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北の地にて
Cooking March
しおりを挟むワイナール皇国暦286年、8の月
#コウトー中心街近くにて
「おおっ⁉︎なんだよ、久しぶりじゃないかアナさん、タクさん!」
「ありゃりゃ⁉︎ホントだよ!アナさんとタクさんじゃないか⁉︎里帰りでもしてたのかい?」
「おお⁉︎ホントだ⁉︎アナさんとタクさんじゃないか⁉︎」
「アナさんタクさん、久しぶりに街中に来たんだ、何か喰ってくかい?」
「ふむ?そうだな、街中に来るのは久方ぶりであったな?
んむ?では、その肉と…芋か?を交互に刺した串を貰おうかな?」
「そういえばそうであったな?最近、マヨが海の階層を創ったから入り浸っておったな
む?我にも同じのをくれぬか?あゝ、パンデモネとノイリマナにも焼いてやってくれ」
「お⁉︎あいよぉ!毎度どうもー!
じゃあアナさんとタクさんの2本は特大で、後の2本は普通でいいかい?」
「「うむ。」」
「コレは芋に似てるが果物なんだよアナさんタクさん
最近、南方から入ってくるようになったバナナって名前の木に成る果物でな?
煮て良し焼いて良し、黄色く完熟したのはそのまま食べても甘くて飛びきり美味いんだよ」
「「私達の分までありがとうございます、タクシャカ様」」
「バナナ?ほう、果物であったか」
「バナナのう…ん、焼けて甘い匂いが漂ってきておるな」
「「「「「マヨ?…海⁉︎」」」」」
「アナヴァタプタ様、海とは良きものなのですか?」
「タクシャカ様?入り浸るほどに海がお気に入りなのですか?どのような物なのですか?」
「ん?パンデモネとノイリマナは海を知らんのか?」
「おヌシらにも知らぬ事があったのだな?」
「はい。面目御座いません…」
「はい。私どもは東辺境より出たことがありませんので…」
「そうであったか」
「なるほどの」
「アナさんタクさんよ!海まで行ったのかい⁉︎」
「海ったら南方だろ?バナナは見なかったのかい?」
「ん?お、おぉ…海に行ってきたぞ?南方ではないがな」
「なんだ?街の者たちまで?海がどうかしたのか?」
「いやぁ、俺たちもメイドさんと一緒だよ」
「そうそう、コウトー住人で海を見た事があるのは行商人ぐらいだ」
「「「「「うんうん」」」」」
「そうなのか?」
「ふむ…確かにヒトの足では南方の海でも遠かろうな?
北と東は無理であろうしな」
「そうなんだよ、海まで行くにゃ刻もそうだが大金が要るんだよ」
「そうだねぇ、路銀も要るけど護衛とかも要るからねぇ」
「だなぁ、金がいくらあっても足りねぇや」
「うまいとこ商隊とかと同行出来たら御の字だしね」
「しかし、アナさんとタクさんは少し見なかっただけで海まで行ってきたんだな?」
「ん?マヨが…いや、マヨヒガの中に海の階層が出来たのでな?行ってきただけだ」
「うむ。立派な海であったぞ?」
「「「「「え⁉︎マヨヒガに海が⁉︎」」」」」
「立派?」
「うむ。マヨヒガに雄大な…いや、広大な…か?海が出来ておった」
「うむうむ、もう冒険者も幾人か来ておったぞ」
「「「「「へえー⁉︎」」」」」
「あれ?じゃあマヨヒガから南方の物が出てくるのかい?」
「え?バッカ!マヨヒガは直ぐそこじゃねーか、南方じゃねーよ」
「あれ?そうだね?でもマヨヒガってどれだけ広いんだろうねぇ」
「ん?ん~?そういや海の階層が出来てて冒険者が辿り着いたってこた
南方産物は無理でも海の産物は持ち帰ってくる可能性があるのかね?」
「あ⁉︎そういやそうだね⁉︎こりゃ楽しみになってきたね♪」
「でもよ、海の魚って使ったことがあんのかい?」
「いや、無いよ?けど川の魚と一緒じゃないのかい?
そりゃあ見た目は川の魚とは違うんだろうけどさ」
「「「「「ん?」」」」」
アナヴァタプタとタクシャカ達を囲んで賑やかしていた住人達が一斉に街門の方向を仰ぎ見る
“ドヨドヨザワザワドヨドヨ…”
「なんだ?門の方が変だな?」
「コウトーに何か来たのかい?」
「騒ぎにゃなってないみたいだがな、なんだろう?」
街門方向から黒山の人集りと言ってもいいぐらいの群集がゆっくりとコウトー中心部へ向かってくる
「ちょっとアンタら道を開けてよ!」
「もーう!進めないー」
「姐さん、こんなデカイの初めて見たんだろうからしょうがねーよ」
「分かるわー、これほどの獲物は俺達も滅多に獲れねーしな」
「それも2匹もだしな」
「けどよ?きっちり絞めてはきたけど魚は足が早いから早く進みてーなぁ」
「だなぁ、せっかくリズさんがトリー前のパウル商会から荷車手配してくれて早くコウトーまで運べたのにな」
「でも、なんで『そのままコウトーの冒険者組合まで運んで下さい』なんだろ?」
「街中の方が売るのに都合が良いからとか?」
「あー確かにアタシ達だけじゃ食べきれないもんね?」
「てゆーかさ、海の階層から直接地下1階まで戻れたのってミスリルのおかげかなぁ?」
「どう考えてもそうじゃない?だって、今までだったら5階層か6階層は必死になって戻ってたよ?」
「うーん…じゃあさ?コレもランク上げのご褒美なのかなー?」
「そうだね、マヨヒガからのご褒美かもしれないね?
冒険者組合に行ったら、しっかりとミスリルにランク上げしてもらおうか」
「そうだねー」
「でも、まさかカジキ?だっけ?のクチからミスリルが出てくるなんてね?」
「だよね、浜に上げたら石ころ吐き出したから不思議だったけど、まさかミスリルとはね」
「でもよ姐さん達?わざわざ海に潜らなくて済んだからよかったんじゃねーかい?」
「「「「「確かにね」」」」」
「さて、ロウ達も中へ入っていったから俺たちも中に入って一部屋使おうか
外でヤツラの血の臭いを嗅ぎながら話し合ったところで良い方策なぞ浮かばんからな
あゝスタイナー商館への出入りを見張る兵を数人残して、兵の皆もついて来い
お前達はロウ達と数日とはいえ旅してきたのだろう?
俺たちよりはロウの事を知っているというのは、無駄に龍の尾を踏む愚を犯さぬ為にも重要だ
それに…バヴェルの今後の為にもな」
「「「「「はっ!私たちの意見が御役に立つならば喜んで!」」」」」
「父上?長い年月、北辺境領を治められてきた父上ならば…」
「ん?何が言いたいのだバヴェル
まさかとは思うが、俺が元北辺境伯だったから未だチカラがあると思ってはいないだろうな?
今の俺には権力的なチカラは無く、元北辺境伯だったという名しかない
俺が簡単に解決出来るなどとは思わんことだ
今回の件、解決するのはお前しかおらんのだぞ?
しっかり考え、北辺境伯として責任ある行動をしろ」
「は…はい…」
「見張りに残る兵は出入りを決して許すな
無理に入ろうとする者がいれば討っても構わない、それはどんな家の者であろうともだ
商館の者が出ようとするならば取り押さえよ」
「「「「「はっ!」」」」」
「さすがは商館だね、大人数が居ただけあって調理室に大きな鍋とかの調理器具や食器があって助かったよ
それにこの倉庫には、それなりに食材もあったから良かった~
あっちの一塊りにして置いてある壺って油やんな
北の方って何から油作ってんだろ?
獣脂っぽくはないんだよなぁ?
商館だから輸入してきてんのかな?
まぁなんにせよ大量の油があるって事は腹にたまる揚げ物作り放題だな
つーか⁉︎バターとかもあんじゃん!酪農家が多そうな土地だから、もしや?と思ってたけど大正解だった♪
しかし、バターってあんまし日持ちしないけどどうしてんだろ?
夏でも涼しい土地だから大丈夫なんかな?
んー?この容器って普通の壺だよなぁ
なんかしら魔法付与してあるのかね?
俺って乳製品はミルクぐらいしか収納にストックしてなかったからな…
あちこちに酪農家はいたけど大規模営農してるヒトはいなかったし
てゆーかー!ジャガイモとタマネギも山盛りであるやん!
て事はー?収納から肉とパンを出せばー?アレが出来るな♪」
「わふ?」(ねえ?何を作るの?)
「ふふ…歌でも歌おうか?」
「わん⁉︎」(歌⁉︎え?歌うの⁉︎)
「へへ…」
ペロリとクチビルを舐めて
「パパパ パパパ パパパ パパパ パパパパパパパ~ン♪」
「ワフッ⁉︎」(ファンファーレ⁉︎)
そしてワラシがキラキラと目を輝かせてロウを見、耳がピクピク動く
「い~ざ進め~や~キッチン~~目指すは~ジャ~ガ~イモ~♪…」
「ワッフ⁉︎」(あ⁉︎その歌⁉︎)
「ロウ!なにそれ!我も吹く!」
ワラシが即座に笛を構えるも
「なあロウや?料理をするのか?我らも手伝おうかい?」
ぞろぞろとついて来ていた亜人種から声がかけられ、ワラシの出鼻が挫かれた
「ん?ああそうだね、ここにいる全員分だから少なくとも50人前は要るし
俺1人ででも出来なくはないけど手伝ってくれるなら助かるよ」
「そうか、ならば何をしようか?」
「うん。まずは食材持って調理室に行こう」
とロウが倉庫内の品々を片っ端から収納に仕舞い、ぞろぞろと商館1階奥にある調理室に戻った
「さて、まずは歌の前に準備しなきゃね
どっちにしろ歌のテンポと料理時間は比例しないもんだし
たとえ、あの歌の通りに作ったら完璧に出来るとはいえね」
言いつつロウが収納魔法からゴロゴロと大量のジャガイモを床に出す
「ワラシ?ここにあるジャガイモ100個以上あるけど洗いたいんだ
水で包み込んで攪拌してくれる?」
「うん!かくはん?」
「そう、水で包み込んだら水をグルグルグル~って動かして
中のジャガイモがぶつかったり擦りあったりするようにしてほしいんだよ
それで土汚れとかがキレイに落ちるんだね」
『昔、ホテルの厨房じゃ二槽式洗濯機でジャガイモや里芋なんかの芋類や根菜類をガンガン洗ってたなぁ
厨房に洗濯機ってのも不思議な備品だけど、洗濯槽で食材洗ったり脱水槽で水切りしたりで
大量仕込みのホテルなんかじゃ便利過ぎるぐらいだったけど、農家でもそんな使い方してたもんな』
「へー!うん。わかった!」
「うんでぇ、このワラシが洗ってくれたジャガイモにグルリと1周皮目に切れ込みいれてぇ
デッカイ鍋にガンガン入れて~茹でる!
皆んなはこれを真似してくれる?
どうせ全部いっぺんには茹でられないからね
その間に俺は別の作業始めるから」
「「「「「はいよ!」」」」」
「ロウよ?別の作業とは?まだ手は余っておるぞ」
「うん。今から大量の肉を叩きまくって挽肉にするんだ」
「ヒキニク?切り刻むのではないのか?」
「切り刻むんじゃあ少し大きいからね?
なんて言うかなぁ?刃物で叩いて粉々にするって感じだよ
まぁやって見せるよ」
とロウが今度は大猪を数頭軽々と出して、光剣でサクサクと解体し
全部で50kg足らずの肉塊にしていった
「んでー、この肉塊をぉ薄く…2cm厚ぐらいにスライスしてってぇ…
魔世?マヨヒガの入手品に剣鉈みたいなのはある?」
『はい。御座います主人様
ボウイナイフより身厚ですから出刃包丁代わりに使えるかと思います』
「おっ⁉︎さすがは魔世だね、先読み能力も優秀だなぁ」
『ありがとうございます♪』
魔世がリーンリーンと鳴りながら剣鉈をゴロリと2本出し
その剣鉈を両手に持ったロウが大量のスライス肉の前に立つ
「いい?後はこうやって…」
“トトトトトトトトトトトト…”と無雑作に両手に持った剣鉈で肉を叩きだす
“トトトトトトドドドドドドドドド…”
しばらく叩くと下の台に刃が届きだして肉を叩く音が重くなる
気にせず叩き続けると肉が脂と混ざり合ってネットリとしてきた
ねっとりしてきた挽肉を刃で掬い上げ、下から上に混ぜ上げて再び叩きを繰り返し
しばらく叩き刃に付いたペーストに近くなった挽肉を指で拭い粘度を確かめ
「こんなもんかな?
これって結構な重労働だけど、残りの肉も手伝ってもらえる」
「うむ。任せておけ!とは言いたいが、そのナイフは他にもあるか?」
「うん。大丈夫だよ、魔世?後10本ぐらい出してやってくれる?」
『はい。主人様』
魔世が剣鉈をゴロンゴロンと10本出した
「じゃあ、それでお願いね?
さて、ジャガイモ茹での第一弾はどうかな?」
ロウが置いてあった肉焼き用であろう串を1本持つと鍋に近寄って
上の方のジャガイモにプスッと刺す
「ん~?茹で上がったみたいだな…よし!」
とロウが茹でジャガイモが50個あまり入った鍋を素手で掴み
ロウの身の丈の3倍はある鍋をヒョイっと持ち上げると、流しに無雑作に返す
「さぁ、まだ熱々なんだけどね?みんなで皮を剥いてしまおうか?
皮剥き自体は簡単だよ?ホラ…」
ロウがジャガイモをひとつ持ち片手の平で包む様にして優しく手を握る様にすると
切れ目を入れたとこからツルリと皮が剥ける
「熱々の内はこんなに簡単に剥けちゃうんだよね
冷めてきたらツルリとは剥けないけど、それでもそんなに難しくはならないよ
だから、どうしても熱くて無理ってヒトは冷めてから剥いてね?」
「「「「「はいよ!」」」」」
「その間に俺は残りのジャガイモも茹でちゃって~
からの~挽肉炒めかな?
タマネギ入れてもいいけど、亜人種が大半だからやめとくか
シンプルなヤツにしておこう
って事は、残る準備はパン粉だな
パン自体は収納に大量にあるから、そのパンの皮取って一旦冷凍すりゃいいか
ワラシ、また手伝ってくれる?」
「うん!なにする?」
「うん。このパンのね、周りの皮…色づいてんのを取って白い部分だけにするんだよ」
「うん!」
ロウとワラシが片っ端からパンの皮を剥いていく、何本も何本も…
少し経つと、こんもりと白い小山
そして茶色い皮が散らばっている
「ねえ?君たち?」
ロウが手持ち無沙汰な亜人種の子たちに声をかけ
「このパンの皮を拾い集めて何かの容器に入れておいてくれない?
後で甘い物を作ってあげるよ」
「「「「「うん♪」」」」」
亜人種の子たちがパンの皮を拾い集めるのを見ながら
「ワラシ、白くなったパンを全部凍らせる事って出来る?
無理なら俺がやるけど」
「こおらせる?氷にするのか?できる!」
ワラシがパンに両手の平を当てると、ワラシの背中が薄っすらと陽炎みたいに揺らめく
揺らめきが強くなるほどにパンが“ピシッ”“パシッ”と微かな音を立てていた
『⁉︎⁉︎ワラシの体が放熱板みたいになってんのか⁉︎こりゃスゲ~!』
「うん。ワラシ、もう良さそうだよ」
ロウがパンをひとつ取って感触を確かめた
「んじゃ、これを桶の上で握り潰して~」
桶の中にパン屑が溜まっていく
「ロウ!全部か?我もやる!」
「うん。じゃあお願いしようかな
俺は挽肉を炒めるよ」
クルリと肉叩き組みに振り向いて
「どう?良い感じに出来たかな?アラハム」
「うむ。しかし、これは中々に大変な作業だな
ロウが我ら全員の分ぐらいを1人でやったから簡単かと思ったんだが…」
「ははっ…初めてやったんだから仕方ないさ
何でも初めての事は大変なもんだよ
じゃあ、よっこら…」
ロウが挽肉をした大きな台ごと持ち上げコンロの様な魔道具の前に行き、大鍋を置いてドシャっと半分ぐらいの挽肉を入れる
『ソースが無いから塩を強めで炒めといた方が良いかな、少し味濃い方が喰った感も出るしな
胡椒なんかのスパイスも入れたいけど高価過ぎて大量には使えないしなぁ…
途中で香草とかマメに摘んでくるべきだったな、失敗した…』
「あ、皮剥き終わったジャガイモは鍋に入れたままで適当に潰しておいてくれない?
後で炒めた挽肉と混ぜるときにキレイに潰れるから本当に適当でいいよ」
「「「「「はいよー」」」」」
「と…さてさて炒めますかね」
ロウが左手にデカイ木のヘラ…シャモジみたいなのを持ち
右手でコンロに魔力を流すと“ゴッ”と炎が噴き上がった
「うおっ⁉︎ヤベェ…魔力流し過ぎた…」
それでも手早く木ベラで掻き混ぜながら炒めていく
「炒め~よ~う~ミンチ~塩、胡椒で~♪ってな」
途中途中で適当に塩を入れ、ある程度茶色くなったら指で少し掬い味見する
「ふ~ん…魔獣の肉だからかしらんけど野趣溢れる濃厚な味わいだなぁ
でも、これはこれでアリだな…
肉質的にはハンバーグの方が合うのかもな
ん、ヨシ!
ねえ?ジャガイモは潰してくれた?」
「「「あゝ出来たよ!」」」
「うん。ありがとう
じゃあ、別のデカイ鍋に油をたっぷり入れてー」
「ワフッ?」(ねえ?卵が無いけどいいの?使うんでしょ?)
「ん?無けりゃ無いで構わないよコマちゃん?
どうしても卵は必要って訳じゃ無いからね?」
「ワン⁉︎」(えっ⁉︎そうなの⁉︎)
「うん。卵って揚げたときの発色が良くなるのと、ほんのり甘い風味付けなんだよね
まぁ他には、ほんの少しフワッと感が出る感じなのと贅沢感かな?
卵って元々は高級食材の部類だからね
水の代わりに卵使ってるぞー、なんて贅沢じゃない?」
「わふぅ…」(そうなんだ…)
「ふふっ…だから、いわゆるワイルドに食べたいなら卵が無くても薄い水溶き小麦粉
まぁ薄い天ぷら衣だね?それで充分なんだよね
かき揚げ用よか薄いぐらいので」
「ワフ~」(なるほどね~、揚げ場も数年やってたものね~)
「へへっ…16歳ぐらいの時だったかな?懐かしいね
っとお、今度は魔力控えめで油を熱しなきゃね
さてさて、茹で潰したジャガイモに~挽肉炒めを混ぜ込んで~どっこい!」
掛け声と同時に木ベラを大鍋の底に差し込んでジャガイモをひっくり返す様に混ぜ、炒め挽肉と満遍なく混ざる様にしていく
「あ、ワラシ?そこの桶に半分ぐらい水入れといてくれる?」
「うん!」
「え~っと後は…」
ロウがグルリと亜人種を見渡し
「あ!そこのドワーフさん!手の平見せて?」
いつの間にか亜人種達のリーダー格ポジに納まっているドワーフに声をかける
「ふむ?構わんぞ?なんだ?
あゝそれとな?儂の名はダールヴルだ、出来れば覚えていてくれ」
「なるほど、ダールヴルね?覚えておくよ
それに、ただダールヴルなの?前か後ろにガンとか付かない?」
「んぬ?」
ダールヴルのぶっとい片眉が上がった
「何故解るのだロウ?お主の言う通り儂の名はガン=ダールヴルだ」
「ははっ…やっぱりか。
いやね?ドワーフでダールヴルって名だったらそうなのかな?ってさ
種族に依る名前ってのは意味があるもんだからね」
「ほう?儂は初耳だ」
片眉が上がったままでダールヴルの目がギラリと光る
「ダールヴル。いずれ貴方は史に残る名言を吐くかもしれないよ
例えば《真の勇気は、命を奪う時ではなく救う時に試される》とかね」
「ぬあ⁉︎なんだその言霊は⁉︎」
ダールヴルが己が心臓を鷲掴みするかの様に左胸を掴む
「くっ…ロウ……ヌシは本当に何者なのだ…」
「ん?ただの妖魔さ、まだ小っちゃいけどね?ふふ…
さあ本題だ掌を見せて?」
「む…うむ……」
ダールヴルが呻きながら右手は左胸に充てたまま左手を前に突き出す
「ん~良い掌だねぇ~デカくて肉厚で節くれだってて、固くて重い物を長年使ってきた掌だね」
ロウがまじまじとダールヴルの掌を見る、そして…
「ねえ皆んな?このダールヴルの掌の大きさと肉厚ぐらいでジャガイモと挽肉を混ぜた物を形作ってくれる?
先ずは俺が1個作るね」
とロウが鍋からタネを掬い取り、ペトペトと厚みがある楕円形を作り、小麦粉を振り撒いた台に置く
「これをタネが無くなるまで作ってくれる?」
「「「「「はいよ!」」」」」
「⁉︎⁉︎儂の掌の役目……」
ワラシが桶に張った水に小麦粉をサラサラと振り入れ木杓子で混ぜて溶かす
なるべく粘度が高くならないように、そしてダマにならないように注意しながら少量づつ混ぜていき、タネに薄く纏わり付くぐらいの粘度にした
「さ、これで最初に小麦粉付けて叩き落とす必要も無いからひと手間が減らせる
これって実は卵使った場合でもなんだけどね
卵使う時は、卵をしっかりと溶いて箸で摘めないぐらいにサラサラにしてから小麦粉溶いたらタネに小麦粉付けて無駄に粉っぽくしなくて済むんだよね」
「わっふ~」( )
「さあ水溶き小麦粉にサッと潜らせたらパン粉の中でゴロゴロと遊ばせて~~~~揚げる!」
“シュワーー”っと心地良い音が室内に響く
「これはね、中は完全に火が通ってるから
浮かんでこなくても、何かで表面触ってカリッとした感触になってたら出来上がりなんだ」
ロウが言いながら揚がった物からヒョイヒョイと引き揚げ
用意しておいた容器に適当に放り込んでいく
「さっさと揚がるから油切りも殆ど必要がないしね」
「「「「「凄く良い匂いがするよ!」」」」」
「うん。それは食材と油が揚がって混じり合った匂いだと思うよ?
お腹を鳴らす匂いだよね」
「それよりもワシャら亜人種は大量の油で料理することが無いでねぇ」
毛深い(たぶん)獣人の(たぶん)年寄りが言う、顔全面が長い毛に覆われていて目鼻立ちすら判別出来ない
「そうだね?油って高価だしね?
おっと!まだ熱々だと思うけど、それでも大丈夫ってヒトは食べちゃって構わないから
俺が思うに揚げ物料理は揚げたてが最高に美味しいよ」
「ふむ?では儂から貰っても構わんかね?」
「「「「「どーぞどーぞ」」」」」
「うむ。では遠慮なく…」
“サクッ”
「はふっ………ハフハフハフハフはふはふはふはふハフハフはふはふ……………くはあ…」
あっという間にダールヴルが食べ切り両の手は既に物が無いにも関わらず、そのままの形でクチの前に置いてある
手に持っていた物の痕跡は指先の油テカリだけだ
そして、その顔は少し天井を見上げて恍惚に染まっていた
「どうだった?」
「……………………」
「聞こえてる?ダールヴル?」
「えっ⁉︎はっ⁉︎……これはっ!良い物だああぁぁぁ‼︎」
ダールヴルが野太い声で絶叫した
「ロウよ‼︎こっ!これは何と言う料理なのだ‼︎教えてくれ!いや!いや‼︎作り方は覚えた!油さえ大量に手に入れられれば儂にも作れる!名だ!この黄金色に見合う黄金の味わいの料理の名が知りたいのだ‼︎‼︎」
「落ち着けダールヴル!
まだ他のヒトが食べてないじゃないか!
ダールヴルの反応見て皆んなが食べたがってんだから興奮するなら少し離れろ!ツバが飛ぶ‼︎
それに料理名はコロッケだよ!」
「む…」
ダールヴルが他の亜人種を見回し、少し恥じらうも
「むう…コロッケ……ムフフ…コロッケか……ふふふ…妙な響きだが良い名だ……」
数歩下がってブツブツとニヤけている
ダールヴルが下がると他の亜人種は我先にと争うようにコロッケを掴み頬張り
「「「「「ハフッハフッハフハフ…」」」」」
と大合唱だ
「揚げれ~ば~コロッケだ~よ~キャベツ~はどお~した~~♪ってね
そういやキャベツって見ないな?まだ葉牡丹ぐらいで品種改良が進んでないのかな?
胃に良い野菜だから野生の生物は見つけて食ってるはずなんだがな?
ほら、コマちゃんもワラシもヴァイパーも食べなよ?
あ、ヴァイパーにはクチに放り込んであげるよ」
そして、それぞれに“ハフッハフッハフハフハフハフ…”と合唱に加わる
「ロウ!美味しい‼︎もっと!」
「ワフッワフッ♪」(本当に美味しいね♪揚げたて最強って本当なんだね♪)
「ブルル…ヒヒン♪」
「ふふっ…大丈夫だよ
このタネの量だったら少なくとも200個は出来るから4個ぐらいまでならバルトロメイ達にも行き渡るからね」
「やった!」
「ワフッ♪」
「ヒヒン♪」
「「「「「我らにも‼︎」」」」」
「どーぞー。このコロッケって本来は自然の災害が来そうな時に、無事を祈って作り食べる料理なんだよね
だから神に平癒を祈りながら食べるんだ」
『と適当な由来なんかを言ってみたり』
【なんてデマカセを⁉︎】
『まるっきりデマカセでも無いんだなぁ、コマちゃん
実際に前世じゃ台風コロッケだったじゃないか』
【それって某ch発祥のネットミームだったじゃない⁉︎】
『それでも、あんだけ世間に知れ渡ったんだから出羽守とまでは言えないでしょ?』
【むう……】
「「「「「ほほおぉぉ」」」」」
「なんとありがたい料理なのだ…」
「いや、この金色の見た目だ、さもありなん」
「本当にな…やはりロウは神が遣わした妖魔なのだなぁ」
『あれ?変な方向に向かっちゃった…』
「ま、まぁその辺はどうでもいいよ!
俺はパンの皮を揚げるよ‼︎」
ロウがパンの皮を無雑作に油鍋に放り込んでいき、カリカリになったかな?ってぐらいで油から引き揚げ
そのまま台に重ならないように置き、収納から出した砂糖を握り潰してサラサラにしながら振りかけていく
「さぁこっちは子供たち優先だよ
コロッケは後でも食べられるから先に摘んでみてね」
「「「「「わ~い」」」」」
めいめいに揚げパンを取り
“サクッ”“パリッ”“カリッ”と音を立てると
「「「「「甘~い♪」」」」」
幸せそうな笑顔を向けてきた
「お気に召したかな?」
「「「「「うん♪」」」」」
「ん、良かった
でも食べ過ぎちゃあダメだよ?歯が痛くなっちゃうからね」
「「「「「…うん……」」」」」
「ふふ…あぁ大人も少し摘んでみて大丈夫だよ」
『歯磨きとかなぁ…普及させなきゃなんだろうけど…』
「「「「「良いのかい!」」」」」
「ふふっ…もちろんさ?大人とはいえ砂糖の甘味はほとんど経験が無いでしょ?
囚われてシンドイ思いをしてきたんだから役得だと思って食べれば良いよ
さぁてっとー、バルトロメイの方策はまとまったのかな?
それとも空腹で議論も空転中かな?
コロッケと揚げパン持って覗きに行ってみようかな?
あ、コロッケは熱々の内に収納に仕舞っとかなきゃ
ちゃんと考えてるんならご褒美にしてもいいかもしれないしな」
「ワンワン」(胃袋をつかむんだね)
「へへ…ま、正攻法だよね」
「腹が減ったな….」
「ええ父上、行儀が悪いですが腹が鳴っています」
「「「「「我々もです…」」」」」
「さっきから階下の方から何やら良い匂いがしてくるから余計にな」
「何の匂いなのでしょうか父上?私は嗅いだ記憶が無い様な匂いなのですが…」
「ふむ?それは俺にもわからんが、おおかたロウが珍しい料理なぞ作っているのではないか?」
「父上?あのロウとか名乗る妖魔、妖魔なのにヒトが食べれるモノを作れると?」
「ん?作れるだろう?妖魔とはいえ食事ぐらいするのではないのか?
お前たちは一緒に旅したのだろう、どうだったのだ?」
「はっ!ロウは、あの凄まじいチカラや魔力を考えなければ《普通のヒトの大人》の様でありました」
「「「「「でしたねぇ…」」」」」
兵隊長が代表して話し、兵達が思い出して遠い目をした
「えっ?そこは《普通のヒトの子》ではないのか?」
バルトロメイとバヴェルが、なに言ってんだこいつら。みたいな目で見る
「はあ…いや、しかしロウの見た目は確かに子供なのですが何と言えばいいのか…
えー、言動や振る舞いが子供らしく無いと言うか
いえ、むしろ我々よりも長く生きている者という印象です」
「あの強大な魔力などに惑わされがちなんですけれど…」
「「「「「うん…」」」」」
「なるほど…まぁ確かに妖魔であれば見た目通りなはずは無い…か?
ひょっとしたら五英雄時代から生きているのかもしれぬな?」
「まさか⁉︎父上?そんなことが有り得るのですか?」
「有り得なくはないだろう、現実にエルフなど長寿の種族などもいるのだぞ?
それが我々が普通に呼ぶところの亜人種ではなく、神魔の類いであろう妖魔なのだ
只ヒト種である我々の寿命なぞ、有って無きが如しかもしれぬ種族の可能性もある」
「そっ⁉︎そんな存在……だから私は人間種以外が苦手なんだ……
そんな理解が及ばない存在なんてどうすればいいんだ…
全てを排除しようとは思いもしないけど、側にいたら不安でしかない…」
「バヴェル…お前……なるほどな、街政官どもが暴走したのはそれか…
お前は街政官どもの前で今言った事を溢したな?
はあ…」
バルトロメイが思わず深いため息を吐いた
「いや、俺の教育が甘かったのか…
なぁバヴェル?ひとつ大事な心構えを教えておく」
「…なんでしょうか?」
バヴェルが虚な目をバルトロメイに向ける
「為政者とはな、不安や不満を軽々しくクチにしてはならぬのだ
言葉として出せば誰かに聞かれる、聞いた者が全く自分と関係しない者ならば聞き流されるであろうが
親しく側に侍る者ならば、なんとかその不安や不満を解消しようと思うものだ
過激な手段を用いようともな?」
「しかし私は父上の様に強くありません…心もです…
黙って自分独りで抱え込んでいくなんて無理です…」
バヴェルが怨みがましい目を向けながらも俯く
「まぁそうだな?鬱屈した心は何とか軽くしたいと思うのは俺にも理解出来る
いや、俺でも独りで抱え込むのは無理だろうな」
「父上?」
バヴェルの顔には、何が言いたい?と書いてある
「ふむ、だから我慢するし……」
「はーい!そこまでだバルトロメイさん‼︎」
商談室の扉を勢いよく開いて大声で言いながらロウが入ってきた
「「「「「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」」」」」
そして座っていたバルトロメイ達が一瞬飛び上がり、一斉に振り向いた
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