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剣術を学ぼう

第12話 目標を掲げよう

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「なんとなくだけど、ひーくんはそう言ってくれるんじゃないかって思ってた」

 メルはそう言って屈託無く笑う。その根拠の無い信頼に胸が熱くなる。だけどその一方で僕ができることとはなにかと自分に問う。メルの前で格好付けて砂糖を入れていないコーヒーを一口。

「まずは仲間集めかな」

「そうだね。私も2人で倒せるとは思ってないよ」

「メルの目的に共感できる仲間を最低で4人」

 なぜ4人なのかと言うと、この世界のゲームシステムではパーティは6人編成までだからだ。もちろん横殴りはできるのでドラゴンに立ち向かうのが1パーティでなければならないという制限は無い。だがとりあえず後4人集めてパーティの体を成したいと思う。

「メルに心当たりはある?」

「ううん。これまでもドラゴンを倒すって話はしたことあるけど、止められるか、笑われるかのどちらか」

「まあ、真面目に取り合ってはもらえないよな」

「私は先にレベルを上げてもいいんじゃないかなって」

「レベルを上げるにしても7層から先は6人推奨じゃない?」

 橿原ダンジョンでは7層からモンスターが武器を持ち出す。あるいはそれに相当する強さになる。適正レベルでは回復魔法持ちを入れた6人パーティで挑むことが推奨されている。魔物の配置が同じのアーリアのダンジョンでも同じことが言えそうだが、違うのだろうか?

「そうだね。だからまずはレベルを上げるための仲間集め」

「それならまあ、冒険者ギルドで斡旋してもらえそうかな」

「それと今なら聖女ギルドに多額の寄付ができるから回復魔法使いも紹介してもらえると思う」

「なるほど、聖女ギルドはそういう斡旋もやってるんだ」

「できれば回復魔法使い、攻撃魔法使い、斥候かな」

「あるいは斥候役は僕で、強い前衛を入れた方が安定するかも」

「強い前衛かぁ、ヴィーシャちゃん入ってくれないかな」

「レベル1であの強さだもんね」

 あるいはヴィーシャさんに限らなくともベクルトさんのところで誰かを紹介してもらってもいい。ちゃんとした訓練を受けた人の強さは身に染みた。今ではそうで無い人を前衛に入れるのは怖いほどだ。

「えへへ、なんだか不思議な感じ。この前まで冒険者ですらなかったのに、もうこんな話してる」

「でも先は長いよ。僕の都合のせいだけど、まともにダンジョンに潜れるのは7日に1度しかないんだから」

「そうだね。その都合に合わせられる仲間じゃないとダメだよね」

「学校を辞めるわけにもいかないからなあ」

 繰り返して言うが僕は日本の生活を捨てたわけではない。もしかしたらいずれ捨てるのかも知れないけれど、今ではない。学校に通うのは必須の要件だ。

「あるいはメルはメルで6人パーティを組んでもらって、冒険者に専念するという手もあるね」

「ええっ!? それじゃあひーくんはどうするの?」

「お金はある。これからも稼げる。冒険者ギルドに依頼を出してパワーレベリングしてもらう」

 もちろんベクルトさんのところで訓練を受け続けることは大前提だ。その上で追いつかない僕のレベルをパワーレベリングで上げてしまうというのはひとつの手だ。

「僕だけじゃないよ。ドラゴンを倒そうって仲間が揃ったら全員をパワーレベリングさせるつもり」

「考え方が完全にお金持ちのそれだよぉ。お金は確かにあるんだけど。でもそれだったらレベル上げのパーティを集める意味が無いんじゃない?」

「それもそっか。変に遠回りかもね。それじゃドラゴンを倒そうって仲間集めか。回復魔法使いは聖女ギルドにお願いするとして……」

「攻撃魔法使いと前衛かぁ。攻撃魔法使いは冒険者ギルドにお願いして、前衛はベクルトさんのところかなあ」

「僕もそう思う」

「えへへ、楽しくなってきたね」

 両親の仇討ちの話だというのに、メルには悲壮感が無い。本当に楽しそうだ。どうしてメルがこんなに明るくしていられるのか僕には分からない。きっと彼女にしか分からない何かがあるのだろう。

 その何かを守りたいと僕は思った。
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