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アルの過去

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それから森を1日歩き続けて、やっと街に着いた。入口の門に近づくと、門番のような人が居て街にはいる人のチェックをしていた。


「2人とも冒険者か?」
「はい、これお願いします」


僕はアリスさんに事前に作ってもらっていた仮の冒険者カードを見せて街に入る。
Sランク冒険者のアルのカードは色が金色で特別仕様だから門番さんがびっくりしていたのが少し面白かった。


「まずはどこに行くの?」
「宿探しだな。まぁ、俺の知り合いがやっている宿が空いてたら、そこに泊まろうと思ってる」
「知り合いの人?」
「俺が昔よく泊まっていた宿で、安くて綺麗ないい宿なんだ」
「へー、空いてるといいね!」
「ああ、宿を決めてまだ時間があったらここら辺の店でも回るか」
「じゃあ早く行こう!」


アルに案内されて着いたのは小さな宿。恐らく二階建てで、外観は古そうだけれど綺麗なところだった。


「いらっしゃいませ」


扉を開けたら正面に受付があり、若い女の人が1人いた。


「2人部屋1つ、空いてるか?」
「ええ、空いていますよ」
「そこを3日借りたいんだが、いいか?」
「えーと…はい、大丈夫です」


ちょうどアルが部屋を借りた時、上からふくよかな女性が降りてきて、僕たちに挨拶をする。


「お客さん、いらっしゃい!……あれ?アルじゃないか」
「久しぶりだな」


彼女がアルの知り合いのようだ。


「え?ヒルダさん、お知り合いですか?」
「アルは昔からよく来てくれている冒険者でね…あれ、あんた今日は一人じゃないのかい?」
「ああ、紹介する。番のソラだ」
「初めまして!」
「番!びっくりだ。あたしはこの宿をやってるヒルダだ」
「ヒルダさん、よろしくお願いします」
「可愛いねぇ!アルが番を作るなんて…」
「ソラは運命なんだ」
「運命!?ソラくんは人間じゃないのかい?」
「えと、人間です…」
「アル、大切にしなよ。いつ捨てられるか分からないからね!」
「冗談はやめてくれ。そんなこと言われなくても分かってる」


ヒルダさんはなんだか豪快な人で、なんだかアルのお母さんみたいだ。ニコラスさんがアルの第2のお父さんで、ヒルダさんがアルの第2のお母さんみたいな感じ?
そうだ、アルの家族のことまだ聞いていなかった。今日の夜聞いてみようかな。でも…アルにばっかり聞いて僕の話をしないのもどうなんだろう…


「ソラ?部屋に行くぞ」
「え?あっ、うん!」


考え込んでいたら、いつの間にか話が終わっていてアルは部屋に向かっていた。
階段を登ってすぐの部屋。中は外観と同じく、古く見えるけれど、ちゃんと綺麗にされている。


「よし、店でも見て回ってくるか」
「うんっ!早く行こう!」


アルの手を引っ張って、ヒルダさんと受付のお姉さんに挨拶をして外に出る。


「何が見たい?」
「んー…食べ物見に行ってみよう!」
「あっちのほうだな、この街なら珍しい物も売ってるかもな」


わくわくしながら、ラスロの街と少し似たような、お店が並ぶ通りにやってきた。


「いらっしゃい!ん?あんた達、観光で来たのか?」
「はい、この街の食べ物が見たくて」
「珍しいなぁ、観光客は多いがだいたいはあっちの通りにある飲食店なんかに行くんだがなぁ」
「へぇー、あっちの方も後で行ってみますね。ありがとうございます!」


親切なおじさんが売っていたのは、ラスロでは見ることの出来なかった海産物。やはり鱗や貝の色がとんでもないが、どれも新鮮なようだ。
やっぱり魔法があっても新鮮な状態で海のものを遠くまで運ぶのは難しいみたい。


「何か欲しいものはあったか?」
「え、欲しいものって?」
「食べたいなら買ってやるから」
「でも…」
「俺たちは番なんだから遠慮することは無い。むしろどんどん言ってくれ」
「アルが稼いだお金だし…」
「関係ない。ほら。」
「なら…あの魚、食べてみたいかな」
「他には?」
「うーん、じゃあ…」


そんなこんなで結局気になった物を全部買ってもらった。途中から、もう要らないから!って言ったんだけど、俺が食べるから良いって言って色々選ばせてくれた。
それからお店を軽く見て回って、気になった所は股明日ってことになった。ヒルダさんの宿に帰ってきて、宿の1階にある小さな食堂のようなところで夜ご飯をいただく。


「うわぁ…これ美味しい…!」 
「そうかい?嬉しいねぇ」


僕がご飯を褒めるとヒルダさんが喜んでくれた。ヒルダさんがご飯も作っているらしい。
この街の海産物を使った料理で、ふわふわの白身魚と魚介のスープが最高だった。
アルと部屋に戻ってきて寝る準備をする。
そうだ、あの事聞こうかな…


「アル、アルのご両親って…どんな人?」


なんだか変な聞き方になってしまった。


「俺の親か…2人とももう死んでるんだ。俺が成人する前に、母さんは病気、父さんは運命の番を失ったことで自殺した」


アルのご両親も運命の番だったんだ。悲しいことを聞いてしまった。あまり言いたくなかっただろう。


「…ごめんね」
「いや、いいんだ。ずっと冒険者として1人で忙しくしていたら寂しいなんて思う暇もなかったからな。それに今はソラがいる」
「そっか。あの…僕の話も、聞いてくれる?」


アルにばっかり聞いていちゃいけない。僕は今アルの優しさに甘えているだけだ。ちゃんと言わなくちゃ。


「もちろん」
「あの…僕ね、信じて貰えないかもだけど…ここじゃない世界から来たんだ…」
「ここじゃない世界?」
「うーんと……地球って言って、魔法が使えなくて魔物もいないそんな感じの…世界…かな?説明が難しいな…」
「異世界から人が来るという話は聞いたことがある。でもそれはおとぎ話のようなもので…本当にあるとは思って無かったな…」
「信じてくれるの?」
「ああ、ソラは嘘はつかないだろ?」
「うん…良かった」
「なにがだ?」
「もっと、信じて貰えなくて変なやつだと思われると思ってたから」
「いや、それより…ソラは帰りたいとか、思ってるのか?」
「今のところは無いかな…あまり…楽しくなかったんだ。あっちの世界が。いつかは寂しいって感じるだろうけどね」
「そうか」
「ふふっ、スッキリした!もう寝ようか、おやすみ」
「おやすみ」


そう言って僕のおでこにアルがキスをして、抱きしめられて寝た。ずっと言えてなくてモヤモヤしていたから、スッキリした僕は気持ちよく寝ることが出来た。






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