従順な俺を壊して

川崎葵

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第一章 鷹山高校

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緩やかに上っている坂の両脇には、これでもかという程命一杯花を咲かせている桜が頂上まで等間隔に咲いていた。
風に吹かれればそれは脆くも枝から離れ、風に乗せて舞い散る。

その坂を、学生服を身にまとった男子生徒が桜になど目も留めずに登っていた。
一人で上っているものもいれば、互いの肩を小突いたりしてじゃれあいながら上っているグループもある。

俺のように門の入り口に立ち止まって桜を眺めているものは、誰一人としていなかった。
むしろ立ち止まっている俺を邪魔者のように、横目に見ながら追い越していくものがいるぐらいだ。

この坂を上っている者は皆、同じ目的で上を目指している。
それは、この坂の上に建っている鷹山たかやま高校の入学式。
俺もその式の出席者だ。

今この坂を上っている者は全員同級生である。
同じ中学上がりのものは必然的に集っているようだが、俺は同じ出身のものがおらず一人だった。
それに寂しいと感じているわけではないが、新しい環境に対するワクワクと不安で少し足取りが重いのは事実だ。

やっとの思いで立ち止まっていた校門をくぐり、桜が舞い散る坂を上り始める。
天気は晴天に恵まれ、暖かい日差しとまだ少し冷たい風が吹き、心地よい天候だ。
チラチラと降ってくる花びらは、これから新しい生活を始める俺達を祝福してくれているかのようだった。


坂を上りきればその先には大きな体育館があり、左手には校舎が立ち並んでいた。
2階の教室の窓から顔を覗かせている人がチラホラおり、それが同級生なのか先輩なのかは顔見知りのいない俺には分からなかった。

正面玄関の前にはクラス表が貼り出されており、自分の名前を探している同級生たちでごった返している。
俺はその人集りの後ろに並びながら、自分の名前を見つけて校舎に入っていく流れに紛れながらクラス表の前へとやってきた。

全部で6クラスもあるようで、俺は自分の名前を探すのに苦戦する。
3箇所にそれぞれ同じものが掲載されていたが、その量から自分の名前を探すのに皆苦労しているようで、人がごった返していたのも頷ける。

やっとの思いで自分の名前を見つけ、貼り紙をしてある案内に従って1-Cクラスを目指す。
教室へと辿りつけば扉には座席表が貼られており、三十数名にまで絞られたその表は先ほどのものとは比べ物にならないほど見やすい。

直ぐに自分の名前を見つけ、その表通りに席に着く。
既に半分ほど揃っており、友達同士なのか今仲良くなったのか席の前後で話をしているものがチラホラいたが、大半が自分の席でただボーっとして担任が来るのを待っていた。
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