従順な俺を壊して

第三章 出会い

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俺は携帯をぽっけにしまい、ただ前を向いて自転車を押して歩いた。
今日に限ってかばんの中には店長さんからの差し入れが入っていた。

それが入っていなければ濡れることもいとわずに自転車に乗って帰っていたのだが、どうにも忍びなく出来なかった。

ただ、俺は後ろを振り返らないということだけに集中していた。
誰かが歩いているような、そんな気がしてならない。
思い込みかもしれないが、それを確認する勇気は俺にはなかった。

「おい、亀。」

どれくらい経っただろうか。
道路側から声をかけられそちらに目を向ければ、バイクに跨った京介がそこにはいた。

歩いた距離を考えれば数分なのだろうが、変に緊張している俺はもっと長く感じられ疲れ果てていた。
しかし、直ぐに京介からバイクの免許を持っているという話を聞いたことがないことに考えが至る。

「あれ、免許持ってたっけ？」

「持ってねぇよ。兄貴に教えて貰って乗れるだけ。早くしたほうがいいと思ってバイクも兄貴から拝借してきたわ。」

「捕まったらやばいじゃん。」

「だからバレねぇように早く帰るぞ。この先のコンビニにお前チャリ繋いでこい。俺が後ろ乗せて帰ってやるから。」

「でも荷物濡れると困るんだけど。」

「カッパ持ってきてやったから。姿は見えねぇけど、ここからさっさと退散して損はねぇ。」

俺はそれを承諾し、京介はバイクのエンジンを切って歩道を押して歩き、コンビニまで俺に合わせて付いてきてくれる。
その先のコンビニのポールに自転車を繋げば、京介が持ってきてくれたカッパを被って大型バイクの後ろに跨り乗る。

フルフェイスのヘルメットを持ってきてくれていたため、顔を隠せるのは好都合だった。
先ほどのコンビニから家まではさすがバイクなだけあって10分程度で俺の家へたどり着く。