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第四十話 ミーとお泊まり
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「ええい、控えおろう」
「ははー」
「今日もいい世直しができたわね。気分爽快よ」
「もうそろそろ暗くなってくるわ。このへんで宿を見つけない?」
「そうね。丁度目の前に大きなホテルがあるわ。ここにしましょう」
「そうだね。このホテルって高級そうだよ。芽依、リッチなとこ大好きだよ」
私達は何のためらいもなく高級ホテルに泊まることにした。まあ、プリンセス一行だし、一流ホテルに泊まるのは常識よね。
「はい、では四名様一泊二室でよろしかったでしょうか」
「いえ、四人と一匹です」
「一匹と申しますと?」
「この子もお願いします」
「申し訳ございません。当ホテルではペットの宿泊はお断りしております」
「それは困ったわ。この町にペットも泊まれる宿泊施設はありませんか?」
「三軒ほど先に小さな宿泊施設がございます」
「じゃあ、そこでペットオーケーが聞いてみます」
「はい、またのお越しをお待ちしております」
私達が言われた通りに足を進めると、かなり古い木像の建物が見えた。まさかこれじゃないわよね。
「あ! 宿って書いてあるよ。これだね」
さっきのフロントが『小さな宿泊施設』と言った段階で嫌な予感はしてたけど、ここまで酷いとは思わなかったわ。これって噂に聞いた木賃宿って奴かしら?
「いらっしゃい!」
さっきとは違って活きのいいおばさんが大きな声で話しかけてきた。
「何名だい?」
「四人と一匹です」
「まあ、可愛い猫ちゃんね」
「ペットも泊まれますか?」
「ああ、大丈夫だよ。でもね、今日は宿泊客が多くて小さな部屋一室しか空いてないんだよ。四人は無理だね」
これはチャンスじゃない!
「仕方ないわね。私は向こうのホテルに泊まるわ。あなたたちここで猫と泊まりなさい」
「ごめんなさいね。それがかなり小さくて一人部屋なんだよ。悪いけど三人はホテルに行ってくれるかい?」
「じゃあ、猫を飼いたいって言った小百合がここね」
「そんなのダメだよ。くじ引きで決めようよ」
芽依がややこしいことを言い出したわね。万が一私が当たったらどうするのよ。この汚らわしい猫と一晩過ごすなんてごめんだわ。
「猫ちゃんも好きな人と泊まりたいわよ。芽依の正義感は立派だと思うわ。でもここは猫ちゃんの気持ちも考えてあげなきゃね」
私は幼稚園の先生のように丁寧に言い聞かせた。これで大丈夫ね。
すると小百合が不敵な笑みを浮かべて頷いている。嫌な予感がするわね。
「マリーの言う通りだわ。ミーが一緒に泊まりたいと思う人が適任ね。ミーに決めてもらいましょう」
「どういうことよ」
「一緒に泊まりたい人をミーに選んでもらうの。私達が並んでミーが甘えに行った人がここに泊まるってわけ。これなら文句ないわね」
私達は並んでしゃがむと小百合がミーに声をかけた。
「ミー、今日一緒に泊まりたい人のところに来なさい」
「ニャー」
ミーはニヤリと意地悪な笑みを浮かべるとまっすぐ私の方に向かってくる。
「ちょっと! 冗談でしょ! 私の所に来たら晩御飯抜きなんだからね!」
説得むなしくミーは私の足にスリスリと甘えた。
「これで決まりね」
「ちょっと、本気で私にここへ泊まれとか言わないわよね!」
スリスリスリスリ。
「離れなさいよ! って、みんなどこに行ったのよ!」
こうしてミーは一晩中私にくっついて寝たのであった。もう最悪よ! 一睡もできなかったじゃない!
「ははー」
「今日もいい世直しができたわね。気分爽快よ」
「もうそろそろ暗くなってくるわ。このへんで宿を見つけない?」
「そうね。丁度目の前に大きなホテルがあるわ。ここにしましょう」
「そうだね。このホテルって高級そうだよ。芽依、リッチなとこ大好きだよ」
私達は何のためらいもなく高級ホテルに泊まることにした。まあ、プリンセス一行だし、一流ホテルに泊まるのは常識よね。
「はい、では四名様一泊二室でよろしかったでしょうか」
「いえ、四人と一匹です」
「一匹と申しますと?」
「この子もお願いします」
「申し訳ございません。当ホテルではペットの宿泊はお断りしております」
「それは困ったわ。この町にペットも泊まれる宿泊施設はありませんか?」
「三軒ほど先に小さな宿泊施設がございます」
「じゃあ、そこでペットオーケーが聞いてみます」
「はい、またのお越しをお待ちしております」
私達が言われた通りに足を進めると、かなり古い木像の建物が見えた。まさかこれじゃないわよね。
「あ! 宿って書いてあるよ。これだね」
さっきのフロントが『小さな宿泊施設』と言った段階で嫌な予感はしてたけど、ここまで酷いとは思わなかったわ。これって噂に聞いた木賃宿って奴かしら?
「いらっしゃい!」
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「何名だい?」
「四人と一匹です」
「まあ、可愛い猫ちゃんね」
「ペットも泊まれますか?」
「ああ、大丈夫だよ。でもね、今日は宿泊客が多くて小さな部屋一室しか空いてないんだよ。四人は無理だね」
これはチャンスじゃない!
「仕方ないわね。私は向こうのホテルに泊まるわ。あなたたちここで猫と泊まりなさい」
「ごめんなさいね。それがかなり小さくて一人部屋なんだよ。悪いけど三人はホテルに行ってくれるかい?」
「じゃあ、猫を飼いたいって言った小百合がここね」
「そんなのダメだよ。くじ引きで決めようよ」
芽依がややこしいことを言い出したわね。万が一私が当たったらどうするのよ。この汚らわしい猫と一晩過ごすなんてごめんだわ。
「猫ちゃんも好きな人と泊まりたいわよ。芽依の正義感は立派だと思うわ。でもここは猫ちゃんの気持ちも考えてあげなきゃね」
私は幼稚園の先生のように丁寧に言い聞かせた。これで大丈夫ね。
すると小百合が不敵な笑みを浮かべて頷いている。嫌な予感がするわね。
「マリーの言う通りだわ。ミーが一緒に泊まりたいと思う人が適任ね。ミーに決めてもらいましょう」
「どういうことよ」
「一緒に泊まりたい人をミーに選んでもらうの。私達が並んでミーが甘えに行った人がここに泊まるってわけ。これなら文句ないわね」
私達は並んでしゃがむと小百合がミーに声をかけた。
「ミー、今日一緒に泊まりたい人のところに来なさい」
「ニャー」
ミーはニヤリと意地悪な笑みを浮かべるとまっすぐ私の方に向かってくる。
「ちょっと! 冗談でしょ! 私の所に来たら晩御飯抜きなんだからね!」
説得むなしくミーは私の足にスリスリと甘えた。
「これで決まりね」
「ちょっと、本気で私にここへ泊まれとか言わないわよね!」
スリスリスリスリ。
「離れなさいよ! って、みんなどこに行ったのよ!」
こうしてミーは一晩中私にくっついて寝たのであった。もう最悪よ! 一睡もできなかったじゃない!
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