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第百六話 カノンの能力

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 最近検問が多くなってきた。遂にこの地域も調べる対象になってきたと言うことだろうか? この前のようにうまく誤魔化せるはずもなく、小百合達は検問を見つけると山の中に入り道なき道を進んで行くしかなかった。

「もうこんな生活嫌よ」
菫の愚痴が多くなってきている。無理もないのだが。
「仕方ないでしょう?」
「芽依もこんな道歩くの嫌だよ」
確かに道なき道を進むのは辛い。

「あっ!」
「どうしたのカノン?」
「何でもないわ」

「お腹空いたよー」
芽依が座り込んでしまった。
「じゃあ、この辺で食べられそうなものを探すわよ」
「ええーーー! もう嫌だよ。昨日も変な小動物の肉を食べさせられたし」
「仕方ないでしょ。このところ検問が厳しくて宿にも泊まれないんですもの」

「お風呂にも入れてないわよね」
菫が自分の姿を確認するように言った。
「この先に川があります。そこで体を洗ってはどうでしょう」
「カノン、何でそんなことがわかるのよ?」
「私の感知能力です。どこに何があるかを感知することができるんです」
「なるほど」

 感心する菫を制して小百合が叫ぶ。
「何を感心してるのよ! ちょっとカノン! そんな能力があるなら検問がどこで行われているかもわかるんじゃないの?」
「はい、わかりますけど」
「はい、わかりますけどじゃないわよ! それがわかるんだったらわざわざ山の中を移動しなくても検問だけ避けて移動することもできるじゃない!」
「それはそうですね」
カノンはにっこりと笑った。

「そんな便利な能力をどうして今まで隠してたわけ?」
「吊り橋効果と言いますか。一緒に恐怖体験や苦労をすると絆が深まりますから」
「別にあなたと絆を深めたいなんて思ったことないわよ!」
「私も小百合さんと絆を深めようなどとは一切思っていません。私が絆を深めたいのは四郎さんだけですから。ねえ、あなた」
「そうだね、カノンちゃん」

 徐々に小百合の顔が赤くなっていくのを見て、芽依が慌てて氷の入った氷嚢で頭を冷やし始める。この氷嚢をどこから出したのかは触れずにおいてほしいと思う作者であった。

「もう我慢の限界だわ! カノン、私と勝負よ。私に負けたら四郎君の前から消えて頂戴。いいわね!」
「あら恐ろしい。でもいいのかしら? 私の感知能力があれば安全に黄色の国に行けるけど?」
「そんなことどうでもいいわよ! いざ勝負!」
小百合は小さめのトートバッグから妖刀村正を取り出す。小さめのトートバッグにどうやって日本刀が入っているのかという物理的根拠については触れずにおいてほしいと思う作者であった。

「いざ覚悟!!」
「えい♡」
小百合は倒れた。
「ごめんなさーい。思いっきり手加減したつもりだったんですけど。まさかこの程度の魔力で倒れるなんて・・・・」
「小百合さん、あれだけ強気の発言をしておいてこんな簡単にやられるなんてかっこ悪いです」
芽依が小百合を起こしながら言った。

「カノン、大丈夫だったかい?」
四郎がカノンの所に駆け寄る。
「この状況だったら普通は私の所に駆け寄るでしょう!」
虚しい小百合の叫び声が森の奥へと吸い込まれていった。
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