57 / 139
異世界と交易しよう
第29話 レザスさんと会おう
しおりを挟む
エイギルさんは丁稚に馬車を呼ぶように伝え、さらに本店に先触れとして走らせた。馬車より走って行くほうが近いなら、僕は徒歩で行ってもいいのだが、エイギルさんは高齢だ。そういうわけには行かないんだろう。
馬車を待っている間に砂糖の代金として金貨10枚を受け取る。それと契約書の1枚を受け取った。もう1枚はレザス商会側で保存するようだ。これでどちらが契約を破っても、契約書を突き出せるというわけだ。
馬車はわりとすぐにやってきて、僕はエイギルさんと共に店を出た。いわゆる箱馬車だ。御者の人が扉を開けてくれる。
「先に上がって引っ張り上げてくれると助かる」
エイギルさんがそう言うので、僕は先に馬車に乗り込んだ。そしてエイギルさんに手を貸す。
「まったく年を取ると、ちょっとしたことも難しくなってかなわん」
「そういうものなんですね」
「いずれ分かる。それ、出してくれ」
馬車が走り出す。かなりゆっくりの速度だ。人が歩くのよりちょっと早いくらい。まあ、町中で馬車をすっ飛ばしても事故が起きるだけだろう。
「実際のところ、7日で戻ってくるとは思ってなかった。そんなに近くに砂糖の精製所があるのか?」
「それはお答えできかねます」
「まあ、商売上の秘密をおいそれと話すことはできんわな」
「そうですね。僕の稼ぎのネタですから」
返答しながら僕は背中に冷や汗をかいていた。なるほど、そういう視点もあるのか。考えもしなかった。エイギルさんが7日で行き来できる距離で砂糖を精製しているか、そこに砂糖を備蓄しているものだと考えるのは当然だ。
「ニホンという国の出身だそうだな」
「ええ、はい。とても遠い国です。海の向こうの、そのまた向こうというくらいに」
情報元は冒険者ギルドだろう。個人情報の保護なんて観点は無いのだろうから仕方ない。とは言え、この7日間で調べられるだけは調べたということだろう。僕が借りている部屋まで知っているに違いない。
「よほど技術の発展したところなのだろうな。遠くて良かったというべきか、悔やむべきか、ワシには分からん」
「まあ、そうですね」
その後もエイギルさんの追求をのらりくらりと誤魔化していると、馬車が止まる。どうやらレザス商会の本店に到着したようだ。
レザス商会本店はとんでもない大きさの建物、というわけではなかった。どうやらここに在庫を置いたり、あるいは商品を売ったりするわけではないようだ。
だが武器を持った用心棒みたいな人が2人で入り口を警備しており、レザス商会にとって大事な拠点であることは分かる。
先触れのお陰で僕らはスムーズに建物の中に入ることが出来る。1階に商談用の部屋があって、そこに案内された。エイギルさんの店の応接室より一回り大きくて豪華だ。
丁稚の少年に席に促されて座る。エイギルさんは僕の側に座った。
陶器のマグカップが2つ用意されて、丁稚の少年が湧水の魔術で水を満たした。アーリアでは飲み水には湧水の魔術を使うのが一般的だ。
エイギルさんと少し話をしていると、勢いよく扉が開かれ、中年で髭面で大柄な1人の男性が入ってきた。
「俺がレザスだ!」
馬車を待っている間に砂糖の代金として金貨10枚を受け取る。それと契約書の1枚を受け取った。もう1枚はレザス商会側で保存するようだ。これでどちらが契約を破っても、契約書を突き出せるというわけだ。
馬車はわりとすぐにやってきて、僕はエイギルさんと共に店を出た。いわゆる箱馬車だ。御者の人が扉を開けてくれる。
「先に上がって引っ張り上げてくれると助かる」
エイギルさんがそう言うので、僕は先に馬車に乗り込んだ。そしてエイギルさんに手を貸す。
「まったく年を取ると、ちょっとしたことも難しくなってかなわん」
「そういうものなんですね」
「いずれ分かる。それ、出してくれ」
馬車が走り出す。かなりゆっくりの速度だ。人が歩くのよりちょっと早いくらい。まあ、町中で馬車をすっ飛ばしても事故が起きるだけだろう。
「実際のところ、7日で戻ってくるとは思ってなかった。そんなに近くに砂糖の精製所があるのか?」
「それはお答えできかねます」
「まあ、商売上の秘密をおいそれと話すことはできんわな」
「そうですね。僕の稼ぎのネタですから」
返答しながら僕は背中に冷や汗をかいていた。なるほど、そういう視点もあるのか。考えもしなかった。エイギルさんが7日で行き来できる距離で砂糖を精製しているか、そこに砂糖を備蓄しているものだと考えるのは当然だ。
「ニホンという国の出身だそうだな」
「ええ、はい。とても遠い国です。海の向こうの、そのまた向こうというくらいに」
情報元は冒険者ギルドだろう。個人情報の保護なんて観点は無いのだろうから仕方ない。とは言え、この7日間で調べられるだけは調べたということだろう。僕が借りている部屋まで知っているに違いない。
「よほど技術の発展したところなのだろうな。遠くて良かったというべきか、悔やむべきか、ワシには分からん」
「まあ、そうですね」
その後もエイギルさんの追求をのらりくらりと誤魔化していると、馬車が止まる。どうやらレザス商会の本店に到着したようだ。
レザス商会本店はとんでもない大きさの建物、というわけではなかった。どうやらここに在庫を置いたり、あるいは商品を売ったりするわけではないようだ。
だが武器を持った用心棒みたいな人が2人で入り口を警備しており、レザス商会にとって大事な拠点であることは分かる。
先触れのお陰で僕らはスムーズに建物の中に入ることが出来る。1階に商談用の部屋があって、そこに案内された。エイギルさんの店の応接室より一回り大きくて豪華だ。
丁稚の少年に席に促されて座る。エイギルさんは僕の側に座った。
陶器のマグカップが2つ用意されて、丁稚の少年が湧水の魔術で水を満たした。アーリアでは飲み水には湧水の魔術を使うのが一般的だ。
エイギルさんと少し話をしていると、勢いよく扉が開かれ、中年で髭面で大柄な1人の男性が入ってきた。
「俺がレザスだ!」
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
「魔物肉は食べられますか?」異世界リタイアは神様のお情けです。勝手に召喚され馬鹿にされて追放されたのでスローライフを無双する。
太も歩けば右から落ちる(仮)
ファンタジー
その日、和泉春人は、現実世界で早期リタイアを達成した。しかし、八百屋の店内で勇者召喚の儀式に巻き込まれ異世界に転移させられてしまう。
鑑定により、春人は魔法属性が無で称号が無職だと判明し、勇者としての才能も全てが快適な生活に関わるものだった。「お前の生活特化笑える。これは勇者の召喚なんだぞっ。」最弱のステータスやスキルを、勇者達や召喚した国の重鎮達に笑われる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ
春人は勝手に召喚されながら、軽蔑されるという理不尽に怒り、王に暴言を吐き国から追放された。異世界に嫌気がさした春人は魔王を倒さずスローライフや異世界グルメを満喫する事になる。
一方、乙女ゲームの世界では、皇后陛下が魔女だという噂により、同じ派閥にいる悪役令嬢グレース レガリオが婚約を破棄された。
華麗なる10人の王子達との甘くて危険な生活を悪役令嬢としてヒロインに奪わせない。
※春人が神様から貰った才能は特別なものです。現実世界で達成した早期リタイアを異世界で出来るように考えてあります。
春人の天賦の才
料理 節約 豊穣 遊戯 素材 生活
春人の初期スキル
【 全言語理解 】 【 料理 】 【 節約 】【 豊穣 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】 【 快適生活スキル獲得 】
ストーリーが進み、春人が獲得するスキルなど
【 剥ぎ取り職人 】【 剣技 】【 冒険 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】【 快適生活獲得 】 【 浄化 】【 鑑定 】【 無の境地 】【 瀕死回復Ⅰ 】【 体神 】【 堅神 】【 神心 】【 神威魔法獲得 】【 回路Ⅰ 】【 自動発動 】【 薬剤調合 】【 転職 】【 罠作成 】【 拠点登録 】【 帰還 】 【 美味しくな~れ 】【 割引チケット 】【 野菜の種 】【 アイテムボックス 】【 キャンセル 】【 防御結界 】【 応急処置 】【 完全修繕 】【 安眠 】【 無菌領域 】【 SP消費カット 】【 被ダメージカット 】
≪ 生成・製造スキル ≫
【 風呂トイレ生成 】【 調味料生成 】【 道具生成 】【 調理器具生成 】【 住居生成 】【 遊具生成 】【 テイルム製造 】【 アルモル製造 】【 ツール製造 】【 食品加工 】
≪ 召喚スキル ≫
【 使用人召喚 】【 蒐集家召喚 】【 スマホ召喚 】【 遊戯ガチャ召喚 】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる