眉を顰めってこう言った。
「ほんと。ごめんね、ミリアちゃん」
「いえ……」
そう言って、言葉を詰まらせるミリアを前に。
アキは、少し考える様に顎に手を当てると、徐に視線を落としてこう言った。
「俺さ……今、王太子殿下に接触しようと試みているんだけど。なかなか出会えなくてさ」
「王太子殿下に、ですか」
「うん。ミリアちゃんが言っていたように、もし、兄さんの相棒が本当に殿下なら、殿下は何か知っているんじゃないかって思って」
そう言うと、アキは、手に持っていたポテトフライの入れ物をテーブルの上に置くと、自分自身に言い聞かせるようにこう言った。
「どんな真実でもいい。俺は、兄の真実が知りたいんだ。そうしたら、俺は……」
そう言って、自分の片掌をじっと見つめるアキ。
そんな思いつめるアキを傍らでじっと見つめながら。
ミリアは心の中でアキに尋ねてこう言った。
(アキさんは、それを知って……一体、どうするつもりなんですか)
その答えを聞くのがあまりにも怖くて、ミリアは無意識的に口を固く閉じるのであった。
そう言って、案内されたアキの家は、最低限の家具しかない、殺風景な家であった。
床の上に、取っ手の付いた絵の具の木箱やパレット、そしてガラスの水入れが無造作に置かれ、床には書き散らかした絵が散乱している。
ミリアは、そんなアキの部屋を唖然と見遣ると、背もたれの付いた椅子に腰かけこう言った。
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言ってからも、ずっと部屋を呆然と眺めるミリアに。
アキは困ったように後頭部をかくと、苦笑気味にこう言った。
「びっくりしたでしょ? 見事なほど何もなくて」
そう言って、恥ずかしそうに笑うアキに。
ミリアは真面目な顔をしてこう尋ねる。
「アキさん……ちゃんと食べてるんですか?」
問い詰める様にそう言うミリアに。
アキは、少し後ろに仰け反り気味にこう言った。
「うん? そこらへんは大丈夫。そのぐらいはちゃんと稼げてるから!」
そう言って、必死に弁明するアキに。
ミリアはジト目を向けるとそれでも、大袋の中から木製の入れ物を取り出してこう言った。
「これ……良かったら」
そう言って、ミリアが取り出した入れ物を受け取ると。
アキは、徐にそのふたを開けて嬉しそうにこう言った。
「……お、ポテトフライだ! 俺の好物なんだよねー。それにしても、随分と、面白い形のポテトフライだね。それに、食べ応えがありそうだ。ありがとね、ミリアちゃん」
そう言って、すかさずひとつつまんで口に放り込むアキに。
ミリアは言い出し難そうに俯くとこう言った。
「あの……」
「うん?」
「さっきの話、聞いてました、よね?」
「うん」
「その……大丈夫ですか」
そのミリアの問いに。
アキは眉を顰めると、若干、苦笑気味にこう言った。
「うーん。やっぱ、ちょっとキツいかな。自分が何言われようが構わないけど、兄が悪く言われるのは、ね……」
そう言って、ため息をひとつ吐くアキに。
ミリアも大きく頷くとこう言った。
「そうですよね。私だって、家族がそんな風に言われたら辛いですから」
そう言って、しゅんと下を向くミリアを前に。
アキは申し訳なさそうに眉を顰めってこう言った。
「ほんと。ごめんね、ミリアちゃん」
「いえ……」
そう言って、言葉を詰まらせるミリアを前に。
アキは、少し考える様に顎に手を当てると、徐に視線を落としてこう言った。
「俺さ……今、王太子殿下に接触しようと試みているんだけど。なかなか出会えなくてさ」
「王太子殿下に、ですか」
「うん。ミリアちゃんが言っていたように、もし、兄さんの相棒が本当に殿下なら、殿下は何か知っているんじゃないかって思って」
そう言うと、アキは、手に持っていたポテトフライの入れ物をテーブルの上に置くと、自分自身に言い聞かせるようにこう言った。
「どんな真実でもいい。俺は、兄の真実が知りたいんだ。そうしたら、俺は……」
そう言って、自分の片掌をじっと見つめるアキ。
そんな思いつめるアキを傍らでじっと見つめながら。
ミリアは心の中でアキに尋ねてこう言った。
(アキさんは、それを知って……一体、どうするつもりなんですか)
その答えを聞くのがあまりにも怖くて、ミリアは無意識的に口を固く閉じるのであった。
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる