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第六十四話 手作りアクセサリー

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 私達が町を歩いていると可愛いアクセサリーの店を見つけた。
「素敵ねぇ。これ全部手作りですって。ちょっと見ていきましょうよ」
「わたしはいいわ」
菫がなぜか拒否反応を示す。
「どうしてよ。アクセサリーに興味ないの?」
小百合が不思議そうに聞いた。
「そんなことはないけど」
「じゃあ、入りましょう」

 私達は菫の背中を押して店に入った。
「菫ちゃんてこういうの好きだろう?」
四郎が聞く。
「そ、そうね。割と」
「小学校の時からアクセサリー作ってたもんな」
「え、ええ、そうだったかしら?」
「『菫が作ったんだよ』って見せてくれたじゃないか」
「そうだったわね。あまりに昔のことだから忘れちゃったかな?」

「だったら何でこの店に入るの渋ってたのよ」
私は菫のわけのわからない態度を指摘した。本当に意味不明だわ。
「昔、この手の店に入ってえらい目に合ったことがあるから」

 その時店の店員が私達のところにやって来て言った。
「あら、よくお似合いですよ」
多分、誰にでも言う言葉ね。
「これって全部手作りなの?」
「はい、全て機械や魔術は使わず私の手で作ったものです」
「これ作るのって大変なんでしょう?」
「そうですね。物によりますが簡単な物でしたら誰にでも作れますよ」

 なぜか菫が私達から離れようとしている。一体何なのこの子?
「今アクセサリーの手作り体験をしていますので、よかったら作ってみますか?」
「やっぱり」
「菫? 今何か言った?」
「何も言ってないわよ」
「ぜひ作ってみたいわ」
「はい、ではこちらの部屋にどうぞ」
「芽依、こういうの得意だよ」

 私達が席に着くと前にアクセサリーの材料が置かれた。
「私も一緒につくっていきますので、好きなパーツを選んでください」
「いろいろあるわね。どれにしようかしら?」
菫はなぜか固まっている。
「菫ちゃん、選ばないの?」
なぜかニヤニヤしながら芽依が言った。

「俺はこういうのよくわからなくて」
四郎が店員に聞いた。
「そうですね。男性の方は自分では付けない方が多いですから分かりにくいかも知れませんね。そんな時は好きな彼女にプレゼントするつもりで作るといいですよ」
この一言に私たちの動きが止まった。も、もちろん私のことを思いながら作るわよね。

「芽依、できたよ」
「凄く上手ですね。この店で売れるレベルです」
「やったー」
「私もできました」
小百合が私の方をチラッと見て優越感に満ちた顔で自分の作ったアクセサリーを店員に見せた。何よ。早く作ればいいってもんじゃないんだからね。
「可愛いのを作りましたね。パーツの選び方が素晴らしいです」

「マリーはできたの?」
小百合が笑みを浮かべて言う。本当に嫌な性格ね。
「で、できたわよ」
「これは随分と個性的なものができましたね」
「そうでしょ」
私がどや顔で言うと、
「個性的と言う言葉は褒めようがない時に使うものよ」
と小百合が軽蔑する目で言った。

「そ、そんなことありませんよ。これを付けたがる人が少ないと思われるだけで魅力的ですよ」
「ホローになってないでしょ!」
「選ぶパーツが個性的すぎましたね。女性が付けるものですから髑髏やセミの抜け殻はちょっと‥‥」
「だったら選ぶパーツに入れておくんじゃないわよ!」

「菫はできたの?」
「ま、まだよ」
「できてるじゃない」
小百合が菫の隠したアクセサリーを持ち上げる。なかなかやるわね小百合。
「ちょっと、何すんのよ!」
「え? これって」
「何よ。文句あるの?」
「私たちの作ってるのってイヤリングよね。どうしてブルドッグがしそうなトゲトゲの首輪が付いてるのよ」
「いいじゃない別に」
「あれ? もう片方には鉄アレイが付いてるわね? こんなの絶対に落っこちるでしょう」
「選ぶパーツにあったから選んだのよ!」

「芽依知ってるよ。菫ちゃんて不器用でこういうのは苦手なんだよ」
「でも、ミサンガ作ったんでしょう?」
「あれは全部お兄ちゃんに作らせたんだよ」
「人には得手不得手があるのよ!」

「できた」
四郎の声だ。私達はその作品に注目した。誰を思って作ったのかしら。
「まあ、素敵ですね」
え! 小さな王冠が付いてる。これって次期女王である私をイメージしたってことよね?
「素晴らしい出来です。誰をイメージしたのですか?」
「はい、妹の芽衣です」
「何でそうなるのよ!」
私は渾身の力を込めて言った。
                                                    
「王冠が付いてるんだから私に決まってるじゃない!」
「これは王冠じゃなくて牛乳の水滴が落ちたときのミルククラウンだよ。芽依は牛乳が好きだから」
「「「どうして芽依なのよ!」」」
私と小百合と菫は練習でもしていたかのように声を揃えて言った。
「誰を選んでもまずそうだし、妹なら差支えないかなと。全然知らない女性の名前を出したら命が危なそうだし」
もちろん、この日から芽依の態度が偉そうになったのは言うまでもない。
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