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店に入るとノアは手荷物を片付け、ラウルを奥の部屋へと連れていく。奥の部屋はノアの生活の場であるため店内ほど綺麗ではない。市場で買ったパンや肉串の汚れた包み紙、脱ぎ捨てられた服、飲みかけの瓶、洗われていない木製の食器、微かに香る腐敗した匂いにラウルは顔をしかめた。
「ん?匂いが気になるのか?ラウルは今までの奴隷生活でこんなのには慣れていると思っていたけど…」
「……」
「そうか、男衆として働いていたんだっけか?あんなに立派な娼館に居たのならこんな匂い耐えられないのも無理はないか」
「…俺は奴隷だ」
ラウルが喋った!最初からラウルに話しかけているつもりだったけれど、ラウルは全く反応しないし自分も話をするのが特別好きという訳では無いから独り言の様になってしまっていた状況に居心地悪さを感じていた。でも良かった、ラウルが会話してくれるなら色々とやりやすくなる。
「ま、そうだよな。奴隷の扱いなんて同じ男衆のやつらとは違うか、じゃあただこの匂いが嫌いなだけ?」
「……」
やっぱり先行き不安だな。独り言は続きそうだ。
奴隷を貰ったはいいものの、ラウルの部屋が無いのが問題だ。けれど空いている部屋は無いしここの部屋を一緒に使うしかないようだ。
「この話は置いておくとして、ここは普段生活する部屋ね、まあ寝たり食べたりするだけだけど。あと僕と共用だけど我慢してくれ」
ラウルは部屋をじっと眺めており、話をちゃんと聞いているのか疑わしい。
「…まあいいや。もうこれ以上話す内容も無いし、僕は店のことをしないといけないから好きにしてていいよ。」
ラウルをそのままにして、ノアは調合用の前掛けを着ながら部屋を出た。
今日は薬を注文した客が来るはずだ。あと店仕舞いした後はギルドに顔を出して薬の材料の依頼をして…、仕事は山積みだ。
ノアは店を出て店の前に掛けられている札を表にし、店内の定位置に行く。それから薬の調合をしながら訪れた客の対応をする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
それを繰り返してもう四時間も経っていることに気が付き、訪れる客が少なくなったところを見計らって奥の部屋へと移動した。
「おお!」
部屋に入ると驚きの光景が広がっていた。床には紙屑も服も落ちていない。食器は一つにまとめられている。麻袋にはゴミがまとめられており、部屋全体がこんなに広く感じられるのはここに住み始めた日以来である。
「掃除してくれたのか~、意外と仕事できるんだな。娼館では暴力沙汰を起こしていたらしいからてっきり言うこと聞いてくれないやつかと思ってたよ」
「…奴隷契約はしている」
「まあそうだけど、無理やり命令を聞かせるのと自主的に仕事をするのとじゃ意味が変わってくるからな」
きっとラウルはこの部屋で生活するのが耐えられなかっただけなのだろう。つまりノアのためではなく自分のために掃除をしたのだ。
「ありがとな」
ノアはラウルにそう笑いかけたが、ラウルはチラリとノアを見るだけで何も言わず掃除を再開した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ~疲れた」
店を出ると美しい夕焼けが広がっていた。今日も多くの客が薬を求めてやって来た。娼婦や売春婦もいたがそのほとんどは裕福な住人や商人、そして冒険者であった。特に冒険者には傷薬が飛ぶように売れる。
「また傷薬の在庫が切れそうだ。これじゃ調合が間に合わないな、もう徹夜はいやなんだけど…」
溜め息をつき、愚痴を漏らしながら店の札を裏にした。それから店の扉を開け、ラウルに声を掛ける。
「そろそろギルドに行くよ。夕飯と…あとラウルの服も買った方がよさそうだな」
そう言うとラウルが店から出てきた。相変わらず返事をしないが、ノアの言うことには大体従ってくれる。
ラウルはノアの横を歩き、橙色の空の下二人はギルドへと向かって行った。
「ん?匂いが気になるのか?ラウルは今までの奴隷生活でこんなのには慣れていると思っていたけど…」
「……」
「そうか、男衆として働いていたんだっけか?あんなに立派な娼館に居たのならこんな匂い耐えられないのも無理はないか」
「…俺は奴隷だ」
ラウルが喋った!最初からラウルに話しかけているつもりだったけれど、ラウルは全く反応しないし自分も話をするのが特別好きという訳では無いから独り言の様になってしまっていた状況に居心地悪さを感じていた。でも良かった、ラウルが会話してくれるなら色々とやりやすくなる。
「ま、そうだよな。奴隷の扱いなんて同じ男衆のやつらとは違うか、じゃあただこの匂いが嫌いなだけ?」
「……」
やっぱり先行き不安だな。独り言は続きそうだ。
奴隷を貰ったはいいものの、ラウルの部屋が無いのが問題だ。けれど空いている部屋は無いしここの部屋を一緒に使うしかないようだ。
「この話は置いておくとして、ここは普段生活する部屋ね、まあ寝たり食べたりするだけだけど。あと僕と共用だけど我慢してくれ」
ラウルは部屋をじっと眺めており、話をちゃんと聞いているのか疑わしい。
「…まあいいや。もうこれ以上話す内容も無いし、僕は店のことをしないといけないから好きにしてていいよ。」
ラウルをそのままにして、ノアは調合用の前掛けを着ながら部屋を出た。
今日は薬を注文した客が来るはずだ。あと店仕舞いした後はギルドに顔を出して薬の材料の依頼をして…、仕事は山積みだ。
ノアは店を出て店の前に掛けられている札を表にし、店内の定位置に行く。それから薬の調合をしながら訪れた客の対応をする。
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それを繰り返してもう四時間も経っていることに気が付き、訪れる客が少なくなったところを見計らって奥の部屋へと移動した。
「おお!」
部屋に入ると驚きの光景が広がっていた。床には紙屑も服も落ちていない。食器は一つにまとめられている。麻袋にはゴミがまとめられており、部屋全体がこんなに広く感じられるのはここに住み始めた日以来である。
「掃除してくれたのか~、意外と仕事できるんだな。娼館では暴力沙汰を起こしていたらしいからてっきり言うこと聞いてくれないやつかと思ってたよ」
「…奴隷契約はしている」
「まあそうだけど、無理やり命令を聞かせるのと自主的に仕事をするのとじゃ意味が変わってくるからな」
きっとラウルはこの部屋で生活するのが耐えられなかっただけなのだろう。つまりノアのためではなく自分のために掃除をしたのだ。
「ありがとな」
ノアはラウルにそう笑いかけたが、ラウルはチラリとノアを見るだけで何も言わず掃除を再開した。
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「あ~疲れた」
店を出ると美しい夕焼けが広がっていた。今日も多くの客が薬を求めてやって来た。娼婦や売春婦もいたがそのほとんどは裕福な住人や商人、そして冒険者であった。特に冒険者には傷薬が飛ぶように売れる。
「また傷薬の在庫が切れそうだ。これじゃ調合が間に合わないな、もう徹夜はいやなんだけど…」
溜め息をつき、愚痴を漏らしながら店の札を裏にした。それから店の扉を開け、ラウルに声を掛ける。
「そろそろギルドに行くよ。夕飯と…あとラウルの服も買った方がよさそうだな」
そう言うとラウルが店から出てきた。相変わらず返事をしないが、ノアの言うことには大体従ってくれる。
ラウルはノアの横を歩き、橙色の空の下二人はギルドへと向かって行った。
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