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第五十話 物理法則の崩壊
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「えっほえっほ」
「今通り過ぎた人って‥‥」
「手紙を運ぶ飛脚よ。もちろん日本の文化をパクらせてもらったわ」
「いつの時代の文化をパクってるのよ!」
「そうか、この世界には車がないんだ」
「今更何言ってるのよ、四郎」
「だから私達歩いて旅してるのね」
「小百合も気付くの遅すぎない? 本当に適当な性格ね」
「どうして交通手段を造らないわけ?」
「あんな複雑な機械造れるわけないでしょ」
「でも、人を走らせて手紙を届けさせるのはかわいそうだわ」
「その点は大丈夫よ。さっきの飛脚は精密なロボットだから」
「ロボットが造れるなら自動車だって造れるでしょ!」
「だいたいエンジンの仕組みがわからないのよ」
「わかりやすい方だと思うけど」
「何でガソリンを爆発させるとタイヤが動くわけ?」
「普通にピストンが動いて‥‥」
「もっとわからないものがあるわ。ミシンよ」
「服を縫うミシンのこと?」
「そう、そのミシンよ。どうして上の糸と下の糸が絡むわけ?」
「それは上の糸を布に刺して下の糸に絡めて‥‥」
「上の糸も下の糸も外に出してるのよ。いくら上の糸を上下させたって糸が絡まるわけないじゃない! でも縫えてるのよ。どうして縫えるのよ!」
「え?」
小百合は説明しようとするが言葉が出ない。
『確かにいくら糸を上下させても下糸に絡めることなんてできないかも。下糸が外に出ていなかったらできるかもしれないけど』
「どうしたの? 説明しなさいよ」
小百合は必死で考えているが言葉が出てこない。私の勝ちね。
「小百合、どうしたの?」
「ええっと、それは‥‥」
「あなたたちの世界は物理世界よね。物理的に証明するのが好きなのよねぇ。でも身近なものですら説明できない。そうじゃなくて?」
ここぞとばかり私は畳みかける。気持ちがいいわね。
「どうして糸が絡むわけ? 小百合、答えてみなさいよ」
「ううう」
もっと追い詰めるいい方法はないかしら? そうだ!
「あなた達は今気付いてはいけないものに気付いてしまったのよ。物理法則の穴よ。これに気付いてしまうと一気に物理世界は崩壊するわ。もうこれで表の世界は終りね。これからは新しい法則があなたたちを支配していくわ。そう、この異世界のようにね」
凄い! まさにSFの世界よね。私って作家になる才能があるんじゃないかしら!
「芽依、怖いよー」
もっと怖がりなさい。さあ精神崩壊までもう一息よ。
「ねえ、四郎もそう思うでしょ?」
「‥‥」
「四郎、どうしたの?」
あまりに難しい話についてこれなかった四郎は立ったまま放心状態になっていた。あなたが崩壊してどうするのよ!
「今通り過ぎた人って‥‥」
「手紙を運ぶ飛脚よ。もちろん日本の文化をパクらせてもらったわ」
「いつの時代の文化をパクってるのよ!」
「そうか、この世界には車がないんだ」
「今更何言ってるのよ、四郎」
「だから私達歩いて旅してるのね」
「小百合も気付くの遅すぎない? 本当に適当な性格ね」
「どうして交通手段を造らないわけ?」
「あんな複雑な機械造れるわけないでしょ」
「でも、人を走らせて手紙を届けさせるのはかわいそうだわ」
「その点は大丈夫よ。さっきの飛脚は精密なロボットだから」
「ロボットが造れるなら自動車だって造れるでしょ!」
「だいたいエンジンの仕組みがわからないのよ」
「わかりやすい方だと思うけど」
「何でガソリンを爆発させるとタイヤが動くわけ?」
「普通にピストンが動いて‥‥」
「もっとわからないものがあるわ。ミシンよ」
「服を縫うミシンのこと?」
「そう、そのミシンよ。どうして上の糸と下の糸が絡むわけ?」
「それは上の糸を布に刺して下の糸に絡めて‥‥」
「上の糸も下の糸も外に出してるのよ。いくら上の糸を上下させたって糸が絡まるわけないじゃない! でも縫えてるのよ。どうして縫えるのよ!」
「え?」
小百合は説明しようとするが言葉が出ない。
『確かにいくら糸を上下させても下糸に絡めることなんてできないかも。下糸が外に出ていなかったらできるかもしれないけど』
「どうしたの? 説明しなさいよ」
小百合は必死で考えているが言葉が出てこない。私の勝ちね。
「小百合、どうしたの?」
「ええっと、それは‥‥」
「あなたたちの世界は物理世界よね。物理的に証明するのが好きなのよねぇ。でも身近なものですら説明できない。そうじゃなくて?」
ここぞとばかり私は畳みかける。気持ちがいいわね。
「どうして糸が絡むわけ? 小百合、答えてみなさいよ」
「ううう」
もっと追い詰めるいい方法はないかしら? そうだ!
「あなた達は今気付いてはいけないものに気付いてしまったのよ。物理法則の穴よ。これに気付いてしまうと一気に物理世界は崩壊するわ。もうこれで表の世界は終りね。これからは新しい法則があなたたちを支配していくわ。そう、この異世界のようにね」
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「芽依、怖いよー」
もっと怖がりなさい。さあ精神崩壊までもう一息よ。
「ねえ、四郎もそう思うでしょ?」
「‥‥」
「四郎、どうしたの?」
あまりに難しい話についてこれなかった四郎は立ったまま放心状態になっていた。あなたが崩壊してどうするのよ!
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