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剣術を学ぼう

第13話 水琴の友だちに会おう

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 メルはパフェをとっくに食べ終わっていて、僕は少し冷めたコーヒーの残りを一気に飲んだ。会計を済ませて大和八木駅から自宅のある駅へ。歩いて自宅まで戻る。お昼にはまだ早い時間だが、玄関には見慣れない靴がいくつかあって水琴の友だちがすでに来ていることが分かった。

「ただいま」

「お邪魔しまーす」

 僕らが声を上げると、水琴の部屋の扉が開き、水琴が顔を覗かせる。

「あっ! メルシアさん、いらっしゃい! こっちこっち!」

 水琴は僕のことはガン無視で、メルに手招きする。

「ひーくん?」

「行ってやって、でもアーリアから来てることは誤魔化してね」

 正直に言うとボロが出ないか見守っていないと不安ではある。メルは日本の常識にはまだ疎いのだ。だが買ってきたものが手元にあって、それを片付けているところを見られたくないという事情もあった。

 メル自身には不安とかそういうのはなさそうだ。

「水琴ちゃん、久しぶりー!」

 そう声を掛けながら水琴の部屋に入っていく。

「きゃー!」

 と、水琴の部屋から黄色い悲鳴が上がった。中学生の女の子って可愛い女の子が相手でもそういう反応になるんだ。などと感心しながら、僕は自分の部屋に入って買ってきたものをアーリアで売れるように準備する作業に入る。

 商品をリュックサックに詰めた僕はそれを押し入れに隠して一息吐く。隣の水琴の部屋はずっと騒がしい。会話の内容が聞き取れるほどではないけれど。女子トークで盛り上がっているのだろう。入っていける気はまったくしない。

 この環境下ではとても勉強はできないなと思った僕は、部屋でできる筋トレで時間を潰すことにする。かなり涼しくなってきたので運動にはいい季節だ。体はかなり引き締まってきたので、そろそろ筋肉量を増やすことを意識してもいいかも知れない。プロテインとか買おうかな。

 そうこうしているうちにお昼時になる。僕は先んじて2階に上がる。僕の家では土日祝の昼食は自分で作るなりなんなりしとけというスタイルだが、水琴の友だちにメルまで来ている状況では母さんが気を利かせないとも限らない。

 やはりというか母さんはキッチンにいて何か作っているところだった。

「お母さん、僕はメルとどこかで食べてこようと思ってるんだけど」

「あら、せっかくなんだから家で食べていきなさいよ。もう作っちゃってるわよ」

「うーん、でもメルは箸をうまく使えないからなあ」

「だったら練習代わりにも是非食べていってもらいなさい。大丈夫よ。水琴たちとは別に用意するから」

 家のリビングのテーブルは4人がけだ。ということは水琴の友だちは3人来ているのかな。靴の数まで数えなかったので確信は持てない。

「食べた後は出かけるから」

「はいはい。あまり遅くならないようにね。ちゃんと送っていくのよ」

「分かってるって」

「それじゃ水琴たちを呼んできて。先にあの子たちを済ませちゃうから」

「了解」

 僕は1階に降りて水琴の部屋の扉を叩く。

「はーい」

「水琴、お昼ご飯だってさ。友だちを連れてリビングに行って。あ、メルは置いて行けよ」

「えー、仕方ないなあ」

 仕方ないのはどっちだよと思ったが、口には出さない。水琴の先導で部屋からぞろぞろと女の子たちが出てきた。

「お邪魔してまーす」

 女の子たちは口々にそう言って2階へと上がっていく。最後にメルが出てきた。

「お疲れ様、母さんがお昼ご飯は家で食べて行きなさいだって。水琴たちが終わったらお呼びがかかると思う」

「そうなの? ひーくんのお母さんの手料理楽しみ!」

 僕らは僕の部屋に移動する。

「それで水琴たちはどんな無茶な要求をしてきたの?」

「いっぱい写真とか言うのを撮られたかな。それからはずっと質問攻め。誤魔化すのが大変だったよ」

「ごめんな。水琴たちが迷惑掛けて」

「ううん。こんなの全然迷惑じゃないよ。でもひーくんが言ってた私が日本で人気者になってるって話、ちょっと実感湧いちゃったかな。全然知らない人から同じようにされたらちょっと怖いよね」

「分かってくれたなら何よりだよ」

 商業施設で買ったガーリーな服はちょっと可愛すぎるし、拡散されている画像にはこの服を着ているものも含まれている。ファストファッションのお店でもっと地味な服と、変装用の伊達眼鏡を買うのは必須かも知れない。

 それらを買うために大阪まで出るか、それとも電車とバスで地方のショッピングモールへ行くべきか、判断に迷うところだ。目立たないようにって考えると圧倒的にショッピングモールなんだけど行くのに時間がかかるんだよなあ。

 ちょっと父さんに頼んで車を出してもらおうかな。
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