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魔術師、剣闘士大会を観る
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アルから剣闘士大会の話を聞いた数日後、僕は激務に追われていた。
「うぅ、もう疲れた。いやだ。もう無理だー!」
「それがお前の仕事だろ。もっと頑張れ」
僕は今、植物園の目の前で実験室では使えないほど大きい釜をかき混ぜている。何故かと言うと剣闘士大会に向けて、怪我人用の回復薬を作って欲しいと学園長から直々に頼まれてしまったからだ。媚薬の件で、授業を休んでしまった事もあって断ることが出来なかった僕はこうして寒さの中必死で回復薬を作っているのだ。
「なんでゼロはそんなに寒くなさそうなの?」
「慣れているからな」
ゼロは近くで素振りをしている。
「先生、寒くないか?」
「大丈夫だよ。アルは優しいね。」
回復薬作りの話をしたら自ら手伝いたいと言い出したため、アルにはラズウェルの回復薬作りの手伝いをしてもらっている。
「ラズ。俺はそいつを認めて無いからな。」
「いや、まだその話続いていたの?もういいんじゃない?」
ゼロは鋭い目でアルを見ている。
「そういや、ゼロは先生のことラズって言うんだな。二人はそんな仲良かったっけ?それに、ゼロがこんなに饒舌だとは知らなかった。」
「え、あ、うん。もう長いこと一緒にいるからね。」
僕たちの関係性を聞かれると、どう答えたらいいか分からない。あの事件の事もあってゼロと僕の関係はあやふやになっている。
「少なくとも、生徒のお前よりは長い時間を共に過ごしている。」
「は?俺だって先生とよく茶会を開いて先生のこともよく知っているし。」
二人は恐ろしい剣幕で言い合いをしている。僕が入る余地もなさそうなので、黙々と回復薬作りに励んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
とうとう、剣闘士大会当日になった。回復薬作りは大会の前日まで続いて、当日だというのに既に疲労が溜まっている。競技場は学園から離れ、王都の中心に近い所にある。
久しぶりにソリに乗って競技場に向かう。久しぶりと言っても僕には乗った記憶がないのだが。
今日は天気もよく、雪は降り止んでいる。
もうすでにゼロとアルは競技場に行ってしまったようだ。
長い間ソリに乗っていると競技場らしき建物が見えてきた。
到着し観客席に行くと既に多くの生徒が競技場の席を埋めていた。
「この学園にこんな多くの生徒がいたとは驚きだなぁ」
感嘆を漏らしながら教員席を探し歩いていると、
「あらあら、ラズウェルさん!貴方の席は私の隣よ。」
「アイリーン先生」
「回復薬作りありがとうね!貴方のおかげで助かったわ!」
「いや、僕はやるべきことをしたまでですよ。」
「それでも、貴方は感謝されるべきよ!そういえばゼロ先生への恩返しは進んでいるのですか?」
「あ、忘れてた。どうしよう。逆に迷惑かけてばかりになってる…」
「あらあら、それならもういっそのことゼロ先生が喜ぶようなことをしたら宜しいのではないですか?」
「喜ぶこと、ですか?」
「分からなかったら、ゼロ先生に直接聞いてもいいと思いますよ。もう十分仲良くなったようですし」
にこにことしながらアイリーンは悩んでいるラズウェルを見つめる。
「そうですね、そうしてみます。」
席に着いてしばらくすると甲高い鐘の音が響く。どうやら大会の幕開けのようだ。観客席はざわざわとし始める。
「これより第149回王立エレクトル学園剣闘士大会を開幕することを宣言する。」
学園長が競技場全体に聞こえるように拡張魔術を展開しながらそう宣言すると、観客席はわっと歓声を上げた。
まさか、後にこの歓声が悲鳴に変わってしまうとはこの時、誰も考えていなかった。
「うぅ、もう疲れた。いやだ。もう無理だー!」
「それがお前の仕事だろ。もっと頑張れ」
僕は今、植物園の目の前で実験室では使えないほど大きい釜をかき混ぜている。何故かと言うと剣闘士大会に向けて、怪我人用の回復薬を作って欲しいと学園長から直々に頼まれてしまったからだ。媚薬の件で、授業を休んでしまった事もあって断ることが出来なかった僕はこうして寒さの中必死で回復薬を作っているのだ。
「なんでゼロはそんなに寒くなさそうなの?」
「慣れているからな」
ゼロは近くで素振りをしている。
「先生、寒くないか?」
「大丈夫だよ。アルは優しいね。」
回復薬作りの話をしたら自ら手伝いたいと言い出したため、アルにはラズウェルの回復薬作りの手伝いをしてもらっている。
「ラズ。俺はそいつを認めて無いからな。」
「いや、まだその話続いていたの?もういいんじゃない?」
ゼロは鋭い目でアルを見ている。
「そういや、ゼロは先生のことラズって言うんだな。二人はそんな仲良かったっけ?それに、ゼロがこんなに饒舌だとは知らなかった。」
「え、あ、うん。もう長いこと一緒にいるからね。」
僕たちの関係性を聞かれると、どう答えたらいいか分からない。あの事件の事もあってゼロと僕の関係はあやふやになっている。
「少なくとも、生徒のお前よりは長い時間を共に過ごしている。」
「は?俺だって先生とよく茶会を開いて先生のこともよく知っているし。」
二人は恐ろしい剣幕で言い合いをしている。僕が入る余地もなさそうなので、黙々と回復薬作りに励んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
とうとう、剣闘士大会当日になった。回復薬作りは大会の前日まで続いて、当日だというのに既に疲労が溜まっている。競技場は学園から離れ、王都の中心に近い所にある。
久しぶりにソリに乗って競技場に向かう。久しぶりと言っても僕には乗った記憶がないのだが。
今日は天気もよく、雪は降り止んでいる。
もうすでにゼロとアルは競技場に行ってしまったようだ。
長い間ソリに乗っていると競技場らしき建物が見えてきた。
到着し観客席に行くと既に多くの生徒が競技場の席を埋めていた。
「この学園にこんな多くの生徒がいたとは驚きだなぁ」
感嘆を漏らしながら教員席を探し歩いていると、
「あらあら、ラズウェルさん!貴方の席は私の隣よ。」
「アイリーン先生」
「回復薬作りありがとうね!貴方のおかげで助かったわ!」
「いや、僕はやるべきことをしたまでですよ。」
「それでも、貴方は感謝されるべきよ!そういえばゼロ先生への恩返しは進んでいるのですか?」
「あ、忘れてた。どうしよう。逆に迷惑かけてばかりになってる…」
「あらあら、それならもういっそのことゼロ先生が喜ぶようなことをしたら宜しいのではないですか?」
「喜ぶこと、ですか?」
「分からなかったら、ゼロ先生に直接聞いてもいいと思いますよ。もう十分仲良くなったようですし」
にこにことしながらアイリーンは悩んでいるラズウェルを見つめる。
「そうですね、そうしてみます。」
席に着いてしばらくすると甲高い鐘の音が響く。どうやら大会の幕開けのようだ。観客席はざわざわとし始める。
「これより第149回王立エレクトル学園剣闘士大会を開幕することを宣言する。」
学園長が競技場全体に聞こえるように拡張魔術を展開しながらそう宣言すると、観客席はわっと歓声を上げた。
まさか、後にこの歓声が悲鳴に変わってしまうとはこの時、誰も考えていなかった。
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