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その17
しおりを挟む「…………ん」
息継ぎをするのとは違った、甘い声が漏れはじめたのをエティは気づいていなかった。僅かに眉が寄っているのは快楽に溺れないように足掻いているためなのか、エティ本人にもわかっていない。
クリフォードからのキスはとても長かった。激しさと優しさを交互に何度も味わって、エティの脳と身体は徐々に溶かされ、気づけばエティからもしっかり舌を絡めていた。
不意に離れた熱い唇を、エティは名残惜しそうに見つめて息を漏らした。
「……もっと欲しいか?」
「わ、私……!!」
色気たっぷりのクリフォードの言葉で、我に返ったエティの顔には一気に熱が溜まった。エティは自分で自分が信じられないというように動揺して視線が彷徨った。
「気持ち良かったんだろう?もっと感じさせてやる」
「ふわっ……!」
クリフォードは繋いだままの手に更に力を込めて指を絡ませると、エティの耳にかぶりついた。
「は、……あっ、んっ…」
我慢しようとしても、塞がれていない唇から艶っぽい声が出てしまう。耳を攻められると、力の抜けるようなキスとは違って身体がビクビクと震え、エティはクリフォードの指を強く握り返した。
攻められる場所が耳から首筋に変わってもエティの身体は震え続け、更に顔は上気し、瞳は潤んで次第に女の部分を色濃く表した。
「エティ、可愛いな」
うっとりとした表情でクリフォードはエティの髪を撫でた。
どうしてそんな瞳で私を見るの……?
そっか、私って小ちゃいしきっと小動物を可愛がるような感じ?
そんな風に考えながらクリフォードの青い双眸を見ていると、その瞳がスッと細まり額に柔らかく唇があてられた。その唇はエティの瞼、頬と辿ると先程までこれでもかと触れていた唇に降りてきた。エティはクリフォードの舌を誘うように自ら唇に隙間を作ってそれを受けた。
ピチャピチャと水音を立てながら2人がキスを続ける中、エティの髪を撫でていたクリフォードの手はエティの身体を探り始めた。「もっと感じさせてやる」その言葉通り、触られた箇所が熱を持っていった。
「……あっ……はあっ」
服を脱がされ素肌に這う熱い舌を感じて、エティは身を捩った。溜まっていく快感を逃す方法がわからず身体に力が入ると、クリフォードが安心させるように唇にキスをしてきた。
「怖がらなくていい。紫銀の女が来るから最後まではしない。だから身体の力を抜いて素直に感じろ」
怖がってはいないけど……。
紫銀の女を警戒しているからクリフォードは挿れないだろうとエティは最初から思っていた。最後に現れた紫銀の女は手の届く位置まで来たらしい。正体がわかっていないのに紫銀の女が現れる状況を作るほどクリフォードも馬鹿ではないはずだ。
挿れられないなら少しくらい、いいか、とエティは身を許した。何よりクリフォードから与えられる快楽から逃げられなかった。
「エティ、綺麗だ……」
何も身に纏っていないエティを見下ろして、クリフォードは欲情を隠さず呟いた。前回同様、身体中の肌を堪能したクリフォードの手はエティの濡れそぼろった秘所を探った。
「あっ…ンンッ…!」
快楽を素直に受けた結果、驚くぐらいエティは濡れていた。すんなり受け入れたクリフォードの長い指は丁寧に膣壁を擦り、エティを更に昂らせた。
味わった事のない感覚が襲い、エティは身体を震わせながら横にあったクリフォードの逞しい腕に思わず縋り付いた。
「イきそうか?」
「はっ、やあっ……なんか、へん……」
「ああ、もっと気持ち良くなれ」
「!!……っあああんっ!!!」
大きく身体を仰け反らしてエティは達した。頭の中が真っ白になって一瞬息をするのを忘れていた。全身に行き渡った痺れはすぐに引かず、激しく脈打った心臓が落ち着くのと同じくらい身体を支配した。エティの息が落ち着いたのを見計らってクリフォードが入れたままだった指をそっと抜いた。
「ンッ……」
思わず声が漏れた。
梳くように髪を撫でられ、エティはゆっくり瞳を開けた。目に入ったのはクリフォードの綺麗な顔立ちで、エティはハッと我に返って顔を背けた。
「エティ?」
だから何でそんな切ない表情で見つめてくるんだ!確かに私だけが気持ち良かったけども!挿れられないから満足してないでしょうけども!
……もしかして私に娼館の女性と同じようなテクニックを求めているんじゃないでしょうね……。
エティはクルッと顔を戻すと小さな声でクリフォードに訴えた。
「わ、私に期待しても……やり方わからないから!その、……えっと……」
「何を言ってるんだ?……あ、ああ!そういう行為をエティにさせようなんてこれっぽっちも考えてない」
後半笑い声で返事をされ、エティは自分の見当違いな発言に顔を赤らめた。
クリフォードはクスクス笑いながらエティを抱き締めると「こうしているだけで十分気持ちいい」と呟いた。
クリフォードの指で絶頂を味わって、感じても達する事が出来ないクリフォードは、いつも生殺し状態だったんだろうな、とエティは実感した。
ベッドはちゃんと2つあるのに、クリフォードはエティを抱えながら狭そうにベットに横になっている。このまま眠りにつく気だろうか、とエティが考えているとクリフォードがおもむろに訊ねてきた。
「エティ、胸が大きくなってるが、どうした?」
「へ?胸?どうしたって、自分じゃ何ともできないわよ。……どうしてわかるの?」
エティが半眼で見上げるとクリフォードは当然と言わんばかりに笑った。
「さっきたっぷり触ったからな。因みに身体のラインも少し変わった」
「えっ、私太った!?」
「いや、そうじゃなくて。こう、メリハリがついたというか、女らしくなった……」
「いやらしい!離してよ!隣のベッドに行って!」
まるで恋人が喧嘩しているようだがまだ違う。
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