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ナオト、ナツメとエンカウタする
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そんなこんなで、奇しくもタジオ少年に会えたおかげで棚から牡丹餅式に魔法の書が手に入いる算段となったナオトなのだった。
ただしかし。考えるまでもなく魔法の書を持っているだけではいつまで経っても魔法は使えない。
やはり、古代文字だかなんだか知らないけれど見たこともない、のたくった線やら記号やらアイコンみたいなものを読める人を見つけ出さない限り無用の長物でしかなかった。
となると、やはりケット・シーなのかとナオトは考える。結局鍵を握るのはケット・シーしかいないのか。
それから数日後、ナオトはエーゲ海が似合いそうな美少年に逢った。カラオケで3時間くらいワチャワチャ騒いで楽しんだ。
タジオ少年は、顔に劣らず美声の持ち主で、ナオトはいまいちばんはまってる菅田将暉の『ラストシーン』を歌ってよとリクエストしたりした。
タジオ少年の方は、ママが好きなんだよねと言って、佐野元春の『アンジェリーナ』をナオトは歌わされた。
あと『白日』とか『根も葉もrumor』とかとても歌えないものをリクエストされた。いじめだよなとナオトは少し涙目になってそれでも歌ったが、酸欠のカバみたいだとタジオ少年には言われた。
ま、それはともかくナオトは、タジオ少年から無事に魔法の書を貰い受けた。それは、ズシリと重く分厚い書物だった。古めかしいということだけではなく、何か神秘的といえばいいのか、不思議な雰囲気を纏っていた。
まあ、それは魔法の書だと知っているナオトの主観であり、そう見えてしまうというか、恣意的にそうであって欲しいと思うナオトの願望が半分入っているからかもしれなかった。
タジオ少年は、カラオケを堪能すると次に会う日を楽しみにしてるからと、にこやかに笑ってじゃまたネと雑踏の中へと消えていった。
ナオトも美少年を間近に見れて眼福だったが、部屋を出る時にキスをせがまれたのはちょっと困った。
にしても問題なのは、まったく判読できないから音読みできない魔法だか魔術の呪文。
ナオトは、スクランブル交差点を渡りながら、どうしたものかと考えあぐねていたけれど、なぜか以前になんの目的もなくフラフラと自分からラビリンスに迷い込んでいくみたいにして、見知らぬビルに入ったことを思い出した。
あれは、渋谷スカイをちょっと冷やかしで見てやろうとしていた時のことで、むろん有料なのでデートならいざ知らず、ひとりで眺望を楽しんでも味気ないので、入り口まで行って、速攻、回れ右してエスカレーターで下りてきてしまったことがあった。
その時、そのスカイのビルのレストランのあるフロアの一角に、ホテルのロビーのような落ち着いた雰囲気の空間があって、きょうは、あそこにいって少し休んでから帰ろうとナオトは思った。
なんとなく、誰にも教えたくない秘密の場所みたいな自分にとって特別な感じがする大切な場所とか、モノとかがひとつくらいはあるのではないかなと思うけれど、ナオトもはじめて、その空間を訪れた時に即座にまたいつか必ず来たいと思ったのだった。
全面が窓の抜けのいい眺めは、ナオトにとっては、スカイの屋上から見る遮るものが何もないパノラマの景色よりも、枠があるこその言わば芸術的な眺めが堪能できる場所だとその時、感銘を受けたのだった。
そして、改めて今また窓近くに立って渋谷の街を眺めて、全面窓からこぼれるように入ってくる光と色彩に目を瞠った。
ナオトは、かなり音には敏感な方で静謐な部屋の中から外を眺めるという、言わば無音ゆえに訪ずれる美というものがあると思っていた。
そして、全面窓から見えるその光溢れる光景が一幅の絵画のように見えるのは、フレームがあるからでありフレームによって切り取られているからこそ、そこに美がありまた、想像する余地が残されているのだ。
そんなことを考えながらソファに座っていたナオトは、いつしかうつらうつら居眠りしてしまったようだった。
誰か自分の名前を呼んでいる気がしてハッとして顔をあげると、最初は視線の先に像が結んでも、誰なのかさっぱりわからなかった。
「お久しぶり」
あ! っと思った。
「ナムメちゃん!」
寝ぼけ眼のナオトがあげた素っ頓狂な声にナツメは、大爆笑。
「ナムメです、どうも」
「いや、ごめんナツメっていったつもりなんだけど」
はいはい、とナツメは腕を組んで
「で、なんでナオトくん、こんなとこにいんの?」
「いや、それが」
「あ、そういえば、キミ、さかきばら先生の講演会にいたでしょ?」
「え、ナツメちゃんもいたの? なら声かけてよね」
「いや、マジにあの先生、いいように使われてるから、聞く価値ないなと思ってすぐでちゃったからね」
「使われてる?」
「そ。傀儡っていうのかな」
「はい? 何さ傀儡って」
「操り人形みたいな?」
「誰が操ってるわけ?」
「それは、まあね。ナオトくんが知らない世界もあるって話だよ」
「たとえば、魔物とか?」
「え? ナオトくんそういうの嫌いじゃなかったっけ? オカルト系とか?」
「あー、別に嫌いではないよ、まったく。霊感とかないけどね。で、さっきの話だけど榊先生は、魔物の傀儡になってるってこと? だから、あんな真面目な人たちを惑乱するようなわけのわからないパフォーマンスをやったんだ」
「そういうこと。アイツらはとにかく人間が混乱したり苦しんだりするのが楽しくて仕方ないらしいよ」
そういって、ナツメはナオトの横に座った。そして、何これと何気なく古めかしい分厚いハードカバーの本を膝に乗せて表紙を開いた。
ただしかし。考えるまでもなく魔法の書を持っているだけではいつまで経っても魔法は使えない。
やはり、古代文字だかなんだか知らないけれど見たこともない、のたくった線やら記号やらアイコンみたいなものを読める人を見つけ出さない限り無用の長物でしかなかった。
となると、やはりケット・シーなのかとナオトは考える。結局鍵を握るのはケット・シーしかいないのか。
それから数日後、ナオトはエーゲ海が似合いそうな美少年に逢った。カラオケで3時間くらいワチャワチャ騒いで楽しんだ。
タジオ少年は、顔に劣らず美声の持ち主で、ナオトはいまいちばんはまってる菅田将暉の『ラストシーン』を歌ってよとリクエストしたりした。
タジオ少年の方は、ママが好きなんだよねと言って、佐野元春の『アンジェリーナ』をナオトは歌わされた。
あと『白日』とか『根も葉もrumor』とかとても歌えないものをリクエストされた。いじめだよなとナオトは少し涙目になってそれでも歌ったが、酸欠のカバみたいだとタジオ少年には言われた。
ま、それはともかくナオトは、タジオ少年から無事に魔法の書を貰い受けた。それは、ズシリと重く分厚い書物だった。古めかしいということだけではなく、何か神秘的といえばいいのか、不思議な雰囲気を纏っていた。
まあ、それは魔法の書だと知っているナオトの主観であり、そう見えてしまうというか、恣意的にそうであって欲しいと思うナオトの願望が半分入っているからかもしれなかった。
タジオ少年は、カラオケを堪能すると次に会う日を楽しみにしてるからと、にこやかに笑ってじゃまたネと雑踏の中へと消えていった。
ナオトも美少年を間近に見れて眼福だったが、部屋を出る時にキスをせがまれたのはちょっと困った。
にしても問題なのは、まったく判読できないから音読みできない魔法だか魔術の呪文。
ナオトは、スクランブル交差点を渡りながら、どうしたものかと考えあぐねていたけれど、なぜか以前になんの目的もなくフラフラと自分からラビリンスに迷い込んでいくみたいにして、見知らぬビルに入ったことを思い出した。
あれは、渋谷スカイをちょっと冷やかしで見てやろうとしていた時のことで、むろん有料なのでデートならいざ知らず、ひとりで眺望を楽しんでも味気ないので、入り口まで行って、速攻、回れ右してエスカレーターで下りてきてしまったことがあった。
その時、そのスカイのビルのレストランのあるフロアの一角に、ホテルのロビーのような落ち着いた雰囲気の空間があって、きょうは、あそこにいって少し休んでから帰ろうとナオトは思った。
なんとなく、誰にも教えたくない秘密の場所みたいな自分にとって特別な感じがする大切な場所とか、モノとかがひとつくらいはあるのではないかなと思うけれど、ナオトもはじめて、その空間を訪れた時に即座にまたいつか必ず来たいと思ったのだった。
全面が窓の抜けのいい眺めは、ナオトにとっては、スカイの屋上から見る遮るものが何もないパノラマの景色よりも、枠があるこその言わば芸術的な眺めが堪能できる場所だとその時、感銘を受けたのだった。
そして、改めて今また窓近くに立って渋谷の街を眺めて、全面窓からこぼれるように入ってくる光と色彩に目を瞠った。
ナオトは、かなり音には敏感な方で静謐な部屋の中から外を眺めるという、言わば無音ゆえに訪ずれる美というものがあると思っていた。
そして、全面窓から見えるその光溢れる光景が一幅の絵画のように見えるのは、フレームがあるからでありフレームによって切り取られているからこそ、そこに美がありまた、想像する余地が残されているのだ。
そんなことを考えながらソファに座っていたナオトは、いつしかうつらうつら居眠りしてしまったようだった。
誰か自分の名前を呼んでいる気がしてハッとして顔をあげると、最初は視線の先に像が結んでも、誰なのかさっぱりわからなかった。
「お久しぶり」
あ! っと思った。
「ナムメちゃん!」
寝ぼけ眼のナオトがあげた素っ頓狂な声にナツメは、大爆笑。
「ナムメです、どうも」
「いや、ごめんナツメっていったつもりなんだけど」
はいはい、とナツメは腕を組んで
「で、なんでナオトくん、こんなとこにいんの?」
「いや、それが」
「あ、そういえば、キミ、さかきばら先生の講演会にいたでしょ?」
「え、ナツメちゃんもいたの? なら声かけてよね」
「いや、マジにあの先生、いいように使われてるから、聞く価値ないなと思ってすぐでちゃったからね」
「使われてる?」
「そ。傀儡っていうのかな」
「はい? 何さ傀儡って」
「操り人形みたいな?」
「誰が操ってるわけ?」
「それは、まあね。ナオトくんが知らない世界もあるって話だよ」
「たとえば、魔物とか?」
「え? ナオトくんそういうの嫌いじゃなかったっけ? オカルト系とか?」
「あー、別に嫌いではないよ、まったく。霊感とかないけどね。で、さっきの話だけど榊先生は、魔物の傀儡になってるってこと? だから、あんな真面目な人たちを惑乱するようなわけのわからないパフォーマンスをやったんだ」
「そういうこと。アイツらはとにかく人間が混乱したり苦しんだりするのが楽しくて仕方ないらしいよ」
そういって、ナツメはナオトの横に座った。そして、何これと何気なく古めかしい分厚いハードカバーの本を膝に乗せて表紙を開いた。
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