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クラーケン
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今日は海に行く日。今日はちゃんと早めに起きて、出発することができた。
「うーん、良い天気だなぁ……魔物いるかな?」
「どうだろうな、こんなに天気が良いとあまり出てこないかもしれないな」
「そっか…あっ!うわぁ、すごい!」
ちょうど街のある場所の端の方まで来ると、辺り一面がキラキラと太陽の光を受けて光る綺麗な海が見えた。アルが抱き上げてくれると、更に向こうまで見える。
海の方へ緩い坂を下りながら進んでいけば、真っ白な砂浜もあるのが見えた。
アルに降ろしてもらって、僕は走り出した。
「アル、早く行こう!」
「そんなに急いだら転ぶぞ?ほら」
「あ……うん、ありがとう」
そうだった、危ない…すっかり自分が転んだ弾みでなぜかこの世界に来たことを忘れていた。
街に来る前の森を歩いていた時はちゃんと注意しながら歩いていたのに、海を見たせいで何も考えずに坂を駆け下りそうになった。なんか子供みたいで恥ずかしい…
アルが手を出してくれたので、ぎゅっと握って恋人つなぎにする。アルの大きな手にスリスリと頬擦りをすると頭にキスが降りてくる。
今日の天気は晴天。気温は少し高めだけど、海から来る潮風でちょうどいい。海に近づくにつれ匂いが濃くなってワクワクする。
「綺麗…」
「良かった。もう少ししたらここら辺を見て魔物がいなかったら1度帰って、夕日の出てる時間にもう一度来よう」
「うん、賛成!」
きっと夕日に照らされる海もとても綺麗なんだろう。アルと波打ち際を歩きながら魔物を探すけれど、全く魔物の気配はない。
この世界には普通に魔物がいるからか、暖かいのに海で泳いでいる人はいない。僕たちと同じような観光客らしき人と、魚を釣っている人が数人いるだけだ。
「魔物、全然いないね?」
「やっぱりこんなに天気がいいと難しいかもしれないな」
「マリーさんに頼まれた依頼出来ないね……ねぇアル、靴脱いで少しだけ入っちゃだめ?」
「…少しだけな」
透明度の高いキラキラしている海を見ていると、なんだか入りたくなってきた。
魔物がいないならちょっとくらいいいよね。靴と靴下を脱いで手に持って、海水に足をつける。
「う、ちょっと冷たい…」
「くくっ」
笑ってきたアルをじとっと睨みつけて足で海水をかけてやる。
「うぉっ、やったな?」
アルがニヤッと笑って、僕に急にガバッと抱きついてきて、抱きついたまま波打ち際に倒れ込む。
「うわぁっ!アル、びしょびしょだよ!」
「ソラが先にやってきたんだろ?ほら、魔物が来たら大変だから」
手を差し出してくるアルも僕ほどではないけれど濡れている。ダリさんに作ってもらったパーカーまでぐっしょりだ…
「むぅ…」
「ソラ、こっち来い」
アルがまた僕を抱き上げて2人まとめて生活魔法で服を綺麗にして乾かす。
生活魔法があることを忘れていた。こんなことにも使えるのか…やっぱり魔法って便利だな。
「よし、昼食べに行くか」
「うん」
一度町の方に戻ってきてご飯も食べて、アルも知らない小さなお店を2人で探したり、ラスロにいるニコラスさん、アリスさん、ダリさんにお土産を買ったりしているうちに日が暮れてきた。
「そろそろ海もどる?」
「ああ」
海に戻ってくるとさっきとは全然違う景色で、また違う綺麗さがあった。さっきまでいた人達も全く居ない。
今度こそ魔物いるのかなぁ?居たらそれは嫌だけど…
「ソラ、あれ」
「なに?」
「あそこにいる、クラーケンだ」
「わ…」
遠くにいたのはタコみたいな魔物。かなり離れているのに建物なんかよりずっと大きいように見える。
「ちょっと…大きすぎない?」
「ああ、あんなにデカイのは俺も初めて見たな…」
アルもその大きさにびっくりしているみたいだ。
2人でこっそりとクラーケンに近づいてみると、更にその大きな体が見えてくる。
突然、クラーケンがこっちを向く。
「ひ…」
「っ!気付かれたか?」
気のせいであって欲しいと思うけれど、大きな影は少しづつこちらにやってくる。
「ソラ、後ろにいろ」
「うん…」
アルが僕を後ろに庇うようにして、ナイフを構える。吸盤の付いた長い足が、海から僕たちに向かって伸ばされ、アルの風魔法によって素早く切り落とされる。
その瞬間、ギィィィィィっという高い鳴き声のようなものが辺りに響き渡り、複数の足がこっちに向かってきた。
「あっ!」
「くそっ!」
1本の足が、アルの攻撃をすり抜けて僕の方へ向かってくる。
しかしその足は僕に届く前にアルのナイフに刺され、引っ込んで行く。
アルが魔物に飛びついてナイフと風魔法でどんどん足を切り裂いていき、しばらくして全ての足を失ったクラーケンにトドメを刺す。
「ふぅ」
「アル!大丈夫だった…?」
「ああ…ソラも大丈夫だったか?」
「うん、助けてくれてありがとう」
クラーケンを確認してマジックバックに入れたアルに抱きついて、濡れているアルの服を魔法で乾かす。
あんなに大きかったのに簡単にマジックバックに入っちゃうんだ…
「一応魔物も討伐したしマリーさんの所に報告に行こう」
「疲れてない?本当に大丈夫?」
「大丈夫だ。じゃあ、宿に帰ったら癒してくれ」
「うぅ…わかった……」
ギルドに向かって、ギルド嬢にマリーさんを呼んでもらう。
「おかえりなさい、海でクラーケンと戦っている人がいるという報告がついさっきあったのだけど…アルさんのことかしら?」
「ああ、討伐してきた」
「かなり大きなクラーケンだと聞いていたのだけど……アルさんだものね、まぁいいわ。怪我もないようね、今日は疲れたでしょう?素材は持って帰ってきたのかしら?」
「マジックバックに入れてきた。今出すか?」
「いいえ、マジックバックい入っているなら明日で大丈夫よ。明日には帰るのでしょう?好きな時間に寄ってちょうだい」
「ああ」
マリーさんが気を使って早く帰れるようにしてくれたので、2人で宿に帰ってくると、アルがベッドに押し倒してきてくんくんと犬のように匂いを嗅いでくる。
「ん、くすぐったいよ…」
「癒してくれるんだろ……?」
「そうだけど…海行ったからベタベタしてるし…」
魔法で僕の体を綺麗にしながら、まだ首筋に顔を埋めているアルの頭をよしよしと撫でておく。
「ソラ…」
アルの手がシャツの中に侵入してくるけれど、今日は僕を守るためにすごく頑張ってくれたから良しとする。今日は僕がアルを甘やかしてあげることにしよう。
「うーん、良い天気だなぁ……魔物いるかな?」
「どうだろうな、こんなに天気が良いとあまり出てこないかもしれないな」
「そっか…あっ!うわぁ、すごい!」
ちょうど街のある場所の端の方まで来ると、辺り一面がキラキラと太陽の光を受けて光る綺麗な海が見えた。アルが抱き上げてくれると、更に向こうまで見える。
海の方へ緩い坂を下りながら進んでいけば、真っ白な砂浜もあるのが見えた。
アルに降ろしてもらって、僕は走り出した。
「アル、早く行こう!」
「そんなに急いだら転ぶぞ?ほら」
「あ……うん、ありがとう」
そうだった、危ない…すっかり自分が転んだ弾みでなぜかこの世界に来たことを忘れていた。
街に来る前の森を歩いていた時はちゃんと注意しながら歩いていたのに、海を見たせいで何も考えずに坂を駆け下りそうになった。なんか子供みたいで恥ずかしい…
アルが手を出してくれたので、ぎゅっと握って恋人つなぎにする。アルの大きな手にスリスリと頬擦りをすると頭にキスが降りてくる。
今日の天気は晴天。気温は少し高めだけど、海から来る潮風でちょうどいい。海に近づくにつれ匂いが濃くなってワクワクする。
「綺麗…」
「良かった。もう少ししたらここら辺を見て魔物がいなかったら1度帰って、夕日の出てる時間にもう一度来よう」
「うん、賛成!」
きっと夕日に照らされる海もとても綺麗なんだろう。アルと波打ち際を歩きながら魔物を探すけれど、全く魔物の気配はない。
この世界には普通に魔物がいるからか、暖かいのに海で泳いでいる人はいない。僕たちと同じような観光客らしき人と、魚を釣っている人が数人いるだけだ。
「魔物、全然いないね?」
「やっぱりこんなに天気がいいと難しいかもしれないな」
「マリーさんに頼まれた依頼出来ないね……ねぇアル、靴脱いで少しだけ入っちゃだめ?」
「…少しだけな」
透明度の高いキラキラしている海を見ていると、なんだか入りたくなってきた。
魔物がいないならちょっとくらいいいよね。靴と靴下を脱いで手に持って、海水に足をつける。
「う、ちょっと冷たい…」
「くくっ」
笑ってきたアルをじとっと睨みつけて足で海水をかけてやる。
「うぉっ、やったな?」
アルがニヤッと笑って、僕に急にガバッと抱きついてきて、抱きついたまま波打ち際に倒れ込む。
「うわぁっ!アル、びしょびしょだよ!」
「ソラが先にやってきたんだろ?ほら、魔物が来たら大変だから」
手を差し出してくるアルも僕ほどではないけれど濡れている。ダリさんに作ってもらったパーカーまでぐっしょりだ…
「むぅ…」
「ソラ、こっち来い」
アルがまた僕を抱き上げて2人まとめて生活魔法で服を綺麗にして乾かす。
生活魔法があることを忘れていた。こんなことにも使えるのか…やっぱり魔法って便利だな。
「よし、昼食べに行くか」
「うん」
一度町の方に戻ってきてご飯も食べて、アルも知らない小さなお店を2人で探したり、ラスロにいるニコラスさん、アリスさん、ダリさんにお土産を買ったりしているうちに日が暮れてきた。
「そろそろ海もどる?」
「ああ」
海に戻ってくるとさっきとは全然違う景色で、また違う綺麗さがあった。さっきまでいた人達も全く居ない。
今度こそ魔物いるのかなぁ?居たらそれは嫌だけど…
「ソラ、あれ」
「なに?」
「あそこにいる、クラーケンだ」
「わ…」
遠くにいたのはタコみたいな魔物。かなり離れているのに建物なんかよりずっと大きいように見える。
「ちょっと…大きすぎない?」
「ああ、あんなにデカイのは俺も初めて見たな…」
アルもその大きさにびっくりしているみたいだ。
2人でこっそりとクラーケンに近づいてみると、更にその大きな体が見えてくる。
突然、クラーケンがこっちを向く。
「ひ…」
「っ!気付かれたか?」
気のせいであって欲しいと思うけれど、大きな影は少しづつこちらにやってくる。
「ソラ、後ろにいろ」
「うん…」
アルが僕を後ろに庇うようにして、ナイフを構える。吸盤の付いた長い足が、海から僕たちに向かって伸ばされ、アルの風魔法によって素早く切り落とされる。
その瞬間、ギィィィィィっという高い鳴き声のようなものが辺りに響き渡り、複数の足がこっちに向かってきた。
「あっ!」
「くそっ!」
1本の足が、アルの攻撃をすり抜けて僕の方へ向かってくる。
しかしその足は僕に届く前にアルのナイフに刺され、引っ込んで行く。
アルが魔物に飛びついてナイフと風魔法でどんどん足を切り裂いていき、しばらくして全ての足を失ったクラーケンにトドメを刺す。
「ふぅ」
「アル!大丈夫だった…?」
「ああ…ソラも大丈夫だったか?」
「うん、助けてくれてありがとう」
クラーケンを確認してマジックバックに入れたアルに抱きついて、濡れているアルの服を魔法で乾かす。
あんなに大きかったのに簡単にマジックバックに入っちゃうんだ…
「一応魔物も討伐したしマリーさんの所に報告に行こう」
「疲れてない?本当に大丈夫?」
「大丈夫だ。じゃあ、宿に帰ったら癒してくれ」
「うぅ…わかった……」
ギルドに向かって、ギルド嬢にマリーさんを呼んでもらう。
「おかえりなさい、海でクラーケンと戦っている人がいるという報告がついさっきあったのだけど…アルさんのことかしら?」
「ああ、討伐してきた」
「かなり大きなクラーケンだと聞いていたのだけど……アルさんだものね、まぁいいわ。怪我もないようね、今日は疲れたでしょう?素材は持って帰ってきたのかしら?」
「マジックバックに入れてきた。今出すか?」
「いいえ、マジックバックい入っているなら明日で大丈夫よ。明日には帰るのでしょう?好きな時間に寄ってちょうだい」
「ああ」
マリーさんが気を使って早く帰れるようにしてくれたので、2人で宿に帰ってくると、アルがベッドに押し倒してきてくんくんと犬のように匂いを嗅いでくる。
「ん、くすぐったいよ…」
「癒してくれるんだろ……?」
「そうだけど…海行ったからベタベタしてるし…」
魔法で僕の体を綺麗にしながら、まだ首筋に顔を埋めているアルの頭をよしよしと撫でておく。
「ソラ…」
アルの手がシャツの中に侵入してくるけれど、今日は僕を守るためにすごく頑張ってくれたから良しとする。今日は僕がアルを甘やかしてあげることにしよう。
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