139 / 139
第20層のドラゴンを倒そう
第1話 確認を取ろう
しおりを挟む
パワーレベリングを終えることに決めたが、それは僕の決断でパーティメンバーの了承を得たわけではない。赤の万剣との契約だっていきなり打ち切るというわけにはいかない。
日本ではゴールデンウィークに入った5月1日、その日のパワーレベリングを終えた僕はアーリアへの帰り道でパワーレベリングの終了を提案してみた。
「確かに頃合いじゃねぇかなぁ」
「あたしはむしろいつ終わらせるんだって思ってたよ。ロージアたちもレベル40になったし、元々レベル40までのはずじゃなかったっけ?」
言われてみればそんな予定だったような気もする。
「ヘイツさんから見て、どうですかね? 僕らで30層のドラゴンに勝てると思います?」
「真っ当に育ったヤツなら余裕だろうが、パワーレベリングでのレベル40だからな。それに俺たちゃお前さんらが戦うところを一度も見たことが無いときたもんだ。後衛2人がド素人なことを考えると、このまますぐにってのはオススメできないな」
ニーナちゃんとロージアさんはパワーレベリングの間、それぞれの魔法を繰り返して使うことで熟練度を上げてきた。それでも期間が短かったこともあり、レベルの割りにスキルが熟達しているとは言えない。
レベルによるステータスの上昇で威力は底上げされているが、スキルそのものへの理解が足りなかったり、使い慣れていなかったりするのだ。
「16層辺りから30層まで自力で上がっていくのがいいんじゃねぇかな。16層なら今の前衛で簡単に蹴散らせるだろうし、それだけ時間をかければ後衛も場慣れするだろう」
「ちなみに30層に到達できたからと言っていきなりドラゴンと戦うのは勧められないよ。竜種は1層か2層先の魔物だと思ってかかったほうがいいからね。29層で十分に慣れてから30層というのが安全だよ」
ヤクトルさんの注釈が入る。僕らのパーティに専門の斥候役はいないので、僕はパワーレベリングの間、ずっと彼の動きを目で追っていた。僕がいきなり本職の斥候のようにできるとは思えないが、少なくとも全くの無知ではない。
「少なくともレベルが足りないということはない、ということですね」
「それを言うとレベル30ちょっとあれば、30層まで行けないこともないからな。レベル35もあれば30層でレベル上げができる。やるヤツは少ないがな」
「大抵は29層で十分にレベルを上げて30層はスルーするからね」
それはつまりそれだけドラゴンという相手が厄介だ、ということだ。
「つまり僕らに足りないものは経験だ、ということですね」
「話が戻るが、レベルが足りないなんてことは無いな。経験は、積むしかない」
「分かりました。パワーレベリングの依頼は今回までということでいいでしょうか?」
「元々レベル40くらいまでってことだったし、十分に稼がせてもらったからな。俺は異論無いが、皆はどうだ?」
「異議なーし」
「俺も大丈夫だ」
「それで構わねぇよ」
特に異論はないようだ。
「では、そういうことでいいですか?」
「ああ」
ヘイツさんが頷く。僕は感謝の意味を込めて頭を下げそうになったが、アーリアの文化ではこういうときは握手を交わすものだ。右手を差し出すと、ヘイツさんが強く握り返した。
「長い間ありがとうございました」
「こちらこそ毎度ありだ」
こうして僕らのパワーレベリングは終わり、赤の万剣は冒険者から引退した。
日本ではゴールデンウィークに入った5月1日、その日のパワーレベリングを終えた僕はアーリアへの帰り道でパワーレベリングの終了を提案してみた。
「確かに頃合いじゃねぇかなぁ」
「あたしはむしろいつ終わらせるんだって思ってたよ。ロージアたちもレベル40になったし、元々レベル40までのはずじゃなかったっけ?」
言われてみればそんな予定だったような気もする。
「ヘイツさんから見て、どうですかね? 僕らで30層のドラゴンに勝てると思います?」
「真っ当に育ったヤツなら余裕だろうが、パワーレベリングでのレベル40だからな。それに俺たちゃお前さんらが戦うところを一度も見たことが無いときたもんだ。後衛2人がド素人なことを考えると、このまますぐにってのはオススメできないな」
ニーナちゃんとロージアさんはパワーレベリングの間、それぞれの魔法を繰り返して使うことで熟練度を上げてきた。それでも期間が短かったこともあり、レベルの割りにスキルが熟達しているとは言えない。
レベルによるステータスの上昇で威力は底上げされているが、スキルそのものへの理解が足りなかったり、使い慣れていなかったりするのだ。
「16層辺りから30層まで自力で上がっていくのがいいんじゃねぇかな。16層なら今の前衛で簡単に蹴散らせるだろうし、それだけ時間をかければ後衛も場慣れするだろう」
「ちなみに30層に到達できたからと言っていきなりドラゴンと戦うのは勧められないよ。竜種は1層か2層先の魔物だと思ってかかったほうがいいからね。29層で十分に慣れてから30層というのが安全だよ」
ヤクトルさんの注釈が入る。僕らのパーティに専門の斥候役はいないので、僕はパワーレベリングの間、ずっと彼の動きを目で追っていた。僕がいきなり本職の斥候のようにできるとは思えないが、少なくとも全くの無知ではない。
「少なくともレベルが足りないということはない、ということですね」
「それを言うとレベル30ちょっとあれば、30層まで行けないこともないからな。レベル35もあれば30層でレベル上げができる。やるヤツは少ないがな」
「大抵は29層で十分にレベルを上げて30層はスルーするからね」
それはつまりそれだけドラゴンという相手が厄介だ、ということだ。
「つまり僕らに足りないものは経験だ、ということですね」
「話が戻るが、レベルが足りないなんてことは無いな。経験は、積むしかない」
「分かりました。パワーレベリングの依頼は今回までということでいいでしょうか?」
「元々レベル40くらいまでってことだったし、十分に稼がせてもらったからな。俺は異論無いが、皆はどうだ?」
「異議なーし」
「俺も大丈夫だ」
「それで構わねぇよ」
特に異論はないようだ。
「では、そういうことでいいですか?」
「ああ」
ヘイツさんが頷く。僕は感謝の意味を込めて頭を下げそうになったが、アーリアの文化ではこういうときは握手を交わすものだ。右手を差し出すと、ヘイツさんが強く握り返した。
「長い間ありがとうございました」
「こちらこそ毎度ありだ」
こうして僕らのパワーレベリングは終わり、赤の万剣は冒険者から引退した。
0
お気に入りに追加
38
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございます!
今後もよろしくお願いします!