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第七十六話 模擬対戦
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とてもいい天気。爽やかな風。優しい日差し。最高だわ。
「ねえ、近くに草原があったわよね。みんなでピクニックに行かない?」
「マリー様。今は戦争中でここは戦地の一つだというのをお忘れですか?」
アリアがきつい口調で注意した。
「だって、ここは何の戦闘もなく平和そのものよ。ちょっとくらいいいじゃない」
「ダメです。あなたは一国の長になられるお方ですよ。もっと自覚を持ってください」
「ねえ、小百合はどう思う。今のところ何の戦闘もないんだからいいわよね」
「そうね」
「四郎もそう思うでしょ?」
「いや、アリアさんの言う通りだ。アリアさんが一番正しいに決まってる!」
言い忘れたわ。この話の読者なら察しは付いてると思うけど、アリアは相当な美人よ。四郎がなびかないわけがないわ。
「だって退屈じゃない」
「それなら戦闘準備として魔力を磨かれてはどうでしょうか」
え! 私達は思わず腰を引いた。
「私がお相手をしますから模擬対戦をいたしましょう」
「い、い、いいわよ」
「遠慮しなさらないでください」
別に遠慮をしてるわけじゃないわ。アリアの模擬対戦て厳しすぎるのよ。昨日もやったけど、このメンバーの殆どが死にかけたわ。
「では、マリー様から行きますよ」
「ちょ、ちょっと待って」
「どうかしましたか?」
「と、トイレに行きたいの」
「そうですか。では小百合様」
「ええ! アリアさん、マリーがトイレに行きたいというのはいつもの常套手段です。絶対嘘ですよ」
「な、何言ってるのよ! 嘘なんかじゃないわよ」
「だったら私もついて行ってあげるわ」
「何でトイレについてくるわけ?」
「逃げると行けないからに決まってるじゃない!」
「失礼ね。私がそんな人に見えるの?」
「思いっきり見えるわよ!」
「わかりました。では、お二人がトイレに行ってる間に四郎さんと模擬対戦をすることにしましょう」
「ええー! 俺もするんですか?」
「当然です。男性だからって戦わなくてもいいというわけではありません。もし、私達女性が全滅した時は戦う必要が出てきます」
「でも、俺と魔術検定一級のアリアさんでは実力が違いすぎるのでは?」
「その点は大丈夫です」
「じゃあ、手加減してくれるのですね?」
「いえ、私はいつも全力で戦わせていただきます。手を抜くのは相手の方に失礼ですから」
「ええーーー!!!」
「もし、死んでしまった場合でも一分以内であれば蘇生する魔術を心得ておりますので」
「た、たった一分! た、助けて!」
「では行きますよ」
「ギャー!」
こうして四郎はわずか三秒で息を引き取った。そして三途の川で待つ船頭さんの誘いを必死で断わると、アリアが蘇生してくれるのを待つしかないのであった。
「ねえ、近くに草原があったわよね。みんなでピクニックに行かない?」
「マリー様。今は戦争中でここは戦地の一つだというのをお忘れですか?」
アリアがきつい口調で注意した。
「だって、ここは何の戦闘もなく平和そのものよ。ちょっとくらいいいじゃない」
「ダメです。あなたは一国の長になられるお方ですよ。もっと自覚を持ってください」
「ねえ、小百合はどう思う。今のところ何の戦闘もないんだからいいわよね」
「そうね」
「四郎もそう思うでしょ?」
「いや、アリアさんの言う通りだ。アリアさんが一番正しいに決まってる!」
言い忘れたわ。この話の読者なら察しは付いてると思うけど、アリアは相当な美人よ。四郎がなびかないわけがないわ。
「だって退屈じゃない」
「それなら戦闘準備として魔力を磨かれてはどうでしょうか」
え! 私達は思わず腰を引いた。
「私がお相手をしますから模擬対戦をいたしましょう」
「い、い、いいわよ」
「遠慮しなさらないでください」
別に遠慮をしてるわけじゃないわ。アリアの模擬対戦て厳しすぎるのよ。昨日もやったけど、このメンバーの殆どが死にかけたわ。
「では、マリー様から行きますよ」
「ちょ、ちょっと待って」
「どうかしましたか?」
「と、トイレに行きたいの」
「そうですか。では小百合様」
「ええ! アリアさん、マリーがトイレに行きたいというのはいつもの常套手段です。絶対嘘ですよ」
「な、何言ってるのよ! 嘘なんかじゃないわよ」
「だったら私もついて行ってあげるわ」
「何でトイレについてくるわけ?」
「逃げると行けないからに決まってるじゃない!」
「失礼ね。私がそんな人に見えるの?」
「思いっきり見えるわよ!」
「わかりました。では、お二人がトイレに行ってる間に四郎さんと模擬対戦をすることにしましょう」
「ええー! 俺もするんですか?」
「当然です。男性だからって戦わなくてもいいというわけではありません。もし、私達女性が全滅した時は戦う必要が出てきます」
「でも、俺と魔術検定一級のアリアさんでは実力が違いすぎるのでは?」
「その点は大丈夫です」
「じゃあ、手加減してくれるのですね?」
「いえ、私はいつも全力で戦わせていただきます。手を抜くのは相手の方に失礼ですから」
「ええーーー!!!」
「もし、死んでしまった場合でも一分以内であれば蘇生する魔術を心得ておりますので」
「た、たった一分! た、助けて!」
「では行きますよ」
「ギャー!」
こうして四郎はわずか三秒で息を引き取った。そして三途の川で待つ船頭さんの誘いを必死で断わると、アリアが蘇生してくれるのを待つしかないのであった。
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