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魔術師、教師になる
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学園長室に到着した。重厚な両開きの扉をノックすると中から凛々しい声で部屋に入るように促される。
「失礼します」
僕がそう言って部屋に入ると後ろからアイリーンも続けて入ってきた。
「学園長、昨日ゼロ先生が救助した流離いの魔術師さんを連れて参りました。」
アイリーンがそう言うと所々白髪が混じった老紳士が机の上にある資料から目を上げてこちらを見た。
「あぁ昨日の」
と学園長と呼ばれた男は言い、ラズウェルをじっと見つめる。
「僕をこの学園の魔術教師として雇ってください。ゼロ先生に恩を返したいのです。」
僕がそう言うと、学園長はしばらく何やら考え込んだ後目を細めて
「よし!いいだろう。だが、他国の人を正式に雇うのは王立学園としては些か難しいのだ。だから臨時の教師としてなら喜んで雇おうではないか。」
良かった雇っ貰える!ギルドに行って依頼を受けなくとも収入があるし、何よりも本が読める!
心の中で密かに喜んでいると背後のドアが開き、ゼロが部屋に入ってくる。
「学園長、彼を雇うことにしたんですか?まだ、彼の素性は明らかになっていませんが。」
そう言うと、ゼロはラズウェルに入国手続書を渡す。
「まぁ良いではないか。流離いの魔術師などそうそう会えるものではない。それにこの学園はいつも魔術教師の欠員が出ているから丁度いい。…あぁそれと、」
そう言うと学園長は付け足して言う。
「恩を返してまた旅を再開させたくなったらいつでも辞めていいぞ」
どうやら学園長という人物は旅人のことをよくわかってるようだ。
こうしてラズウェルの教師生活が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから教師として働くためのあれやこれやを教えてもらうために学園内を歩き回っているラズウェルは校内ですぐに噂になった。
鈍い灰色の長髪は貴族らしくなく言葉も庶民が使うような言葉ばかりだと貴族の子息たちから陰口を叩かれる一方、庶民の生徒からは、話しやすく面白いと評判になった。
そんなラズウェルの監視または見守りをゼロは学園長から任されてしまい、もはや恩返しの意味など無くなってしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして現在、ラズウェルは学園内の植物園で人食い花の蜜を採取するという魔術師がやりそうにもない事を意気揚々と行おうとしている。ゼロは植物園内にあるベンチに腰掛けそれを遠くから眺めることにした。
俺は最初ラズウェルが雪の中で倒れていたのは誰かに見捨てられたからだと思い同情していたが、今思うとただ単に冬のフィロントの寒さを甘く見ていただけだと分かる。だが何故、魔術師ほどの人物があんな所で倒れていたのか甚だ疑問だ。
ラズウェルの事を考えている内に人食い花の蔓がラズウェルの両足に絡みつき、ラズウェルが逆さで宙に浮いていた。人食い花は大きく口を開けラズウェルを丸呑みしかけている。
しまった!俺としたことが、迂闊にもこいつの行動を見ていなかった!
ゼロはいつもの平静さを失いながらも愛用の剣を鞘から抜いて人食い花の元へ行き一撃で花を切り落とした。
花が切り落とされた瞬間蔓が緩み、ラズウェルも地面へ音をたてて落ちた。
ゼロが近寄ると、ラズウェルの上半身は花の蜜でべっとりとしている。
俺は慌ててラズウェルの背に腕を回し上半身を起き上がらせて、声を掛けようとした。
すると突然ラズウェルが元気よく起き上がった。
「どうだいゼロ先生!花の蜜はこうやって集めると効率がよくていいんだよねぇ」
ラズウェルはそう言って俺を振り返って見つめてきた。
喜々として喋るその姿に俺は息を呑む。
長い髪のせいで見えなかった顔には夜の街で男を誘う女と似た妖艶な笑みを浮かばせ、その端正な顔立ちは見るもの全てを引き込むような感覚にしたが、それよりも儚げな雰囲気と陽の光にあたって輝くアメジストの瞳に俺は惹かれてしまっていた。
そしてそれと同時にある伝説の冒険者のことを思い出した。
「失礼します」
僕がそう言って部屋に入ると後ろからアイリーンも続けて入ってきた。
「学園長、昨日ゼロ先生が救助した流離いの魔術師さんを連れて参りました。」
アイリーンがそう言うと所々白髪が混じった老紳士が机の上にある資料から目を上げてこちらを見た。
「あぁ昨日の」
と学園長と呼ばれた男は言い、ラズウェルをじっと見つめる。
「僕をこの学園の魔術教師として雇ってください。ゼロ先生に恩を返したいのです。」
僕がそう言うと、学園長はしばらく何やら考え込んだ後目を細めて
「よし!いいだろう。だが、他国の人を正式に雇うのは王立学園としては些か難しいのだ。だから臨時の教師としてなら喜んで雇おうではないか。」
良かった雇っ貰える!ギルドに行って依頼を受けなくとも収入があるし、何よりも本が読める!
心の中で密かに喜んでいると背後のドアが開き、ゼロが部屋に入ってくる。
「学園長、彼を雇うことにしたんですか?まだ、彼の素性は明らかになっていませんが。」
そう言うと、ゼロはラズウェルに入国手続書を渡す。
「まぁ良いではないか。流離いの魔術師などそうそう会えるものではない。それにこの学園はいつも魔術教師の欠員が出ているから丁度いい。…あぁそれと、」
そう言うと学園長は付け足して言う。
「恩を返してまた旅を再開させたくなったらいつでも辞めていいぞ」
どうやら学園長という人物は旅人のことをよくわかってるようだ。
こうしてラズウェルの教師生活が始まった。
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それから教師として働くためのあれやこれやを教えてもらうために学園内を歩き回っているラズウェルは校内ですぐに噂になった。
鈍い灰色の長髪は貴族らしくなく言葉も庶民が使うような言葉ばかりだと貴族の子息たちから陰口を叩かれる一方、庶民の生徒からは、話しやすく面白いと評判になった。
そんなラズウェルの監視または見守りをゼロは学園長から任されてしまい、もはや恩返しの意味など無くなってしまっていた。
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そして現在、ラズウェルは学園内の植物園で人食い花の蜜を採取するという魔術師がやりそうにもない事を意気揚々と行おうとしている。ゼロは植物園内にあるベンチに腰掛けそれを遠くから眺めることにした。
俺は最初ラズウェルが雪の中で倒れていたのは誰かに見捨てられたからだと思い同情していたが、今思うとただ単に冬のフィロントの寒さを甘く見ていただけだと分かる。だが何故、魔術師ほどの人物があんな所で倒れていたのか甚だ疑問だ。
ラズウェルの事を考えている内に人食い花の蔓がラズウェルの両足に絡みつき、ラズウェルが逆さで宙に浮いていた。人食い花は大きく口を開けラズウェルを丸呑みしかけている。
しまった!俺としたことが、迂闊にもこいつの行動を見ていなかった!
ゼロはいつもの平静さを失いながらも愛用の剣を鞘から抜いて人食い花の元へ行き一撃で花を切り落とした。
花が切り落とされた瞬間蔓が緩み、ラズウェルも地面へ音をたてて落ちた。
ゼロが近寄ると、ラズウェルの上半身は花の蜜でべっとりとしている。
俺は慌ててラズウェルの背に腕を回し上半身を起き上がらせて、声を掛けようとした。
すると突然ラズウェルが元気よく起き上がった。
「どうだいゼロ先生!花の蜜はこうやって集めると効率がよくていいんだよねぇ」
ラズウェルはそう言って俺を振り返って見つめてきた。
喜々として喋るその姿に俺は息を呑む。
長い髪のせいで見えなかった顔には夜の街で男を誘う女と似た妖艶な笑みを浮かばせ、その端正な顔立ちは見るもの全てを引き込むような感覚にしたが、それよりも儚げな雰囲気と陽の光にあたって輝くアメジストの瞳に俺は惹かれてしまっていた。
そしてそれと同時にある伝説の冒険者のことを思い出した。
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